↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クズ、異世界でもクズになる  作者: しすは
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/10

【第四話】人の街にはクズが不可欠

あの女の、脳がとろけるような極上の味を覚えてからというもの、そこら辺の肉なんて生ゴミにしか思えなくなっちまった。

結果、まともな食事も摂らずに、極上の空腹を抱えたまま過ごすこと3日。

運が良いのか悪いのか、森の街道でいかにも頭の悪そうな盗賊の群れに襲われた。もちろん、返り討ちにして全員食材になってもらったわけだが……。

「……ケッ、まずい、まずすぎる。ゴミだな」

数人の肉を味見して、一つの明確な真理に辿り着いた。

要するに、薄汚くて醜い者よりも、肌のキメが細かくて見た目の良い美形のほうが圧倒的に美味いのだ。美の価値は肉の味に直結している。

「出来損ないがしゃしゃり出てんじゃねぇよ……。家畜以下の分際で、この俺に食べてもらえたこと自体を俺に感謝してほしいくらいだ」

俺は咀嚼していた盗賊の肉を、不快感も露わにペッ、と地面へ吐き出した。

ふと死体の懐に目をやると、血に汚れた紙が落ちていた。よく見るとこれは、この付近の街までのルートが描かれた地図があるじゃないか。

「へぇ、いいもの持ってるじゃん」

俺は上機嫌で地図を奪い、極上の美形が大量に転がっているであろう街へと向かうことにした。

街に到着すると、そこは活気と人混みに溢れていた。

今すぐそこら辺を歩いている美味そうな女を片っ端から拉致して貪り食いたい衝動に駆られたが、流石に堂々とそんな暴挙に出れば、街の戦力に殺される危険がある。クソ面倒なリスクは避けるに限る。

観察していると、どうやらこの街には「冒険者ギルド」という、合法的に獲物を物色するのにうってつけの施設があるらしい。

俺は自分の本性を完璧に隠し、善良で無害な旅人としてギルドの門を叩いた。

「ギルドに新しく登録なされますか?」

「あぁ、頼むよ」

極力、トゲのない爽やかな声を意識して答える。

「では説明いたしますね。当ギルドの冒険者は全部でFからAまでの6ランクに分けられておりまして……」

受付嬢の長々とした説明を適当に聞き流している時、ふと思い出した。

「これ、売れますかね?」

懐から取り出したのは、あの女騎士が使っていた剣だ。一度は俺の体内に吸収されていたが、邪魔なので事前に吐き出しておいたものだ。

それを見た受付嬢の顔が、一瞬で強張った。

「こ、これは……Aランク相当の銘品です! 最低でも金貨50枚の価値はありますよ……っ!?」

その瞬間、ギルド中が水を打ったように静まり返り、次いで爆発的なざわめきが起こった。どうやら想像以上に高価な代物だったらしい。

「本当にお売りになってよろしいのですか?」

「あぁ、俺にはいらないものなのでな」

実際、自分で使おうとしたらまともに扱えなかったしな。ただの重い鉄屑だ。

「おい、待てよ。そこのおっさん」

突如、背後から声をかけられた。

振り返ると、赤髪の、いかにも引き締まった美味そうな体つきをしたガキが、俺の胸ぐらを乱暴に掴んでいた。

「この剣……どこで手に入れた!?」

ガキの瞳には、燃え盛るような怒りが目に見えるほど出ていた。なるほど、あの女騎士の関係者か。

「荒地で倒した奴から取ったんだよ。」

嘘は言っていない。俺の腹から取り出したのだから。

「さっさとその汚い手を下げろ、ガキ」

「なっ……!?」

俺はそいつの手首を掴み、骨が軋むような力で容赦なく払いのけた。驚愕に目を見開くガキを放置して、俺は金貨を受け取り、ギルドを後にした。

宿にチェックインして少し眠った後、俺はお楽しみのディナーへと出かけた。

深夜の街は静まり返り、人影はまばらだ。しかし、完全に無人というわけではない。薄暗い路地裏に入り込めば、非合法な取引に興じる悪党くらいはいくらでも転がっている。

予想通り、絶好の獲物がいた。それも、中々の美形だ。あの女騎士に比べれば落ちるが、十分に食指が動く。

俺は手袋を外し、音もなく襲いかかった。そこにいたのは4人。

まずは前方の2人の首を、爪で一瞬にして撥ね飛ばした。噴水のように血が舞う。後ろの2人は悲鳴を上げて逃げようとしたが、その背中から肉厚な腹へと腕を突き刺してやった。

指先についた血をペロリと舐める。

「お、意外と美味いな」

ピリッとした刺激的なコクがあって、これは絶対に白米に合う。しかし、手元に米がないのが実に惜しい。

最後の一人は、腰を抜かして涙を流しながら、俺にみっともない命乞いをしてきた。

「頼む、殺さないでくれ! 俺には、まだ妻と子供がいるんだ! あいつらを残して、先に逝くわけにはいかないんだ……!」

俺は冷酷だが、話の分からない鬼ではない。特に、従順な女や子供には優しい

「可哀想になぁ……。よし、お前の条件を飲んでやろう」

「えっ、い、いいのか……!?」

絶望から一転、救われたような表情を見せる男。本当に犬のようでお気楽な頭だ。

「ただし、調味料をよこせ。これだけ美味い肉だ、味付けをして食いたい」

「そ、そんなものでいいのですか!? 家にたくさんあります! 最高の塩も香辛料も、いくらでも差し上げます!」

「じゃあ、案内しろ」

俺は男を脅し、大人しくその自宅へと調味料を取りに行かせた。

家に到着し、怯える妻と子供から調味料を奪い取ると、男は安堵の表情でペコペコと頭を下げた。

「こ、これで……本当に助けてくれるのですね?」

「は? 何を言っている。俺がいつ、お前らを助けるなんて言った?」

「ひっ……!?」

「今からお前の目の前で、その愛しい家族を細切れにして殺す。その後で、お前もじっくり殺してやるよ」

男の顔から血の気が引き、絶望のあまり呼吸を忘れる。

俺は約束通り、男の目の前で妻と子供の首を斬り裂いた。

床一面に広がる鮮血。男は声にならない悲鳴を上げながら、我が子の死体を抱きしめようとする。

「……なんで……なんで、こんな惨いことをするんだぁぁぁっ!!」

「そんなの、食べるために決まってるじゃん。人間ってのはさ、恐怖と絶望に染まれば染まるほど、肉の繊維が締まって美味くなるんだよ。ただの『美味しく食べるための下ごしらえ』だよ、感謝しろよ」

男の目からは、血の涙が出るほどの絶望と後悔が溢れ出ていた。最高にいい表情だ。肉の旨味が引き締っていくのが分かる。

「じゃあな。ごちそうさま」

「この……くそやろ……う……が……!」

そのまま、男は息絶えた。

まぁ、負け犬の捨て台詞なんてどうでもいい。それよりも、もらった極上の塩を使って、さっそくこの家族を調理するとしよう。

【クズの人肉クッキング】

まずは、この新鮮な子供の頭蓋骨を叩き割り、中から極上の脳みそを取り出します。それを一口大のほどよい大きさに切り分け、仕上げに先ほどの塩をパラパラと振りかければ……完成! 贅沢一品料理『脳塩(のうしお)』!

「うん、我ながら天才的なシェフだな!」

豆腐のような食感の脳みそを口に運び、至高のディナータイムを楽しんでいた、その時だった。

「お前を、ここで殺す!!」

鼓膜を突き破るような怒号。

直後、視界が全方位から凄まじい衝撃に包まれ、俺の頭部は一瞬で木端微塵に吹き飛んだ。

何が起きたのかすら理解できないまま、俺の意識は急速に闇へと沈んでいった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。