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適正値ゼロのリミィジュ  作者: 柑橘みかん


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闇の学園

森の奥深く。


グランドフォール学園から何十キロも離れた場所に、

崩れた石造りの校舎が建っていた。


かつては、ここも学園だった。


だが今は違う。


窓は割れ、壁は黒い蔦に覆われている。


校舎の周囲には、暗い霧が漂っていた。


その校舎の中。


広いホールの中央に、数人の影が集まっている。


カリンが長椅子の背もたれに座り、足をぶらぶらさせていた。


カリン

「今日も学園行ってきたよ」


楽しそうに言う。


「やっぱ面白いね」


その言葉に、向かいに立っていた少年が鼻で笑う。


キースだった。


青い髪の少年。


腕を組み、壁にもたれている。


キース

「遊びじゃねえんだぞ」


カリン

「わかってるよぉ」


くすっと笑う。


「でもさ」


少し首をかしげる。


「面白い子いた」


その場にいたもう一人が顔を上げる。


小柄な少年。


銀色の髪。


オリオンだ。


オリオン

「……ゼロの子?」


カリン

「そう」


笑う。


「ノエリア」


キースが眉をひそめる。


キース

「適性ゼロのやつか」


カリン

「うん」


少し楽しそうな声。


「でもね」


「光、あるよ」


部屋の空気が少し静かになる。


そのとき。


奥の扉が開いた。


ゆっくりとした足音。


長い白髪。


黒いコート。


エスターが部屋に入ってきた。


その瞬間、全員が黙る。


エスターの存在感は、この場所でも特別だった。


エスターは窓の近くまで歩く。


外を見る。


遠くの森。


その向こうにある学園の方向。


エスター

「報告は?」


カリンが手を挙げる。


カリン

「はいはい」


椅子から飛び降りる。


「学園、元気」


「ランキング戦してた」


エスター

「そう」


カリン

「あと」


少し笑う。


「ゼロの子」


「やっぱ気になる」


エスターは少しだけ目を細める。


カリン

「まだ弱いよ」


「でもね」


「折れない」


その言葉に、キースが小さく鼻で笑う。


キース

「そんなやつ山ほど見た」


「どうせすぐ折れる」


カリン

「そうかな」


楽しそうに笑う。


エスターは何も言わない。


ただ静かに窓の外を見ていた。


しばらくして、ゆっくり口を開く。


エスター

「人は」


静かな声。


「希望で立つ」


そして続ける。


「でも」


「絶望で壊れる」


部屋の空気が少し重くなる。


エスター

「リミィジュも同じ」


キースが目を伏せる。


カリンも黙る。


この場所にいる者は全員知っていた。


リミィジュとは。


希望の象徴。


世界を守る戦士。


だが――


その光は重すぎる。


守れなかったとき。


誰かを救えなかったとき。


その光は、人を壊す。


エスターはゆっくり言った。


エスター

「だから」


「世界を壊す」


カリンがくすっと笑う。


カリン

「会長っぽいね」


エスター

「違う」


静かに否定する。


「これは」


「救いよ」


窓の外の闇が揺れる。


エスター

「すべてを終わらせれば」


「誰も絶望しない」


その言葉には、奇妙な優しさがあった。


カリンは少しだけエスターを見上げる。


カリン

「でもさ」


小さく笑う。


「ノエリアは」


「まだ諦めてないよ」


エスターの目が少し動く。


カリン

「どうする?」


エスターは少し沈黙した。


そして静かに言った。


エスター

「放っておきなさい」


キースが驚く。


キース

「いいのか?」


エスター

「まだ」


少しだけ目を細める。


「光ではない」


窓の外。


遠くの空を見つめる。


エスター

「本当の光は」


「絶望を知ったあとに生まれる」


その声は、どこか寂しそうだった。








その頃。


グランドフォール学園。


夜の屋上。


ノエリアが空を見上げていた。


星がゆっくり瞬いている。


胸の奥の光が揺れる。


ベルの声。


『ノエリア』


ノエリア

「うん?」


ベル

『これから』


少し静かな声。


『大変になるよ』


ノエリアは少し笑う。


ノエリア

「うん」


風が吹く。


髪が揺れる。


ノエリア

「でも」


空を見る。


「負けない」


ベルの光が少し強く輝いた。

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