第二幕 第四場
おっぱい村のとある場所に建つボロ家。そこへマントを翻しやってくる男の姿があった。それは金持ちのヒルデブラントだった。ヒルデブラントはボロ家のドアをノックする。すると中から出てきたのは猟師コルベスだった。
「やあどうもどうもコルベスさん。もうすぐおっぱい祭りが始まりますね」ヒルデブラントは笑顔で言った。「さっそくですが、借金を返してもらいましょうか」
「すまないヒルデブラント。金は用意できていないんだ」コルベスは申し訳なさそうに謝った。
「あれれ、おかしいですねコルベスさん」ヒルデブラントは笑顔を繕ったまま、わざとらしく首を傾げる。「おっぱい祭りまでにはちゃんとお金を用意するっていったじゃないですか」
「猟がなかなかうまくいかなくて、金が稼げないんだ」
「おっぱい村一番の猟師の言葉とはとても思えないですね」ヒルデブラントはコルベスの肩に手を置く。「ちょっと失礼しますよ」そう言うと家の中に入っていく。
家の中では貧しい食卓につくツギハギの服を着たやせっぽちの貧乳少女と老犬の姿があった。それはコルベスの娘リーゼと猟犬ズルタンだった。
「なるほど。やっぱり本当だったんですね」ヒルデブラントはコルベスに顔を向ける。「あなたが老えて使えない猟犬を飼っているという話は。これじゃあ狩りがはかどらないわけだ。あんな老犬捨てて、新しい犬を飼うといい。そのためのお金をお貸ししますよ」
「やめて!」リーゼが声を張り上げ立ち上がる。「ズルタンは家族なの。捨てるなんてダメ」
ヒルデブラントは手を叩いて笑った。「動物を家族扱いとは。おもしろいお嬢さんだ」
「悪いがヒルデブラント」コルベスの声には怒りがにじんでいる。「娘の言う通りズルタンは家族だ。捨てるなんてとんでもない。それに俺は新しい犬を飼うつもりもない。そんなことしたらズルタンが嫉妬しちまう」
「おやおやそうですか」ヒルデブラントは肩をすくめた。「困りましたね。だとしたらどうやってお金を稼ぐんですか。ねえねえ、教えてくださいよコルベスさん」
「私がおっぱいコンテストで優勝し賞金を手に入れるわ」リーゼがヒルデブラントに詰め寄る。
ヒルデブラントはリーゼの貧乳を見つめ笑い声を漏らした。「おっぱいコンテストで優勝して賞金を手にする? おもしろいお嬢さんだ。そんな貧相な胸で勝つ気でいるとは」
貧乳を指摘されたリーゼはくやしげに下を向く。
「おっぱいコンテストには僕の妻も出場するから、お嬢さんには勝ち目はありませんよ。なんといったって僕の妻は爆乳ですからね。今からでも遅くはない。恥をかく前におっぱいコンテストを辞退するといい」
リーゼは反論する。「やってみなくちゃ、わからないわよ」
「そうですか」ヒルデブラントは値踏みするかのようにリーゼを見つめる。「うーん、胸は残念ですが顔は悪くないですね。どうです、おっぱいコンテストで優勝して賞金を手に入れるなんて夢物語あきらめて、うちで女中として働いて地道にお金を返しませんか。働いてくれるというのならば」そこでリーゼが着ているツギハギの服を指差す。「そんなボロ切れではなく、きれいなメイド服を着せてあげますよ」
「結構です」リーゼがそう言い終えると、折悪しくお腹が鳴った。はずかしさのあまり顔を赤く染める。
それを見たヒルデブラントが畳み掛ける。「うちで女中として働けば、おいしい食事が食べれますよ。もちろん腹いっぱいにね。どうです素敵でしょ」貧相な食卓を指し示す。「あんなものじゃあ、栄養なんてとれやしない。そのせいであなたの胸は育たない。うちで働いて栄養のある食事をとりましょう。そうすればあなたの胸もすくすくと育つはずだ」そこで舌なめずりをする。「そうなったら大切にかわいがってあげますよ」誘いの手をリーゼに差し出す。
リーゼは手を払いのけた。「最低!」
「この僕が最低ですか。それは間違っていますよ。最低というのは約束を守らない人の事を言うんですよ」ヒルデブラントはコルベスに顔を向ける。「そうですよね。お父さん」
「その事についてはすまないと思っている」コルベスはくやしげな表情で言った。
「すまないじゃ、すまないんですよコルベスさん。約束は約束ですからね。今日中にお金を用意しておいてください。さもなくば、借金のかたにお嬢さんをもらいますからね」
「貴様悪魔か!」コルベスが怒鳴った。
「ひどいな。僕は悪魔なんかじゃありません善人ですよ。だからこうして貧しいあなたにお金を貸してあげたんですよ。無論お金を返せば娘さんには指一本触れません。お約束しますよ」
コルベスは拳を握った。「高利子で金を貸したくせに」
ヒルデブラントはにやりと口元を歪める。「とにかくきちんとお金を用意してくださいよ。おっぱい祭りが終わる頃にもう一度来ますので」そう言うと家から出て行った。
立ち尽くす二人のもとにズルタンが歩み寄る。「すみませんご主人様。私のせいで……」
コルベスはズルタンの頭をなでた。「気にするな。お前のせいじゃない」
「心配しないでズルタン。私がおっぱいコンテストで優勝してみせるから」
コルベスとズルタンはリーゼの貧乳を見たあと、互いに視線を交わし重いため息をついた。
「最悪の場合この家を売っぱらって金を作るしかないな」コルベスは悲しげな表情になった。
「そんなお父さん。早まった事をしないで。絶対に私が優勝してみせるから」
「だけどな——」
「お願いだから私を信じて」リーゼは真剣なまなざしをコルベスに向ける。
コルベスはリーゼの視線に射抜かれ、心動かされる。「……わかった。お前を信じるよ」
リーゼはにっこりと笑った。「ありがとうお父さん」




