第二幕 第四十七場
村長の屋敷の広間では、大勢の人々がにぎやかな時を過ごしていた。
そんななか、巨漢の老婆トリーネは神経を研ぎすまし、音楽を奏でるピエロ達の一挙手一投足を監視していた。
「どうしたんだいトリーネさん」猟師のコルベスが言った。「そんな怖い顔して」
「……いやね、ちゃっと気になる事があってね」トリーネはピエロ達から視線をそらさずに言った。「たんなる私の思い過ごしであればいいんだけど」
「何か気になる事でもあるのかい?」
「……なんでもないよ。あんたはこの宴を楽しみな」
コルベスは肩をすくめると行ってしまう。
トリーネから遠くはなれた場所では、牧師と金持ちのヒルデブラントが幼女ザンネの遊び相手になっていた。ザンネは二人の間に立つとその手を取り、足を曲げてブランコ遊びに興じている。
わきあいあいとしている三人の横をすり抜けたのは、新人の女中だった。その女中は笑顔を繕っているものの、どこか張りつめた雰囲気を醸し出していた。女中の見据える先には、馬鹿なハンスと巨乳少女エルゼの姿があった。
「そうだエルゼ」ハンスが言った。
「なあにハンス」エルゼが言った。
「今この場で俺たちの結婚を発表しようじゃないか」
「うん、そうしよう」エルゼがにっこりと笑った。「そうしましょう」
「おやおや、そういうことじゃったのか」そう言って二人の間に笑顔で割って入ってきたのは、村長ヨハネスだった。「ならばこのワシが協力してやろう」
「本当かい村長さん」ハンスが村長に顔を向ける。
「村長はよせ。今はハンス、お前が村長ではないか」村長が言った。「ワシのことはヨハネスでよい」
「うん、わかった。ヨハコスさん。それで何をしてくれるんだい?」
「ヨハネスじゃ」村長は笑顔で青筋を立てた。「ワシがお前さん達のために乾杯の音頭をとってやろうじゃないか」
「それは素敵。さすがロマネスさん」エルゼが言った。「よろしくお願いします」
「ヨハネスじゃ」村長はなんとか笑顔を続けている。「それじゃあさっそくワインの準備をしようではないか。めでたい席での乾杯といったらワインが一番だからのう」そう言うと、近くにいた新人の女中に声をかける。「悪いがお前さん、ワインの準備をしてくれるかのう」
「かしこまりました。ヨハネス様」女中はにやりと笑った。「すぐにでも準備いたします」




