第二場 第十七場
金持ちのヒルデブラントは未だ自宅の玄関広間で踊り続けていた。
「ああ、貧乳娘よ」ヒルデブラントは恍惚とした表情を浮かべている。「僕は祭りが終わるのが待ち遠しいよ。早く君を手に入れたい」
家の玄関がノックされる。
ヒルデブラントはそれを無視し踊り続ける。「ああ、じつに楽しみだ貧乳娘よ。君の貧しい胸は、この僕が本質的に貧乳好きだという事を教えてくれた。そのお礼に君の貧相な胸を愛でたい。今すぐにでも」
再び家の玄関がノックされる。
「ああ、貧乳娘よ」ヒルデブラントはなおも踊り続ける。「この僕の歪んだ愛を受け入れておくれ」そこで足を止め天井を仰ぎ見る。「もし抵抗するというのならば、力ずくで受け入れてもらうよ。それはそれで楽しいんだけどね」ゆがんだ笑みを浮かべ、舌なめずりをする。
三たび家の玄関がノックされた。
「またですか。僕の至福の時間を邪魔をするのは許されませんよ」ヒルデブラントは怒り心頭といった様子で玄関に向かうと、勢いよくドアを開いた。「いい加減に——」
「こんにちは。ヒルデブラントさん」そう言ったのは貧乳少女のリーゼだった。
「貧乳少女ではないですか」ヒルデブラントはリーゼの貧乳を見つめて言った。「これはこれはお早い到着で。観念して私のもとに来る気になってくれたのですね」にっこり笑う。
リーゼもにっこり笑うと、手に持っていた小袋をヒルデブラントに差し出す。「はい、ヒルデブラントさん。あなたにプレゼントよ」
「この僕にプレゼント。これはありがたい」ヒルデブラントは小袋を受け取ると中身を見て、絶句する。「……こ、これは……金貨。それもこんなに……もたくさん」
「これで借金は返したわよ。約束は約束だからね」リーゼはしたり顔になった。「これで私はあなたのものなんかにはならないわ。あなたも約束を守って私に手を出さないでよね。約束を守れない人は最低なんでしょ」そう言うときびすを返し、走り去っていく。
ヒルデブラントは憤怒の雄叫びをあげながら家の中を駆け出した。「ちくしょう! ちくしょう!」自室にたどり着くと部屋の隅に置いてある大きな宝箱の錠に鍵を差し込んだ。「こんな金、僕の財産に加えても嬉しくないんだよ。お前じゃなきゃダメなんだよ貧乳娘」
宝箱を開けたヒルデブラントはあんぐりと口を開けた。なぜならば宝箱の中身がからっぽだったからだ。
「ない。僕の財産が……僕の全財産が。どういうことだ。いったい誰の仕業だ。この宝箱の鍵を持っているのは僕と妻だけのはず……まさかイルゼビル。君の仕業か?」
ヒルデブラントは走り出した。「探さなくては妻のイルゼビルを」




