第二幕 第三十二場
おっぱい村の人気のないとある路地裏で、トゥルーデが壁に背をもたれて苦しそうに胸をおさえていた。そこへ猫耳娘のマリィーがやってくる。
「いた、探したわよ」マリィーはトゥルーデに駆け寄る。「ねえヨリンデ、これはいったいどういうことよ。お義父様ったら村長の座をあの馬鹿なハンスに譲ってしまったのよ。村はその話題で持ち切りよ。これは嘘よね。何かの間違いよねヨリンデ」
「この村ではその名前で呼ばない約束のはずよマリィー」トゥルーデはそう言うと激しく咳き込み、壁に背をあずけたままずるずると地面へ腰を下ろした。
「ちょっとヨリンデ。どうしちゃったのよ」マリィーが心配そうに声をかける。
「大丈夫」トゥルーデは力ない笑みを見せた。「ちょっとばっかし、魔女退治に躍起になっただけさ。何にも心配いらないよ」
マリィーは眉根にしわを寄せた。「またそうやって自分一人で何でも解決して。どう——」
「さすがトリーネさん。あのビッグウルフをやっつけるなんてたいしたもんだよ」その声は路地裏から見える表通りから聞こえた。
二人が表通りに目を向けると、猟師猟犬達がわいわいと騒ぎ立てながら歩いていくところだった。その中には猟師コルベスや老いた猟犬ズルタンの姿もあった。
「どうやらあっちの問題は解決したようだね」トゥルーデが立ち上がった。
「いったいどういうことなのヨリンデ。何が起こってるのよ」
「悪いけどマリィー。今日で家族ごっこはおしまい。私は復讐相手を見つけた。そいつを殺したら姿を消す。だからあんたは自分が好きなように生きな」
マリィーは驚き顔になった。「どういうことよ。家族ごっこは終わりって、そんなのあんまりよ。捨てるんだったら最初っから私を拾わないでよ。どうして私を拾ったりしたのさ」
トゥルーデがマリィーの頭に手を置いた。「森の中で一人泣いているあんたが、昔の自分の境遇と一緒だったから見捨てる事が出来なかった。ごめんね。私のエゴだよ」
「いやよヨリンデ。私も復讐を手伝うから行かないでよ。そしてまた家族三人で暮らそうよ」
トゥルーデが複雑な表情をうかべた。「……ごめんね。それだけはできない」
マリィーが目に涙を浮かべる。「ダメだよヨリンデ。私の晴れ舞台を見てくれるって約束したでしょ。私絶対におっぱいコンテストで優勝してみせるから。だからお願い」
「……ブリックレーブリット」トゥルーデは猟師に変身するとマリィーに別れを告げる。「今までありがとうマリィー」そう言うと表通りに走っていき、猟師達にまぎれこむ。
マリィーは急いで追いかけて表通りに出るも、もはや誰が誰なのかわからない。遠ざかっていく猟師達の背中に向かって言った。「絶対に優勝するから見ててよ。お願い……」




