第一幕 第十七場
村長が自室でイスに座り窓の外を眺めていると、いつのまにかまぶたが重くなり眠りに落ちた。村長は夢を見る。それは過去の記憶だった……
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「おっぱいコンテスト優勝者は」若かりし頃の村長が言った。「ヨリンデです」
広場に集まった人々が盛大な拍手を送るなか、一人の少女が舞台の中央で嬉しそうに手を振った。夜空に花火があがり、少女の優勝を祝福する。
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「これはいったいどういう事だヨリンデ」
前村長の怒声が村長宅の自室にこだまする。
「おっぱいコンテストの投票数が村人の人数を越えていた。おかしいと思い調べてみたら、投票用紙を偽造したものが大量に見つかった。その偽の投票用紙にかかれていた名前はすべて君のものだったよ、ヨリンデ」
「ヨリンデよ」村長が言った。「不正行為を働いたな」
「私じゃありません」ヨリンデが必死に身の潔白を訴える。「私はそんな汚い事してません」
「じゃあいったい誰の仕業だと言うのかね?」前村長が言った。
「わかりません……けど、もしかすると……」ヨリンデはそこで口をつぐんだ。
「もしかすると何かね」前村長が問いつめる。
「数日前の夜、うちに怪しい人が来たんです。その人はおっぱいコンテストで優勝させてやるから賞金をよこせと言ってきたんです」
「その男はどんなやつじゃった?」村長が訊いた。
「よくわかりません。なにせ外套のフードを目深にかぶり、ぼそぼそとしゃべっていたので」
「なるほどね」前村長が言った。「それで君はその男と結託して不正を働いたわけか」
「そんなことはしていません。私はその男の要求をきっぱりと断りました」
「そいつはおかしいのうヨリンデ」村長が言った。「だったらどうして投票用紙が偽装され、お前さんが優勝するように仕組まれたんじゃ?」
「そ、それは……」ヨリンデは言葉を詰まらせた。
「残念だがヨリンデよ」前村長が嘆かわしげに首を横に振った。「お前さんはおっぱいコンテスト不正行為のため失格じゃ」
「そんな酷すぎる。あんまりですわ」ヨリンデが取り乱し始めた。「私は何もしてません。本当です。お願いだから信じてください村長様」
「もう何も聞く事はない」前村長が冷たい口調で言った。「今すぐにここから出て行きなさい」
「お願いです村長様。私の話を——」
「出て行かぬか!」前村長が怒鳴り声をあげた。「さもなくばこの村から追い出すぞ!」
「……そんな酷い」ヨリンデは目に涙を浮かべると、とぼとぼと部屋から出て行く。
「ヨハネスよ」前村長が村長に顔を向けた。「どう思うかね?」
「とおっしゃいますと?」
「おっぱいコンテストの投票用紙を偽造するなど、普通の村人には無理だ。特別な紋章の印も必要なのだからな。となると犯人は村の重役達の誰かになってしまう」
「なんですと。そんなことが……」
「村の重役からそんな不届きな輩がいるとなれば、探さなければいけないな」
「村長様。お手伝いしますぞ」
「いや、いい」前村長は首を横に振った。「これは私一人で調査する。私一人でな」
村長は前村長の発言に不信感を覚え、顔をしかめる。「……わかりました」
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父と母の墓の前に立つヨリンデはやつれていた。
「ヨリンデよ。ここにおったのか」村長がやさしく声をかけた。
ヨリンデは涙で赤くはらした目を村長に向けた。
「ヨハネスさん。私がいったい何をしたというの。どうしてこんな目に遭わなくちゃならないの」
「気の毒としか言いようがないのう」
「私不正なんてしてない。それなのに……」
ヨリンデは怒りで拳を握った。
「きっと誰かが私を陥れようとしたんだわ。私はそいつを見つけ出してやる。例え魔女に魂を売ってでも必ず見つけ出して復讐してやる」
村長はかける言葉が見つからず、押し黙る事しか出来なかった。
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「村長様。ヨリンデがいなくなってしまいました」村長は前村長に言った。
「なんたることだ。まるで私らが追い出したかのようではないか」前村長は自室の窓から外を眺める。「これでは胸くそ悪い」
村長は前村長にワインの入ったグラスを差し出した。
「こういう時は、飲んで忘れるのがよいですぞ村長様」
前村長はグラスを受け取ると一気に飲み干す。
「まったくいやな事件だ。こうなってしまっては忘れるのが一番だな……」
前村長の足下が急にふらつき、崩れるようにして床に倒れる。
村長はかがみ込むと、心配そうに前村長をゆさぶる。「村長様。村長様。しっかりしてください。大丈夫ですか?」
前村長は顔を引きつらせながら村長をにらみつけた。「貴様……謀ったな」
村長がさげすむような目つきで前村長を見る。
「あなたがいけないんですよ」




