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適正値ゼロのリミィジュ  作者: 柑橘みかん


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燃える蹴り

第一闘技場の空気は、さっきよりさらに熱くなっていた。


ジェイドの試合があまりにも一瞬だったからだ。


観客席ではまだざわめきが残っている。


「今の見えた?」


「速すぎだろ」


「Bクラスでもああなるのか……」


リングの中央では、次の試合の準備が始まっていた。


審判のウィリアムが静かに名前を呼ぶ。


ウィリアム

「次の試合」


「ハイジ」


観客席から声が上がる。


「来た!」


「炎のやつだ!」


リングの入口からハイジが歩いてくる。


赤いショートヘアが照明に照らされている。


肩を軽く回しながらリングの中央へ出た。


その歩き方にはまったく緊張がない。


むしろ楽しそうだった。


観客席の前列でダニーが立ち上がる。


ダニー

「ハイジー!」


「派手にやれ!」


ハイジは振り向きもせず、片手を軽く上げた。


リングの反対側から、対戦相手が現れる。


Bクラスの女子生徒。


長い槍を持っている。


さっきジェイドと戦った男子と同じく、槍使いだ。


しかし目つきが鋭い。


実戦慣れしている雰囲気がある。


槍の先端をリングに軽く当てる。


カン、と乾いた音が響いた。


Bクラス女子

「あなたがハイジ?」


ハイジ

「ああ」


短く答える。


Bクラス女子

「派手な戦い方するらしいわね」


ハイジが笑う。


ハイジ

「期待すんな」


足を軽く鳴らす。


次の瞬間。


足元から炎がふっと揺れた。


観客席がどよめく。


ノエリアは思わず身を乗り出した。


ノエリア

「炎……」


フィアが隣でのんびり言う。


フィア

「ハイジちゃん、本気だねぇ」


審判のウィリアムが手を上げる。


ウィリアム

「試合開始」


その瞬間だった。


ドンッ!!


地面が弾ける。


ハイジが一瞬で距離を詰めた。


速い。


ジェイドとは違う速さ。


爆発的な速さだ。


ハイジの蹴りが振り上がる。


炎が弧を描く。


Bクラス女子はすぐに槍で受けた。


ガン!!


火花が散る。


衝撃で砂が舞い上がる。


女子が後ろへ下がる。


その目が少し驚いていた。


Bクラス女子

「重い……!」


ハイジは笑う。


ハイジ

「まだ軽いぞ」


次の瞬間。


回転蹴り。


炎が横に走る。


女子は槍を地面に突き、体を浮かせて避ける。


そのまま槍を振り下ろす。


鋭い一撃。


空気を裂く音がした。


だが。


ハイジは避けない。


蹴りで槍を弾いた。


ドン!!


槍が上に弾かれる。


観客席がざわめく。


「蹴りで弾いた!?」


ダニーが笑う。


ダニー

「それそれ!」


ハイジはさらに踏み込む。


膝蹴り。


炎が爆発する。


女子が後ろへ吹き飛ぶ。


リングの端まで滑った。


しかし倒れない。


槍を地面に突き、体を支える。


その顔に笑みが浮かんだ。


Bクラス女子

「なるほど」


槍を構える。


「面白い」


空気が変わる。


槍の先端が静かに揺れた。


ジェイドが観客席で小さく言う。


ジェイド

「来る」


次の瞬間。


女子の姿が消えた。


ノエリアの目が追いつかない。


槍がハイジの横から突き出される。


鋭い突き。


しかし。


ハイジは笑った。


ハイジ

「おせえ」


炎が爆発する。


ハイジの体が半歩動いた。


槍が空を切る。


そのままハイジが跳ぶ。


空中回転。


炎をまとった踵が振り下ろされる。


ドォン!!


地面が砕ける。


女子が横へ転がって避けた。


砂煙が広がる。


観客席が一斉に立ち上がる。


「派手!」


「これだよ!」


ダニーが叫ぶ。


ダニー

「ハイジ最高!」


砂煙の中。


ハイジが立っている。


炎がゆらゆら揺れていた。


Bクラス女子が立ち上がる。


息を整えながら笑った。


Bクラス女子

「強いわね」


ハイジ

「だろ?」


女子が槍を握り直す。


「でも」


目が鋭くなる。


「まだ終わってない」


ハイジがニヤっと笑う。


ハイジ

「来いよ」


リングの空気が張り詰める。


ノエリアは思わず呟いた。


ノエリア

「すごい……」


フィアがゆっくり頷く。


フィア

「うん」


「ハイジちゃん、楽しそう」


炎と槍。


二つの影が再び動いた。

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