2.偶然
目を覚ますと、酒の影響で頭ががんがんと五月蝿い。はぁとスマホを探す。いつの間にやら、バキバキにヒビが入ったスマホには、なにやら連絡が来ているようだった。誰かと開けば、「これからよろしくね、椋太くん」自分の名前が目に入ると、痛い頭は昨日の記憶を見せる。
「う、うわぁー__」
情けない声から、ばたんとベットに伏して、朝が始まった。
朝といってもな時間ではあるが、大学に行かなければと、動き始める。こんな日はなんて思うと、もったいない。大学は常に金がかかる。元を取らねば、何度も通えるだけの金もないしと、うだうだ身体を動かし、家を出る。
電車に揺られようと、乗れば、昨日を思い出し、っつーと恥ずかしさが這いずりまわる。
そういえば連絡返すか……いやいいか。あんなやつ、切れるなら切れてしまえ。頭から振り落とし、空いた椅子に座る。
何か違和感、いや、視線を探せば、昨日の女が手を振っていた。は?いやなんで、意外と家近いのか……?とかじゃなく……怖い。抱えていたリュックが揺れる、まさかとスマホを取り出せば、送ってきていた。
「おはよう、早くはないね」
むかつく……
「家近いのかよ、きも」
「家?椋太くんの家はわからないよ。まだ」
まだ?こわ……
「お前も今から、大学?おそ」
「今日はとってないよ」
…………うぜぇー。
もういいやとスマホをしまう。隣が入れ替わり、あの女に座られていた。……もうおどろかねぇぞ。
「おはよう」
「……さ、さっき言っただろ」
「椋太くんからは聞いてないよ」
「ちっ、……おはようございますー」
にこにこしやがって、挨拶なんてしらねぇよ。
「えらいねぇ、大学」
「うざ」
「ねぇ、椋太くん。わたしの名前覚えてる?」
名前?そういえば、昨日もなんかと、ぼわわわっと浮かぶが、気にする気はない。
「覚えてねぇ」
「ふ〜ん、じゃあ改めて、わたし佐々木沙織。よろしくね」
ささき?随分と「さ」の多い名前。
「あ、ここで降りるよね。じゃ、また今度ね」
ぴらぴらと白い手が動く。リュックを背負い、ホームへと足を出す。手を振る奴が電車と共に走り出し、ぴゅーっと見えなくなる。怠さと共に幻、白昼夢みたいだった。
……なんで知ってんだよ。
俺の顔色はきっと暗色だった。




