最終話
ドロドロの感覚に身を任せてから、ずっと頭の中が
痺れてる。何も考えられない。
目に映る映像は、何かのリアルなVRゲームの
オートモードの様に、身体が意思とは関係無く動く。
ただそれを眺めている。
こいつだけは許せない
それだけが頭の中にあり、身体が目的に向けて
行動を起こしている。
こいつの胸の石に剣をぶつけ、地面をのたうち回ってる
姿を眺める時や、顔面を蹴り飛ばした時の感覚が
快感の波と共に頭に広がる。
身体が酷使されている事も認識しているが、抗えない。
頭が、目に映る映像や、身体のあちこちで感じる
悲鳴よりも、相手を壊す度に来る打ち震える様な
快感に、抗えない。
・・・このまま・・・身を委ねても・・・
ジュン、愛してるよ
ジュン様、愛してます
ああ・・・そうだ。シア、アシャ・・・
一緒に、旅に出てくれる約束、したんだった・・・
でも・・・ごめん。俺は・・・俺には・・・
2人を守れる力なんて、無いかもしれない・・・
守らないとって思ってたメイが・・・・・
俺の、力の至らないばかり、に・・・・・・
生き、て、ジュン様・・・
大好き・・・愛して、ます・・・
ああ・・・そうだ。
メイに、生きて、と言われた。
・・・生きないと・・・こんな、俺、が?
メイを・・・守ってあげられなかった、おれ、が?
・・・いや・・・
・・・ダメだ・・・
・・・このまま、な訳にいかない。
そうだ、このままで良いわけがない!
俺が、俺の手でこいつを倒さないとダメなんだ!!
「ジュン様ーーーーーーー!!!」
・・・え?
「戻ってきてーーーーーーー!!!」
メ・・・イ?
ずっと闇に包まれていた俺の意識が、一気に晴れ渡り
視界が広がる。
「メイ!!!」
振り返ると、ロナール、ヤム、コッツがすぐ後ろに
居てくれ、その向こうにセフィルと、起き上がった
メイがいた!
「ジュン!戻ったか!良かった!」
「メイはセフィルが助けてくれたよ!」
セフィルが!セフィル!ありがとう・・・
良かった、本当に良かった。
ズシッ
「くっ!!」
安堵と同時、一気に訪れるダメージ。
あれだけの速度で動き、魔法の攻撃を受け
エナジードレインを喰らい
千斬まで使っていた。
やばい、一気に動けなくなる!
"クハハハ!意識を戻したか。
そのまま上位精霊に飲まれておればあった勝機を
みすみす手放したか!"
言うと同時、後ろに大きく飛び退く流星のかけら。
"このまま、全員消し炭にしてくれる。"
そう言うと、飛び退いた先にあった薄紫のローブまで
走り出す。
「あ!まさかお父様の世界樹の杖を!!
ジュン!極大魔法を使うつもりよ!!」
マジか!走り出したいが、身体が重くて言う事を
聞かない・・・なら!
「ヴァルキリー!おいで!」
言葉と同時に正面が光り出す。
光槍で、と思ったが既に杖を持たれた!
「く、光槍も間に合わないか。」
"クハハハ!!貴様の光槍、撃つまでにどのくらいの
時間を有するかの?
どちらの魔法が早いか。
撃ち合いと行こうではないか。"
いつでも詠唱を始めると言わんばかりに、杖を
上に掲げこちらを伺う。
俺が光槍を作り出すと同時に詠唱を始めるつもりだ。
緊張感が周りの空気を包む。
1つ、案がある。
だけど、練習も出来てないし、威力があるのかも
分からない。しかも、あいつの高速詠唱に
間に合うのかも分からない。
けど、身体の状態がギリギリで、最後の動きになるかも
しれない。これしか無い、か。
「ヴァルキリー」
「大丈夫だよ、ジュン。ジュンの考え、全部伝わって
くるから。」
「そっか。なら、いくよ。」
「うん!」
すぅ・・・ゆっくり一度深く息を吸い込む。
集中。全ては俺の集中力にかかっている。
集中!!
手のひらを上に向けると光り輝き出した。
"クハハハ!"
同時に詠唱を始めた流星のかけら。
集中を切るなよ、俺!!
肩幅より少し広めにスタンスを広げる。
パワーポジション!
「シルフ!お願い!走る時に運んで!」
言葉と共に一歩目を強く出す。
一瞬、優しく風が身体を巻いたかと思った途端、強烈な
追い風!!
「くっ!」
集中切るなよ!俺!!!
物凄い高速移動する身体、踏み込み足を合わせろ!
4歩目の左足で強く蹴り出す。
"な!ばかな!"
かなり取っていた長い間合いを一瞬で消され
完全に意表を突かれた流星のかけら。
無抵抗に懐に侵入を許した。
急ぎ影が流星のかけら周りに集中する。
フッ!!
流星のかけらの前の影目掛けて、発勁!!
ドシン!!!バチィ!!!
手のひらに出来ていた光槍の素のお陰で、影相手に
発勁の感触が入った!
バチ!バチバチッ!バシャッ!!
光槍の素と影が相打ち、弾け飛ぶ。
光槍は作り切れてないけど、高速移動と発勁の威力を
乗せた事で威力をあげて、流星のかけらの前の影を
完全に無くした!
手に触れられる距離に流星のかけら!!
今!!!
「はぁ!!!」
ズドォーーーー!!!
ゴキャッ!!
戦士のプレートアーマーと発勁に挟まれる形になり
発勁の威力を、そのまま受ける形になった
流星のかけらは、潰される様に砕け散った。
発勁の威力はそのまま戦士に伝わり、戦士を数メートル
弾き飛ばす。
受け身も取れず、地面に転がりながら、止まった。
"か・・・・く、は・・・・あ・・・・・あ・・・・・"
窒息の様に悶えて
ドッパーーーーーー!!!
砕けた岩石から影が溢れ出した!
発勁で飛ばした分、こっちまでは飛んで来ない。
そのまま
"か・・・は、ぁ・・・"
上げていた右手が力尽きる様に落ちた。
辺りがシンッと静まる。
「終わった、のか?」
そっと、確認する様にロナールが呟く。
「そう、みたい、だね。」
俺が相槌を打つ。
ウォーーーー!!!
ウワーーーー!!!
俺以外のみんなが、一斉に叫んだ。
そのまま一斉に俺に向かって走り出す。
ロナールとヤムが飛びつく様に抱きついてきた。
「やったな!!本当にやっちまったな!!ジュン!!」
「ジュン!!すごいよ!あなたは本当に!!」
真っ先に来たロナールとヤムを受け止める力も
残ってなくなぎ倒される。
「ジュン!すごい!すごい!」
コッツが嬉しそうに叫ぶ。
「ジュン様!!」
後から来たメイの声に、ロナールとヤムが振り向き
場所を空ける。
「メイ、良かった。
生きててくれて、本当に良かった。」
メイを強く抱きしめた。
「ジュン様のおかげです。ありがとうございます。」
「メイを助けたのはセフィルだよ。
俺はメイを危なく死なせてしまうところだった・・・」
「ジュン、私だけじゃないよ。
ジュンがメイに付けていってくれた抗魔の指輪、それが
メイの命を繋いでくれたんだよ。」
セフィルが教えてくれた。
「そうだったんだ。良かった。」
セフィルは笑顔をこっちに向けた後、近くにあった
薄紫のローブと、木の杖を手に取った。
抱きしめる様に抱き、肩を震わす。
俺はみんなを促して立ち上がり
「セフィルの、お父さんのだね。」
「・・・うん。やっと、やっと帰って来てくれた。
お父様。」
涙を流しながら呟くセフィル。
そのローブは200年経っていても、光槍で
開けてしまった穴以外、汚れず綺麗なまま。
きっと纏っていた影で守られる形に
なっていたのだろう。
黒いローブに見えたのも、影だったんだ。
俺は、セフィルの肩に手を優しく置き声をかけた。
「良かったね、セフィル。」
「うん。ありがとう・・・
本当に、本当にありがとう!ジュン!」
流す涙をそのままに、こちらを向いて
微笑むセフィルの笑顔は、全てから解放され
ただただ純粋に喜びを表す
とても綺麗な笑顔だった。




