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79…ダンスパーティー②エキシビションダンス

「さっきタイムから聞いた」


 リリーが意を決して、タイムにキスをされてしまったことを伝えたのだが、すでにタイムがユウに伝えていたらしく、リリーはどうしたら良いのかわからなくなった。


 タイムが「宣戦布告す」と言ってきたのを思い出してユウは一瞬イラッとしたが……


 リリーが止まっているのに、ユウは気付いてリリーの頬にキスをした。


「リリから教えてくれて良かった」


 ユウは安心したようにリリーに伝え、疲れ切った顔で「タイム(あいつ)は危険過ぎるな」と付け加えた。



 突然、ユウは何かを思い出したらしくリリーに振り返った。


「もし、リリが優勝したら、エキシビションダンスを踊らせてくれないか?」


 ユウの提案に、リリーはホッとして嬉しそうに笑って答えた。


「ええ! 勿論よ! 優勝できるか分からないけれど、ドレスも持って行くわ」




 ……ああ、だから"ドレスも"だったのか。


 ユウはリリーとの会話を思い出して納得がいった。



 優勝は、勿論リリーとカヨのペアだったので、リリーはエキシビションダンスを踊る準備でドレスアップを急いでしている。




 リリーとユウが一緒に会場の中央へ出てきて、客席の視線は美しい2人に集中している。

 リリーの先程の格好も良かったが、やはり社交界の華にとってドレスがこの上ない装飾だ。

 ただ、今日のドレスの色もユウの髪の色に合わせているので、オウカ公爵はげんなりしながら睨みをきかせている。


「リリーは完璧すね!」


 タイムの心からの言葉に、オウカ公爵はフンッと鼻を鳴らして得意そうになった。



 エキシビションの時間がやってきた。


「リリー、2曲良いか? 進行には伝えてきたから。疲れてないか?」


「全然よ! 2曲も踊れるのね。嬉しい」


 リリーはユウが出した手を取った。


「おめでとう。これで四大大会制覇か。出来たのはリリーだけだな」


「ありがとう。皆のお陰だわ、本当に。ユウが一緒に居てくれたから頑張れたのよ」



 最初の曲が終わると、ユウは「ここで少し待っててくれ」と言い、リリーにお辞儀して戻って行ってしまった。


 どうしたのかしら? ユウがお色直し??


 リリーは1人ぼっちでユウの姿が遠くなって行くのを首を傾げて見ていると、あちらから向かって来る人物が見えた。



「あっ……え??」



 その人物は拍手の中、珍しく気不味そうに歩いている。人前では常に堂々と歩いてキラキラしているのに。


 皆が沸き立つ拍手をしている客席で、オウカ公爵もパクツもタイムも瞬きを忘れて、食い入るように視線を送っている。


 リリーの鼓動が激しくなってきた。





「……アキ、ラ」



 アキラはリリーの前で立ち止まって、手を取ってキスをした。



「リリ、おめでとう」


 リリーは信じられないという顔をしている。


「あ、ありがとう。私、アキラを真似してたの……上手く出来てたかしら?」


 リリーは自分が話しているのも、現実なのか分からなくなってきて変な感じだ。


「俺よりも全然カッコ良かったな。リリ……この前は、本当にごめん」


 アキラは目を伏せがちに苦しそうにリリーに謝ってきた。


「良いの、大丈夫! あ、タイムのお陰ね」


 アキラはふっと笑って続けた。


「ハンカチもありがとう。ふっ。ははっ、リリ、刺繍出来るようになったんだな」


 あ、久しぶりのアキラの笑い顔……


「笑ったわね?! 頑張ったのよ。とっても」


 リリーは深呼吸して、アキラの目を見た。リリーの知っているアキラの優しい目を。

 そしてリリーは右手をアキラの前に出した。


「アキラ、私とダンスを、踊ってもらえるかしら?」


 いつもと逆の、初めてかもしれないリリーからのお誘いに、アキラは目を丸くした後嬉しそうに笑った。


「ああ、是非とも!」


 1年振りにアキラとダンスできたことに、リリーは笑顔だけれど涙が止まらない。

 アキラが時折リリーの涙を愛おしそうに手で拭いている。



 「次はいつ?」そんなことを考えないためにも、アキラもリリーも刹那のダンスを無我夢中で楽しんだ。


 魔剣は聖剣のお陰で鎮まっている。というか、聖剣が煩すぎて魔剣がうんざりしている様子に近かった。

 ユウの近くにいれば良いのかという考えがアキラに過ったが、常にいる事は不可能だ。


 隙をついて魔剣付の自分がリリーに何かしてしまうかもしれないから危険だと、アキラは諦めた。



 ああ、楽しかった。


 終わってしまった。



 アキラはリリーを抱き上げて、くるくる回った。



 リリーは嬉しそうに笑っている。



 まだ涙は止まらないけれど。






 リリーは最後のトロフィーをゲットした!!!!




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