第二場 第十六場
巨漢の老婆トリーネと老いた猟犬ズルタンは猟師の案内のもと、村の外にある森へ足を踏み入れ、問題の現場へとたどり着いた。あたりには狼達の焼死体が転がり、焦げ臭い嫌なニオイが漂っている。
「おやまあ、これはずいぶんとこんがり焼けたもんだね」トリーネが鼻をつまんだ。「それにしても酷いニオイだね。鼻がひん曲がってしまいそうだわ」
猟師があたりを見回す。「どうやら他の猟師達は狼の探索に向かったみたいです」
トリーネもあたりを見回す。「そうみたいだね。私たちも早く合流しないといけないね」
「トリーネさん」ズルタンが言った。「ありがとうございます」
「なんだいズルタン。やぶからぼうにお礼なんて言っちゃて。私にはあんたに感謝される覚えはないんだけどね」
「私を狩りに同行するのを、こころよく認めてくださったじゃないですか」
「なんだいそんなことかい。いちいちそんなことで礼を言わなくてもいいんだよ」
「いえ、私にとってはどんなにお礼を言っても、言いたりないぐらいの事ですよ」
トリーネは照れくさそうに人差し指で顔をかく。「大げさな犬だね」
「しかしズルタンよ。これで本当によかったのかね」猟師が言った。「コルベスさんはお前に狩りは無理だと判断したから、留守番を命じたんじゃないのか」
「おやおや、それはおかしな話だ」トリーネが怪訝な顔つきになる。「この子は年老いているとはいえまだまだ現役の猟犬。留守番させるなんてどういうつもりなんだろうね、あんたのご主人は。ズルタン、あんたなにか心当たりはあるかね?」
「わかりません」ズルタンはしゅんとなった。
「もしかして、ご主人を怒らせるような事でもして嫌われたのかい?」
「いいえそれは絶対にありえません」ズルタンは声を大にして否定した。「ご主人様は私を家族だと言ってくれた。それに私に気を使って新しい犬を飼う事もしないと断言しました」
トリーネは大声で笑った。「なんだ、あんた愛されているじゃないか。だとしたズルタン、あんたのご主人が留守番を命じたのは、あんたの事が心配だったからだろ。そんな簡単ことにも気づかなかったのかい」
ズルタンは顔を真っ赤にし、下を向いた。
「だけど留守番は少々過保護すぎるね」トリーネは話を続けた。「ズルタンよ。今回の狩りでいいところ見せつけてご主人に教えてやんな。俺はまだまだやれるってな」
ズルタンは顔を上げると吠えた。「はい!」




