結界
「さすが。俺の運命の相手」
「また、それ?」
青年――シヴァは自分の荷物を背負う。戦うために一旦下ろしていた荷物だった。
「パースは運命の相手ってフレーズ好きだなー」
「ところで……」
シヴァはパースを凝視していた。
「その腕、接触不良起こしてない?」
パースはにやりと笑う。
「やっぱり、シヴァは運命の相手だ。俺の体調がわかるなんて」
パースは笑顔だが、その顔に冷や汗が浮かんでる。
「さっきの強盗とやり合ったのがまずかったみたいだ」
シヴァが肩を貸そうとするが、パースはそれを制した。
シヴァだって大きな荷物を持っているのだ。
パースの左手と左足は一部機械だった。
左手と左足が動きにくくなり進行性の病気のようでここ数年で悪化した。思い切って機械部品を入れる選択をしたのは三年ほど前。
「ルウの地の外れに偏屈な爺さんがいて、修理してくれるから、そこまで辛抱だ」
その場にいる行商たちはもう知っているが、パースはこのことは秘密にしていた。
行商たちはパースの体調を気遣いつつ歩き出した。
パースとシヴァも歩き出す。
「ルウの地ってまだ遠いの?」
と、シヴァ。
「もうすぐだ」
と、パースが答えるのだった。
* * *
しばらく歩くとルウの地が見えてきた。
「なあ、シヴァ? あの家が見えるか?」
パースの目にはしっかりと見える。
一軒家があって、その家のすぐそばに水路がある。
ルウの地は砂漠の中にあるオアシス地形であり、所々、泉がある。そこから水路を引き、ルウの地全体に水を行き渡らせているのだ。
今、見えているのは一件の家だけだが、もっと進めばそれなりの整備された街並みが見えてくる。
「あれがルウの地だ」
「家?」
シヴァは目を細めている。
「ずーっと砂しか見えないけど」
「やっぱり、ルウの地の結界ってのは実在するんだなー」
パースは感心している。
「結界?」
「ルウの民を守るため、最高位……あ、女神の化身ともされる第一身分のルウ族が結界を張ってくれてるんだって」




