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ガラス戸
トン……
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、何かいま、音が……」
トン……
「ほら」
「ほらって?」
「聴こえない?」
「全然」
「おかしいな、いま何か物音したのに」
「どんな音?」
「トン、みたいな音。いや……コン、かな?」
「なにそれ。 音にこだわりのあるタイプ?」
「いや、トン、だな。 なんていうか……ああ、そこの家かな」
「この家?」
「うん、多分このガラス戸を叩いた音だと思う。指先でトンって」
「ここで?」
「そう、多分だけど」
トン……
「ほら、また鳴った」
「嘘だ、聴こえないよ」
「嘘じゃないって。今このガラス戸の向こうから……うん、多分このぐらいの高さから鳴ったって」
「そんな低い位置? ていうか無いって」
「いや、あるって。ていうか鳴ったって」
「だってそこ、空き家だよ? 前に住んでたそろばんの先生だかが亡くなったとかで、そのままのはずだもん」
「嘘」
「嘘じゃないって」
「でもホントに、通りがかりに膝ぐらいの位置で音が鳴ったんだけどなぁ」
「猫とかじゃないの」
「無人の家の中に?」
「じゃあ風かな」
「あー、風か」
「風だね」
「うん、風だな」
「…………」
「なあ」
「うん?」
「ホントは聴こえてたんじゃ」
「聴こえてないって!行くよ、もう」
「はいはい」
トン……




