炎の決着
第一闘技場の空気は熱気に包まれていた。
石造りの観客席はほぼ満席だ。
Cクラス、Bクラス、Aクラス。
全ての生徒がリング中央を見ている。
炎の揺らめき。
砂煙。
その中で、二つの影が向かい合っていた。
ハイジと、Bクラスの槍使いの女子。
リングの石床には、さっきの衝撃でひびが入っている。
ハイジが肩を回す。
ハイジ
「いい動きしてんじゃん」
Bクラス女子
「そっちこそ」
槍をゆっくり構える。
「Cクラスとは思えない」
観客席の前列。
ノエリアは身を乗り出していた。
ノエリア
「まだ続くの……」
フィアがゆっくり頷く。
フィア
「うん」
穏やかな声。
「ハイジちゃん、まだ余裕あるよぉ」
その後ろでダニーが拳を握っている。
ダニー
「行けー!」
リング中央。
審判のウィリアムが静かに立っていた。
試合はまだ終わっていない。
次の瞬間。
槍使いの女子が動いた。
砂を蹴る。
体が低く沈む。
鋭い突き。
空気が裂ける。
しかし。
ハイジはその瞬間を待っていた。
ハイジ
「来たな」
炎が爆発する。
ドンッ!!
地面が弾けた。
ハイジが一歩踏み込む。
槍の突きを蹴りで弾いた。
ガン!!
槍が横に流れる。
女子がすぐに体を回す。
横薙ぎ。
速い。
しかし。
ハイジはさらに前に出た。
距離を詰める。
槍の間合いの内側。
女子の目が一瞬見開く。
ハイジ
「終わりだ」
炎が足に集まる。
回転。
踵落とし。
ドォン!!
爆発のような衝撃。
槍使いの女子が吹き飛んだ。
リングの外まで滑る。
静寂。
ウィリアムが告げる。
ウィリアム
「勝者、ハイジ」
次の瞬間。
観客席が一気に沸いた。
「うおお!」
「派手!」
「炎すげえ!」
ダニーが飛び上がる。
ダニー
「やったー!」
ハイジは軽く手を振った。
ハイジ
「当然」
リングを降りて観客席へ戻る。
ノエリアの前で立ち止まる。
ハイジ
「どうだ」
ノエリアは少し興奮していた。
ノエリア
「すごかった……!」
ハイジが笑う。
ハイジ
「まだまだだ」
そのとき。
観客席の上段。
赤い制服の三人が静かに試合を見ていた。
生徒会。
エイミー、アンナ、ウィリアム。
アンナが軽く伸びをする。
アンナ
「Cクラス、今年は粒揃いやなぁ」
関西弁が柔らかく響く。
エイミーはリングを見つめていた。
エイミー
「そうね」
静かな声。
「でも」
視線が少し遠くを見る。
「まだ足りない」
アンナ
「グランドリミィジュ?」
エイミーは頷いた。
十五年。
それが、今の学園の重い現実だった。
十五年間。
グランドリミィジュは現れていない。
リミィジュとは、本来。
世界を守るために存在する戦士だ。
選ばれた少年少女が
精霊と契約し、闇と戦う。
だが今――
状況は変わりつつあった。
アンナが小さく言う。
アンナ
「敵さん、最近活発やしなぁ」
エイミーの目が少し鋭くなる。
森の向こうを見た。
そこには、敵組織がいる。
元リミィジュ。
挫折した者たち。
闇に堕ちた戦士たち。
そして。
その頂点にいる存在。
エスター。
かつて――
グランドリミィジュに最も近かった少女。
アンナがぽつりと言う。
アンナ
「会長」
「まだ助けたいん?」
エイミーは少しだけ目を閉じた。
エイミー
「……当然よ」
視線をリングへ戻す。
そのとき。
エイミーの視線が止まった。
ノエリア。
Cクラスの少女。
ゼロの適性。
しかし――
どこか引っかかる。
アンナが気づく。
アンナ
「どうしたん?」
エイミー
「……いいえ」
だが。
観客席のさらに上。
一人の老人が静かにその光景を見ていた。
学園長ゴードン。
長い白い髭を撫でる。
その目は、ノエリアに向いていた。
ゴードンが小さく呟く。
ゴードン
「やはり」
静かな声。
「君かもしれないね」
グランドリミィジュの光が
再び現れるとしたら。
そして。
それはきっと――
この学園の未来を
大きく変える。




