第二幕 第四十五場
村長の屋敷のうす暗い書斎では、トゥルーデがあおむけに倒れて腹から血を流していた。
誰かがランプを持って書斎へとやって来る。それはこの屋敷に住み込みで働いている新人の女中だった。女中はトゥルーデを見るなり悲鳴をあげ、顔を青ざめさせた。
女中はかがみ込むとトゥルーデを揺さぶる。「奥様奥様。しっかりしてください奥様」
トゥルーデが呻きながら目を開けた。「……どうして女中がここに?」
女中がトゥルーデの身を抱き起こしながら言う。「二階の私の部屋の天井から血が滴り落ちてきましたので、それでおかしいと思い様子を見にきました」トゥルーデの上着を脱がせ傷を見ようとする。「それよりも奥様、お怪我は大丈夫なのですか?」
トゥルーデが女中の手を止めた。「大丈夫心配いらないよ」そう言うと上着の下から血のりを仕込んだ鉄板を取り出し、床に投げ捨てた。「まったくヒルデブラント様々だね」
「これはいったい?」女中が困惑している。
「あいつも予想外だったろうね。私が鉄板を仕込んでいることは」トゥルーデはそう言うと顔を歪め苦痛に呻きだす。「だけどざまあないわね。魔女との戦いで痛んでいたとはいえ、あの一発で気絶してしまうなんて」
「あ、あの奥様?」
「悪いけど肩貸してくれるかしら?」
「は、はい」女中はトゥルーデの腕を自分の肩にまわす。
トゥルーデはふらつきながらも立ち上がった。窓の外を見ると家々に明かりが灯り、人々が楽しそうにはしゃいでる。まだ祭りの興奮が覚めやらぬようだ。
「……下ではまだ晩餐会は続いているの?」トゥルーデが訊いた。
「はい。まだ続いております」
「……そう。それならあなたはもう休んでいいわよ」
「えっ? ですがまだ仕事はまだ終わってませんよ」
「大丈夫。あなたはもうおやすみなさい」トゥルーデは女中の眉間に人差し指をあてた。「ブリックレーブリット」
その瞬間女中は崩れ落ち、トゥルーデがそれを抱きかかえた。女中はすやすやと寝息を立てている。
「もう絶対に許さないよヨハネス」トゥルーデは決意を口にすると呪文を唱える。「ブリックレーブリット」その瞬間トゥルーデは光に包まれた。そして光が消えさると、その姿は新人の女中そっくりになっていた。




