光の意味
第一闘技場の熱気はまだ冷めていなかった。
リングの中央では最後の試合が終わり、観客席には興奮した声が残っている。
「今年のCクラス強いな」
「ハイジすごかった」
「ジェイド速すぎだろ」
Cクラスの席では、ダニーがまだ騒いでいた。
ダニー
「いやー楽しかった!」
ハイジが肩を回す。
ハイジ
「運動だな」
ノエリアは少し笑った。
ノエリア
「運動ってレベルじゃなかったよ」
フィアが隣でふわっと頷く。
フィア
「でもねぇ」
「みんなすごかったねぇ」
その声はゆっくりしていて、少し嬉しそうだった。
リングの中央では、審判のウィリアムが静かに宣言する。
ウィリアム
「これにてランキング戦を終了します」
拍手が起きた。
観客席の上段。
赤い制服の三人が席を立つ。
生徒会。
エイミー、アンナ、ウィリアム。
アンナが軽く伸びをする。
アンナ
「今年の子ら、面白いなぁ」
エイミーは闘技場を見渡していた。
Cクラス。
Bクラス。
そしてAクラス。
それぞれの戦い。
それぞれの未熟さ。
エイミー
「でも」
静かな声。
「まだ足りない」
アンナが苦笑する。
アンナ
「そらそうや」
「グランドリミィジュがおらんからな」
十五年。
それが今の学園の空白だった。
本来なら。
この学園の頂点には
グランドリミィジュが存在する。
すべてのリミィジュを束ねる存在。
世界を守る象徴。
だが。
十五年前を最後に、その光は現れていない。
ウィリアムが言う。
ウィリアム
「その影響で」
「リミィジュの数も減っています」
アンナ
「敵さんも元気やしな」
エイミーの目が少し鋭くなる。
敵組織。
かつてリミィジュだった者たち。
希望を失い、闇に堕ちた者たち。
その中心にいるのは――
エスター。
エイミーの姉。
アンナが少しだけ声を落とす。
アンナ
「ほんまに」
「助ける気なん?」
エイミーは少しだけ目を閉じた。
そして言う。
エイミー
「当然よ」
その目には迷いがなかった。
学園長室。
大きな窓から夕日が差し込んでいる。
学園長ゴードンが机の前に座っていた。
目の前には生徒会の三人。
ゴードンがゆっくり話し始める。
ゴードン
「ランキング戦、ご苦労」
アンナが笑う。
アンナ
「なかなか面白かったで」
ゴードンは頷く。
そして、静かに言う。
ゴードン
「君たちに聞きたい」
「今年の新入生」
「どう見えた?」
少し沈黙が流れる。
ウィリアムが答える。
ウィリアム
「有望な者が多い」
「ですが」
「グランドリミィジュ級はいません」
アンナも頷く。
アンナ
「うん」
「Aクラスでもまだ遠い」
エイミーは少し考えていた。
そして言う。
エイミー
「一人だけ」
ゴードンの目が少し細くなる。
エイミー
「気になる子がいる」
ゴードン
「……ノエリアかね」
エイミーが驚いた顔をする。
エイミー
「知っていたの?」
ゴードンは静かに笑う。
ゴードン
「君たちより前から」
「気づいていたよ」
窓の外を見る。
夕日の光。
ゴードン
「適性ゼロ」
「ありえない数値だ」
少し間を置く。
「だが」
「光がある」
アンナが眉を上げる。
アンナ
「グランドリミィジュ?」
ゴードンはすぐには答えない。
ただ静かに言った。
ゴードン
「まだ分からない」
しかしその目は、どこか確信しているようだった。
同じ頃。
森の奥。
闇に包まれた廃墟。
かつてのリミィジュの拠点。
今は敵組織の本拠地となっていた。
カリンが椅子に座って足をぶらぶらさせている。
カリン
「ねえ」
「学園、面白いよ」
その前に立つ影。
エスター。
白い髪が闇の中で揺れている。
カリン
「ゼロの子」
笑う。
「気になる?」
エスターは静かに答える。
エスター
「少しね」
窓の外を見る。
遠くの学園。
エスター
「でも」
その声は低かった。
「まだ光じゃない」
カリンがくすっと笑う。
カリン
「そう?」
エスターは言った。
「本当の光は」
静かな声。
「絶望のあとに生まれる」
闇が揺れる。
そしてエスターは小さく呟いた。
「エイミー」
その名前には、ほんの少しだけ感情が混じっていた。
そして。
その夜。
学園の屋上。
ノエリアが空を見上げていた。
胸の奥で、光が小さく揺れる。
ベルの声が聞こえる。
『ノエリア』
ノエリアは小さく笑った。
ノエリア
「ねえ」
「ベル」
空を見上げる。
「私」
少し考える。
「強くなれるかな」
風が吹いた。
小さな光が揺れる。
ベルの声。
『なれるよ』
『だって』
優しい声。
『君は』
『まだ諦めてないから』
ノエリアは空を見上げた。
その星の向こうで。
新しい戦いが、静かに動き始めていた。




