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「ジュン!何か今
とんでもねー速さで走らなかったか?!」
2階?というのか、上からロナールが話しかけてきた。
「今ジュン様の肩にいたのって精霊ですか!
私初めて見ました!」
その隣にいたメイも驚いた様に、嬉しそうに
話しかけてきた。2人に
「うん。今セフィルに、シルフにお願いして
速く走れる方法教わったんだ。」
「マジか!ジュンそれでなくても速えのに
まだ速くなるのかよ。」
「いやー、流浪の魔術師と戦う前に少しでも引き出しを
作っておきたいって思ったんだけど、ちょっと速すぎて
身体が全然コントロール効かないから、練習しないと
かえって危ないなぁ。」
俺が苦笑して返した。
「まー付け焼き刃は危ねぇけど、それでもいざって時に
色んな手段はあるに越した事はないかんな。」
「そうだね。」
俺とロナールが話していると、ハイバースさんが
「おい!そろそろ回帰の海域だ!
周りと光をよく見ておけ!」
操舵室からこっちに声をかけてきた。
晴れていたはずの天気が、いつの間にか少し先が霧に
囲まれてきていた。
少しずつ霧が濃くなり、すぐ先の視界も無くなる。
全員に緊張感が走り、船の行く先とコッツの胸元の
石の光を幾度となく見定める。
「いつもなら、この霧から抜け出すと
シスの海岸線が見えてくるんだ。」
ハイバースさんが声を荒げずに言う。
慎重になってる感じ。
シスの海岸線が見えてくる、という事は海岸から
離れていく方向のはずの今と、向きが逆向きになるって
事か。なら、どこかのタイミングでこの光が
逆を向くって事になる。
コッツの胸元から真っ直ぐ伸びる光は、少しずつ強さを
増しているのが分かる。間違いなく近づいている。
「え!」
「うお!」
全員が驚くくらい一気に霧が晴れた!
みんなでコッツを見る。
光は・・・真っ直ぐ、船の行く先を指している!
「シスの海岸線が見えん!
これは!抜けたかもしれん!」
ハイバースさんが明らかにテンションを上げて叫んだ。
ハイバースさんと船員の2人が、うぉー!!と
叫んでいる。
回帰の海域を抜けるって事は余程の事なんだろう。
それよりも、俺らは全員、一気に緊張感が増していた。
程なくして、シスではない海岸をハイバースさんが
見つけ、海岸からすぐ近くに碇を下ろした。
全員が甲板に集まり話し合う。ハイバースさんが
「ジュンよ、俺らはどうしたらいい。」
俺は少し逡巡し
「ここで、3日間待機していただく事は出来ますか?」
「3日くらいなら余裕だが。」
「そうしたら、俺らはとりあえず3日間、ここを
探索して、何も見つからない時は一度船に戻ります。
もし、3日経って連絡も無く戻っても来なかったら
俺らに何かあったと判断して、一度シスに
戻って下さい。」
「分かった。海岸近くだと何が出るか分からんから
少し沖に出て待機する。海岸は見張ってるから
お前らが戻ればすぐ分かるからな。」
「ありがとうございます。
俺らはあの海岸を拠点にして、光の示す方向に
向かおう。光の強さからいって、この先はかなり
危険だ。みんな、慎重に行こう。」
全員、こっちを見て頷いた。




