交差する想い
グランドフォール学園、中庭。
戦場と化したその場所では、すでに複数の戦いが同時に始まっていた。
黒い霧から生まれた怪物たちが、石畳を踏み砕きながら暴れている。
叫び声。
衝撃音。
光と闇がぶつかり合う。
その中心で――
それぞれの「対峙」が始まっていた。
ドンッ!!
拳と拳がぶつかる。
空気が震える。
ダニー
「うおお!!」
キース
「甘い!」
キースの拳がダニーの腹にめり込む。
衝撃でダニーの体が浮く。
そのまま地面に叩きつけられた。
ドォン!!
石畳が砕ける。
ダニーはすぐに立ち上がる。
息が荒い。
でも、目は死んでいない。
ダニー
「……強えな」
キースは冷たく言う。
キース
「当然だ」
一歩踏み出す。
「こっちは“落ちた側”だ」
ダニーが眉をひそめる。
キース
「努力したって」
拳を握る。
「届かない場所がある」
「お前は知らないだろ」
ダニーは一瞬黙る。
でも、すぐに言い返す。
ダニー
「……それでも」
拳を握る。
「やるしかねえだろ!」
再び踏み込む。
二人の拳がぶつかり合う。
衝撃が広がる。
その少し離れた場所。
水色の光と黒い霧が対峙していた。
フィアが両手を広げる。
結界が広がる。
カリンはその中に入らず、外側でくるくる回っている。
カリン
「ねぇ」
笑う。
「まだ頑張るの?」
フィア
「うん」
ゆっくり答える。
カリン
「なんで?」
首をかしげる。
「意味ないよ?」
フィアは少し考える。
それから言う。
フィア
「意味があるかどうかは」
少しだけ笑う。
「あとで決めるの」
カリンの笑顔が少し止まる。
フィア
「今はねぇ」
水色の光が強くなる。
「一緒にいたい人がいるから」
カリンの目がわずかに揺れる。
次の瞬間。
黒い霧が一気に広がる。
カリン
「やっぱり」
笑う。
「嫌いだなぁ、そういうの」
怪物が一斉に動く。
フィアの結界にぶつかる。
ドン!ドン!ドン!!
結界が揺れる。
フィアは動かない。
ただ、静かに支えている。
炎が爆発する。
ハイジ
「どけぇ!!」
回転蹴り。
複数の怪物が吹き飛ぶ。
ジェイドはその隙を逃さない。
剣が閃く。
一瞬で核を断つ。
無駄がない。
ハイジ
「相変わらずだな」
ジェイド
「お前こそ」
二人は背中合わせで立つ。
次々と敵を処理していく。
完全に“前線を支配”していた。
その中心。
最も静かで、最も危険な場所。
エイミーが剣を構えていた。
金色の光が広がる。
アンナとウィリアムが両脇に立つ。
エスターは一人。
動かない。
エイミー
「……ここで止める」
エスター
「できるの?」
その声は穏やかだった。
だが、圧が違う。
アンナ
「やるしかないやろ」
ウィリアム
「連携を崩すな」
次の瞬間。
三人が同時に動いた。
ドン!!
エイミーが前へ。
アンナが横から支配。
ウィリアムが拘束。
完璧な連携。
だが。
エスターは動かない。
ただ――
黒い光が一瞬、揺れた。
ドォン!!!
三人が同時に弾き返される。
エイミーが後退する。
アンナが体勢を崩す。
ウィリアムの拘束が砕ける。
エスターは一歩も動いていない。
エスター
「まだ」
静かに言う。
「届かない」
そのすべてを、ノエリアは見ていた。
(……違う)
レベルが。
世界が。
全部違う。
剣を握る手が震える。
(私じゃ……)
そのとき。
目の前に怪物が現れた。
「グォォ!!」
ノエリアは反射で剣を振る。
ドン!!
一体は倒せる。
でも。
その後ろに、さらに二体。
三体。
(無理……)
その瞬間。
水色の光が広がる。
フィア
「こっちだよぉ」
結界の中に引き込まれる。
ノエリアが息を整える。
フィアが優しく言う。
「大丈夫」
ノエリア
「……うん」
でも。
視線は前を向く。
エスター。
その存在。
そして。
戦っているみんな。
(悔しい)
胸の奥で、光が揺れる。
『ノエリア』
ベルの声。
ノエリアは剣を握り直す。
(まだ)
小さく呟く。
「まだ、終わってない」
そのとき。
エスターの視線が再び動いた。
ノエリアを見る。
静かに。
そして――
ほんのわずかに、微笑んだ。
エスター
「やっぱり」
その瞬間。
戦場の空気が変わる。
次の段階へ進もうとしていた。




