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第二幕 第四十一場

 おっぱい村の外の平野では、ヤギ達と毛を刈られた丸裸のヒツジ達が鳴き続けていた。


 白ひげを生やした老人があきれた様子で言った。「なあ、もういい加減にやめんか」


 それでもヤギとヒツジ達は鳴き続ける、例えその声がかすれようとも。しかしヤギとヒツジ達は知らない、狼達がすでに退治された事に。


 ヤギとヒツジ達が来るはずのない狼達を呼び続けていると、森の方角からこちらに向かって何かがやってくる。暗くてその姿はよくわからないが、たくさんの影がうごめいていた。


 ヤギがかすれた声で言った。「やっときたか」


 ヒツジもかすれた声で言った。「やっときやがった」


 だがしかしやってきたのは狼達ではなかった。それは森に棲む動物達だった。犬、猫、狐、兎、熊、鳥など様々な種類の動物達が怒りの形相でヤギとヒツジ達をにらみつける。


「夜中にギャーギャーうるせえんだよ!」熊が怒鳴る。


「まったく何を考えているんだ」鳥が一同の頭上を旋回しながら言った。


「いったい何の騒ぎなんだい?」兎が訊いた。


 予想外の登場人物に、ヤギとヒツジ達はこそこそと密談を始める。


「おい、答えなさいよ」兎が問いただした。


「じつはですね」ヤギが老人を顎で指し示した。「あのジジイが森に火を放とうとしていたんですよ。それで僕たちは必死に足止めをして、助けを呼んでいたんです」


「人間とはとても酷い生き物です」ヒツジが目に涙を浮かべて言った。「自分たちの欲望のために僕らの毛を刈り取り、そして今度は森を焼き尽くそうとしている」


「おいちょっと待て」老人が言った。「私はそんなことしてないし、しようともしてない」


「うるせえジジイ!」熊がいきり立つ。「やっぱ人間ってのは卑怯なやつらだ!」


「人間という下等生物は、私たち野生の高等生物には考えられないような愚行を犯す」猫が悟ったような顔つきで言った。「愚かな人間どもを駆逐せねば」


「おい、お前達落ち着きなさい」老人が動物達をなだめる。「私の言葉を聞いてくれ」


「黙りなジジイ」鳥が老人の目の前で羽ばたきながら、空中で静止する。「人間が言葉をしゃべるだけで虫酸が走る。言葉ってのは俺たち野生の高等生物にだけ許された特権だ。覚えときな」


 動物達が次々と罵り始めた。自分たち動物をほめたたえ、人間達を馬鹿する。


 老人が両手を握りしめた。「動物達は傲慢な生き物に成り下がってしまった。なまじ言葉を与えたせいでたちが悪い。お前達に言葉を与えたのは神として私の失態」そう言うと右手の人差し指を天に向ける。「貴様ら動物達は、今後二度と言葉を使う事を禁ずる」


 その瞬間、老人の指先から光が輝き、その光はものすごい速さで世界中を駆け巡る。

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