第一幕 第十八場
「村長さん。村長さん起きてください」
そう言って誰かが寝ている村長を揺さぶった。
「……うむ。何事じゃ」
村長が重たいまぶたを持ち上げると、目の前には猟師コルベスの姿があった。その背後には満足げな笑みを浮かべた猟師猟犬達の姿が、窓から差し込む夕日によって赤く染められていた。
「村長よ。狼どもの退治は終わったぜ」
「本当かコルベスよ」村長はイスから飛び上がった。「よくやってくれた。後は魔女を——」
「村長さーん!」
スキップをしながら浮かれた様子でやってきたのは、金持ちのヒルデブラントだった。ヒルデブラントは猟師達をかきわけながら村長の前に進み出る。奇妙な事にヒルデブラントの上着ははだけており、血が付いていた。しかし当のヒルデブラント自身はまったくケガをした様子はなかった。
「どうしたヒルデブラントよ。その格好なんじゃ? ケガでもしたのかね」
「ご心配なく。僕はケガなどしておりませんよ。これは魔女との戦いでこうなってしまっただけですから」
「魔女だと! ヒルデブラントよ、お主は魔女と戦っていたのか」
ヒルデブラントは照れくさそうに笑う。「戦っていたのは僕じゃありません。白い騎士です」
「白い騎士? そいつはいったい何者なんだ?」
「素性はわかりませんが、おっぱい祭りを邪魔しようとする魔女と戦ってくれました。しかし相手の魔女は手強く苦戦していると、たまたまその場に居合わせた神様によって討ち滅ぼされました」
「神様だと。神様がおっぱい村に来て魔女をやっつけてくれたのか。そいつはありがたい」
まわりのみんながざわめき始めた。その顔は喜びに満ちている。
「魔女も狼どももやっつけたんだ」コルベスが言った。「これでおっぱい祭りは安心だな」
みなが歓喜の声をあげた。
「よし野郎ども」コルベスがそう言って窓の外を指差した。「ようやくおっぱい祭りを楽しめるぜ! もうすぐでおっぱいコンテストの投票が始まる。急ぐぞ」
猟師猟犬達が元気よく返事すると、ぞろぞろと部屋から出て行く。
村長が部屋に残っていたヒルデブラントに顔を向ける。「お前は行かないのか?」
「僕は投票権を失ってしまったので行く意味がないのですよ、村長さん」ヒルデブラントはそこではっとした表情になる。「あ、忘れていた。あなたはもう村長じゃないですよね。今はハンスが村長。そうでしょ、ヨハネスさん」そう言い捨てると部屋から出て行った。
一人残された村長は渋い顔をした。




