1.ありきたり
「さ、最低……」
女といえば、やれゲームがだの、やれ私よりだの。残って浮かぶのは何時間もかけたとか、かけないとかいうお顔をまったく変えた顔だけだ。怒った顔、それが本性だ。感情を出さなければ薄情で、金切り声は激情家。
あなたってさぁ……っていう言葉で自由になったので、ゲームをこころのままにプレイする。
がやがやと楽しげで、この世の濁った池である居酒屋。
「お前ってさぁ、よく振られるし、相手もさしてしないのに、どうして付き合うんだよ〜」
「なー。モテる?ていうか、途切れないのさー」
俺は酔っぱらう友人を肴に気分が良くなり、ぐびっと酒をすすめる。
「はぁーあ、俺は一途が好きなのに……お前と友達なのさぁ」
「はっ。モテないやっかみだろ」
「……いつか刺されるぞ」
「そうだそうだ、お前がテレビに出ったって、インタビューすら受けんからなー」
「ははははっ」
「キモっ」
嫌悪、憎悪、排他的な声、それに心底嫌そうな表情が目に映る。
別の席の女だった。
「……はあ?」
と乱暴に立ち上がる。
「ちょ、ちょっとー、ごめんなさいね」
近づいてきた女は、同じ卓から立ち上がって、先程の女が俺の目に映らない位置に近づいて立っていた。曰く、
「最近彼氏と別れて荒んでいるから……と?」
挑撥的に言えば、女の低い舌打ちが聞こえた気がする。友人は俺を言外に止めたがっているが、俺は今が楽しい。
「……まぁ、そうですね」
微笑み、包み込み、俺に入ってきそうだ。気味が悪い。気持ちが悪い。こういうのは、自分勝手で、それを曲げないのだ。
悍ましさを覚えていたはずが、気づくと五人で飲む形になっている。彼氏と別れたらしい女は俺の友人二人に慰められており、俺はどうやら女に言いくるめられたようだった。
「やだぁ、余所見なんて、楽しいですね」
雰囲気だけは優しいなんて、言葉で包めそうな女が隣で顔を和らげる。
「……?」
「私、あなたとそうなりたいんです」
耳元で囁く。離れピントが合う瞬きに、目を見開く。
あ、あ、あ……離れられない。返す言葉が一つになる。ああーーー。
連絡先を交換してしまった。
耳は、なにもまともに受け入れず、振動も、喧騒も寝息だって、なにもなく__身体の動きすら受け入れない。知らないのだ。帰り道の浮つきは、恋愛なのかホラーなのか、電車の垂れ下がる広告に、暗闇に映る、自分の顔、考える余地もなく滑稽だった。




