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8/10

球遊び

トン…………カタン


トン


河川敷では老人たちがグラウンドゴルフに興じている。

以前はゲートボールが盛んであったが、ゴールが持ち運び式であるグラウンドゴルフの方が場所を選ばないということで、近頃はグラウンドゴルフユーザーが増えているようだ。


トン…………


……カチャン


ゴールに入ったようだ。

周囲からはパラパラと拍手があがる。


そのすぐそばに、河川敷の芝生が黒く焼け焦げた部分がある。

それは昨日、マネキンが燃えていると通報があった場所だ。


深夜、駆けつけた消防車は、既に火が消えかけているマネキンを発見した。

それがマネキンではなく人間であったことは、すぐに周りの住民にも伝わった。

すなわちグラウンドゴルフに興じている老人たちにも伝わっているはずだが、どこ吹く風といったところだろうか。


河川敷には二キロ程手前の頭首工から水が流れており、まもなく町外へと向かっていく。いわば町外れである。

マネキンに間違われた遺体は、ちょうどこの河川敷と頭首工の中間距離あたりの場所に住んでいた、少し変わり者と評判の女性だった。痴情のもつれか何かで、ベランダで叫んでいる姿だとか、そうした事をよく目撃されているようだった。


なにがどうあってそうしたのか知るべくもないが、それにしたってグラウンドゴルフの老人たちは興味を持たなすぎるのではないだろうか。

いくらなんでも、そのすぐそばでボール遊びに興じるというのは、倫理的にも問題ないかと心配になる。


しかし、である。


つい一昨年前に、他でも焼身自殺があった。

五百メートルほどしか離れていない。

その時は、灯油を被った人物が店内に入ってきて火をつけたそうだ。


その前は、ちょうどここから反対側の土手の向こうで死んでいた。

原因は不明だが、土手の中腹に突っ伏していたそうた。


上流の頭首工までいけば、他にもある。


つまりもう、慣れてきてしまっているのだろう。

この小さな田舎町でそんなに自殺者が出るのは普通ではないのだが、現実として起きていると、それはただの日常となるらしい。

そうやってあまり驚かないで過ごすようになって、またある日には近所の住民が亡くなっていく。


トン


ボールを叩く音がする。


ひょっとすると、慣れた者だけがあの年まで平穏に過ごせるんじゃないか。

この町の過疎化が進んでいるのは、耐えられなかった者たちが出て行ってしまうからじゃないか。

そしてそんな事にも慣れてしまったから、あんな場所でも遊べるんじゃないか。


途端にその老人たちが、人の心を持たないものに見えてくる。


トン


球を叩く音がする。

老人たちは皆、能面のように張り付いた笑顔で球遊びを続けている。

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