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適正値ゼロのリミィジュ  作者: 柑橘みかん


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触れかけた光

戦場の中心に、わずかな静寂が生まれていた。


誰も動かないわけじゃない。


怪物はまだ暴れているし、他の生徒たちも戦っている。


それでも――


この一角だけ、空気が張り詰めていた。


フィアの結界が淡く揺れている。


その前に、エスター。


そして、少し離れた場所に、ノエリア。


息を整える。


胸が大きく上下する。


それでも、目は逸らさない。


(もう一回)


足に力を込める。


怖さは消えていない。


でも、それ以上に――


(やらなきゃ)


その気持ちが強かった。


一歩、踏み出す。


エスターがそれを見ている。


静かに。


「来るのね」


ノエリアは答えない。


ただ、走る。


距離を詰める。


剣を振る。


ガンッ!!


ぶつかる。


さっきと同じ衝撃。


でも、違う。


ほんのわずかに、押し返せている。


エスターの目が、わずかに動く。


ノエリアはそのまま踏み込む。


もう一度。


振る。


ガンッ!!


さらにもう一度。


連続で叩き込む。


荒い。


無駄も多い。


でも――止まらない。


「はぁっ……!」


声が漏れる。


剣が震える。


その瞬間。


ピンクの光が、弾けた。


ドクン。


空気が揺れる。


剣に宿る光が、一気に強くなる。


今までとは違う。


明確に、“一段上”。


エスターの表情が変わる。


ほんのわずかに。


「……それ」


ノエリアの動きが変わる。


速くなったわけじゃない。


でも。


“迷いが消えている”。


踏み込み。


斬る。


エスターの防御に、初めて“重さ”が乗る。


ガンッ!!


わずかに、エスターの体が後ろへ動く。


ノエリア自身が一番驚いていた。


(今……押した?)


でも、止まらない。


止めたくない。


この感覚を、逃したくない。


さらに踏み込む。


剣を振る。


光が尾を引く。


その軌道は、今までで一番真っ直ぐだった。


エスターがそれを受ける。


ガンッ!!


今度は、明確に一歩下がる。


空気が震える。


ハイジが叫ぶ。


「おい……!」


ジェイドの目も見開かれる。


ダニーも息を呑む。


「マジかよ……」


フィアの結界の中で、光が反応する。


(ノエリアちゃん……)


エスターはノエリアを見ていた。


さっきまでとは違う目で。


「それが……」


小さく呟く。


「本来のあなた」


ノエリアは答えない。


ただ、前へ。


そのまま斬り込む。


あと一歩。


届きそうだった。


そのとき。


エスターが、初めて“本気で動いた”。


空気が変わる。


一瞬で。


黒い光が凝縮する。


ノエリアの視界が歪む。


(……やばい)


直感が叫ぶ。


それでも、止まれない。


剣を振る。


ぶつかる。


その瞬間。


ドォン!!!


衝撃が爆発する。


光と闇がぶつかり合う。


だが。


押し負ける。


一瞬だった。


ノエリアの光が、押し潰される。


剣が弾かれる。


体勢が崩れる。


そのまま――


エスターの一撃。


見えないほどの速さ。


ノエリアの体が吹き飛ぶ。


ドォン!!


地面に叩きつけられる。


衝撃が全身を走る。


呼吸ができない。


視界が白くなる。


(……あ……)


指先が動かない。


光が、消えていく。


さっきまであった感覚が、離れていく。


(……もう少しだったのに)


悔しさが、胸に残る。


でも。


体が動かない。


そのとき。


影が差す。


エスターが立っていた。


見下ろしている。


でも、その目は――


さっきと違っていた。


冷たさの中に、何かが混ざっている。


「……確信した」


静かな声。


ノエリアの意識がわずかに戻る。


「あなたは」


少し間を置く。


「“そこ”に届く存在」


その言葉は、はっきりしていた。


エスターは続ける。


「だからこそ」


目が細くなる。


「ここで折れてもらう」


その瞬間。


空気が再び重くなる。


決定的な一撃が来る。


誰も間に合わない。


――はずだった。


そのとき。


水色の光が割り込む。


フィアの結界。


ノエリアの前に広がる。


ドォン!!


衝撃を受け止める。


ヒビが入る。


でも、壊れない。


フィアが立っている。


その背中は、小さい。


でも――


動かない。


「だめだよぉ」


優しい声。


でも、強い。


「それ以上は」


エスターの動きが止まる。


ほんの一瞬だけ。


その隙に、ジェイドとハイジが割り込む。


ダニーも立ち上がる。


戦場が、再び動き出す。


だが。


その中心で。


エスターはノエリアを見ていた。


はっきりと。


確信を持って。


「……やっぱり」


小さく呟く。


その言葉は、誰にも届かない。


だが確実に――


物語の核心に触れていた。

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