第二幕 第四十三場
おっぱい村の外の平野では、言葉をしゃべれなくなった動物達が右往左往していた。動物達は必死にしゃべろうとするも、すべて鳴き声に変わってしまう。いったい何が起こったのかわからず、泣き出す動物も現れた。
「これでわかったか。愚かな動物どもよ」白ひげを生やした老人が言った。「お前達のような傲慢なやつらには、二度と言葉など与えぬ」
熊が吠えた。そしてやにわに老人に襲いかかる。
「このバカチンが!」老人が怒鳴り声をあげた。
すると空から雷が落ち、熊を黒こげにしてしまった。動物達があんぐりと口を開ける。
「私はこの世界を造った偉大な神だ」老人は大きく両手を広げた。「この神に喧嘩を売るとはおもしろい。かかってきなされ。まとめて全員黒こげにしてやるぞ」
顔を青ざめさせた動物達は、一目散に森に向かって逃げ出した。
「やれやれ」老人は自分の肩をもみほぐしながら首をまわした。「逃げ出すとは不甲斐ないやつらめ」そこで腹の虫がなった。「ひさびさに張り切ったせいで、腹が減ってしまったではないか。早く天界に帰って、天使達にうまいものでも作らせるか。いや、でも待てよ。天界での仕事をほったらかしにして、下界で遊び回ってたと知ったら、天使達は激怒しそうだな」
「神様ー!」不意に背後から大声が聞こえた。「神様やっと見つけた!」
老人はぎょっとし身構える。「天使よ。私を連れ戻しにきたか」
老人が振り返ると、そこにいたのは貧乳少女のリーゼと老いた猟犬のズルタンだった。二人は走りながらこちらに向かってくる。
「あれは、あの時の娘ではないか」
「神様こんばんは」リーゼは神様の前に立つと、息を切らせながら挨拶をした。
「おお、いったいどうしたのかね。そんなにあわてて」神様が訊いた。
「神様、これから村長さんの屋敷でおこなわれている晩餐会に参加しませんか。せっかく神様に来ていただいたのに、わびしいもてなしだけでは満足されてないでしょ」
老人は感じ入った様子でリーゼの手を取り握りしめた。「そいつはありがたい。ちょうどお腹がぺこぺこになってしまってたんだ。お前さんは本当にできた娘だ。さすがは人間。私はもうれつに感動しておるぞ」
「大げさですよ神様」リーゼは照れ笑いをする。
「さあさあ行こうではないか。案内しておくれ」
「もちろんですとも神様」そう言うと歩き出す。「行こうズルタン」
ズルタンんは返事をする。「わん……わん? わん?」
二人と一匹は村長の屋敷を目指して、足早に進んでいった。




