80…何が出るかな
リリーの寝息が聞こえる。
部屋の戸棚には、仄かに光っでいるトロフィーが4つ、誇らしそうに並んで立っている。
◇
「今日行ってみるか?」
ユウはイヤリングに手を掛けて聖剣を解呪しようかとリリーに聞いてみたが、オウカ公爵がリリーを止めた。
「ダメです。とりあえず、今日はリリを連れて帰ります」
オウカ公爵も護衛のように立つのが癖で抜けないパクツも、リリーを連れて帰りたいようだ。
タイムは手を後で組み微動だにせず大人2人の様子を伺っている。
「お父様、私なら……」
「いいや、日を改めよう」
こうなると梃子でも動かないオウカ公爵であることを知っているので、リリーは従うしか無い。
「ユウ、また都合の合う日に」
ということで、リリーはトロフィーを持って帰宅したのだ。
◇
カチャ……
リリーの寝室を開けて、オウカ公爵夫妻が2人で入ってきた。
小声でオウカ公爵が何か言うと、妻の肩を抱いて、リリーの寝顔を見てからそっと部屋から出て行った。
学園の部屋に行く日を決めると、オウカ公爵が地下を立入禁止にして準備をした。
「それでは行こうか」
オウカ公爵とパクツ、タイムも一緒にリリーと馬車に乗って学園へ向かった。
タイムがいつもの癖でリリーと手を繋ごうとした時にオウカ公爵に魔法で捕縛された事以外は、至って平和だった。
「聖剣、これを置くだけで何かが起こるの?」
先程ユウと聖剣と合流して、今トロフィーを置いているところだ。
『私を起こしたみたいに、リリの魔力をありったけ注ぎなさい。出す感じより、練る感じかしら』
オウカ公爵は地下を立入禁止にしておいて良かったと心の底から思いながら、リリーの魔力を外に漏らさないように地下全体を防魔で包んだ。
それを確認したリリーは、思いっきり魔力を出し始めた。
ユウ以外は、リリーの全力を見るのが初めてだ。
「企画外だろ……」
パクツは冷や汗をかきながら、オウカ公爵も目を見開きながら、立っているのがやっとだ。
「夫婦喧嘩できないすね」
とかタイムが飄々と言っていることにも、オウカ公爵もパクツも気付かない。
ただ、ユウだけは睨んでいる。
「まだだ! これからだから、気を抜くな」
ユウは他の3人に大声で知らせた。
「はっ、すげぇな」
「僕なんか比にならないね」
こんな魔力量を知られたら、欲しがるのは国内だけではなくなるだろう……戦争になりかねない。
オウカ公爵もパクツも、見てはならないものを見てしまった気分で、リリーの魔力による圧を耐えている。
タイムは、まだまだ13才、リリーの魔力量に純粋に感動しながら目を輝かせていた。
ユウはまたいつリリーが吹き飛んでも良い様に後で構えているが、前よりも放出量が多そうで1人で受け止めきれないかもしれないと判断して「ここに居ろ」とタイムを横に呼んだ。
「あっ」
リリーが一文字言い終わったと同時に眩い光が走り、辺り一帯が真っ白の世界になった。
私、あなたを、知ってる……?
ドォン!!!!!!
爆音と共に爆風が起こり、リリーが後方へ飛ばされ、ユウとタイム2人掛かりで何とか受け止めて一緒に後ろへ倒れた。
「すまない、助かった」
「……っいえ、こちらこそ」
タイムは、このためにリリーの後に構えていたユウから視線を外せなかった。
自分だけでは抱えきれないと判断して、リリーを受け止めるために、決して印象が良くない恋敵のタイムをそれでも横に付けたユウを、感謝を述べる姿を、素直に格好良いと思ってしまった。
自分には無い物を持っている、今の自分ではとても敵わないと思い知らされたタイムは手を強く握った。
「上等、負けてられないすね」
そして、ユウがリリーを抱きかかえて魔力を流すのを、タイムは黙って手伝った。
「これは……?」
リリーの無事を確認して回復魔法を施した後、オウカ公爵はパクツと辺りを探っていると祭壇のような台の上に古い本が現れて横たわっているのを発見した。
その本をパラパラとめくってみたが、何も書かれていない。
『あらぁ、懐かしい。とりあえず、それを持って帰りなさい。リリをそれ相応に休ませないと危ないわよ?』
聖剣が言ったことを伝え、ユウはリリーを抱き上げて馬車へ向かった。
リリーが目覚めたのは3日後の朝だった。




