第二幕 第四十六場
村長の屋敷の地下室では、女中グレーテルと白い鎧を着込んだ爆乳女イルゼビルとの死闘が続いていた。
グレーテルがナイフを投げた。騎士がそれをムチで払いのけたその瞬間、グレーテルは一気に間合いをつめ、騎士の横っ腹を何度も斬りつけた。
「無駄だって言ってんだろうがよ」騎士がグレーテルの腹に蹴りを入れ後退させると、すかさずムチで追撃する。ムチはグレーテルの頬を叩いた。
グレーテルは後ろの飛び退き距離を取る。鼻から流れ出た血を拭った。
「いい加減に降参したら?」騎士は言った。「今ならその首に首輪をつけて、犬のように全裸で村中お散歩するだけで許してあげるからさ」
グレーテルは騎士の鎧の胴体部分を注視する。胸当てと背当てをつなぎ止めているいつくかのベルトには、切れ込みが刻まれていた。無理矢理爆乳を押し込んで着ている鎧は、ベッドがきしるような音を立て、今にもはじけ飛びそうだ。
グレーテルはにっこりと笑った。「ごめんなさい。私はあなたのように露出狂ではありませんので、そのようなご趣味にお付き合いするつもりはありません」
「このクソアマ!」騎士がムチを怒り任せに振り回し始めた。棚に並べられた酒ダルが次々とはじけ飛び、あたりには酒気が漂う。
グレーテルは飛びナイフで威嚇しながら、やがてくるであろう鎧がはじけ飛ぶ瞬間を逃さぬよう、騎士とはつかず離れずの距離を保っている。
一方その頃、地下室の奥で泣き崩れている猫耳娘マリィーの脳裏には、雨が降る森の中で自分に手を差し伸べる女性の姿が浮かんでいた。マリィーがその女性の手を取ろうとしたその瞬間、女性は黒い砂となり崩れ落ちた。マリィーは必死に黒い砂をかき集めるも、雨がすべて洗い流してしまう。
死という文字が過った。
「どうして死んじゃったのヨリンデ!」マリィーは雨が降りしきる空に向かって叫んだ。
返事は返ってこない。かわりに雨が激しさを増し轟音を立てる。
「私がヨリンデの代わりに復讐を成し遂げてやる。ヨリンデの仇を取ってヤルンダ。コロシテヤル。ミンナミンナコロシテヤル——」
地下室で泣き崩れていたマリィーが立ち上がった。涙を拭うと目を大きく見開いた。決意に満ちたまなざし、その目の瞳孔は縦に割れていた。




