05
※本作中の挿絵・画像は自動生成AIによるものです。
イメージや雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
なお、キャラクターの容姿や髪型、衣装などは
作中の描写と多少異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
360万DPも使って、地表の支配領域は半径386メートル。
改めて考えると、何とも微妙な結果だった。
俺は大きなソファーに寝転がり、ぼんやりと天井を見上げていた。
「……あぁ~、やる気が出ねぇ……」
DPは今も毎秒100ずつ増えている。
放っておくだけで貯まるのだから、無理に何かする必要もない。
とはいえ、何もしないというのも退屈だった。
そこで、ふと思い出したのが自分の固有魔法だ。
「……そういや、創造魔法があったな」
ネット小説なんかでは、創造魔法といえば大抵チート級の能力だ。
武器でも道具でも、下手をすれば何でも作れてしまうような、反則じみた魔法。
だが、俺の創造魔法が何をできるのかは、まだよく分かっていない。
暇つぶしも兼ねて、色々と試してみることにした。
まず思いついたのは回復薬だった。
しかし、いざ作ろうとすると、妙な知識が頭の中に浮かんでくる。
「……ん? 薬草が必要なのか?」
どうやら、魔力だけで何もないところから物を生み出す魔法ではないらしい。
回復薬を作るなら、最低限、薬草のような素材が必要になる。
しかも、作りたいものを思い浮かべると、それに必要な材料や加工の方法が、自然と理解できるのだ。
「……これ、どっちかっていうと錬金術じゃね?」
素材を使い、魔力によって別のものへ加工する。
そんな仕組みに近い気がした。
俺は、近くに転がっていた石を一つ拾ってみた。
すると、今度は石を素材にした様々な武具のイメージが浮かんできた。
剣、盾、槍……。
「……へぇ~。石でも武器が作れるのか……」
だったら、試してみよう。
俺は手にした石へ意識を集中させ、一本の剣を思い描いた。
長すぎず、短すぎず。片手でも扱える、すっきりとした形状のロングソード。
そのイメージに従って魔力を流すと、手の中の石が変形し始めた。
「おおっ……!」
石の表面が滑らかに整い、細長く伸びていく。
やがて、そこには一本の剣が完成していた。
石を削り出し、丁寧に研ぎ上げた剣だった。
しかし、まだ少し違う。
「……もっとこう、軽くて……硬くて……」
頭の中で完成形を思い描き直す。
分厚い石の塊ではなく、金属製のロングソードのように薄く、鋭い刀身。
石そのものを極限まで圧縮し、その密度を高めていくイメージだ。
すると、剣の形状がさらに変化した。
余分な厚みが消え、刀身が引き締まっていく。
同時に、灰色だった石の表面が次第に黒く染まっていった。
「……ん? 黒くなった?」
理由はよく分からない。
だが、完成した剣を手にしてみると、不思議なほどしっくりきた。
軽い。
それでいて、薄い刀身には石特有の脆そうな印象がない。
刃先も綺麗に整っており、見た目だけなら相当な切れ味がありそうだった。
「……ふ~む」
俺は出来上がった黒い剣を眺めた。
余計な装飾は一切ない。実用性を重視した、端正なロングソード。
「……うむ。完璧だ!」
まさに俺が思い描いたとおりの一本だった。
なるほど。
この魔法は、素材だけでなく、作る際のイメージも重要なのかもしれない。
大まかな形を思い浮かべるだけでも作れるが、細部まで具体的に想像すれば、その分だけ完成品も理想に近づく。
「……これ、結構面白いな」
それからというもの、俺は近くの石を拾っては、次々と剣を作っていった。
刀身の長さや厚み、柄の形状、重心の位置。
少しずつイメージを変えながら、創造魔法の感覚を確かめていく。
最初は単なる暇つぶしだったはずなのだが……。
「……あれ?」
気がつくと、ソファーの脇には十本以上の石の剣が並んでいた。
中でも、最初に完成させた漆黒のロングソードは、やはり出来がいい。
俺はその一本を改めて眺めた。
いつの間にか、創造魔法の実験に夢中になっていたらしい。
『……マスター』
コアから幼い声が響いた。
『剣が、いっぱいです』
そのあまりにも素直な感想に、俺は思わず笑ってしまった。
DPで素材そのものを購入することもできる。
それに気づいてからというもの、俺の創造魔法の実験は一気に本格化した。
「……鉄に薬草、魔石……骨や牙まであるのか」
コアの素材一覧には、実に様々なものが並んでいた。
とりあえず、気になったものを買っては創造魔法を試していく。
まずは薬草。
以前、回復薬を作ろうとしたときに浮かんできた知識を頼りに、薬草へ魔力を流してみた。
すると、葉や茎が魔力によって分解され、必要な成分が抽出されていく。
「……おお、できた!」
完成したのは回復薬だった。
どうやら創造魔法は、単純に形を変えるだけではなく、素材の加工や精製もできるらしい。
アイテム化して瓶に入ってるまではお約束だ。
ならばと、今度は解毒薬にも挑戦してみる。
薬草の種類や配合を変え、頭の中に浮かぶ知識を頼りに調整すると、こちらも無事に完成した。
「……これ、やっぱり錬金術じゃね?」
しかも、自分で材料を調合する必要がない。
完成形を明確にイメージすれば、創造魔法が加工を行ってくれるのだ。
これは便利すぎる。
続いて鉄を使った武具の製作。
剣、槍、盾。石剣を作ったときの経験が役に立ち、鉄の加工も思いのほか簡単だった。
骨や牙からは武器や装飾品を作ってみた。
骨の形を活かした短剣や、牙を加工した装飾品。
素材によって加工の感覚が異なるのも面白い。
そして、何より興味を引かれたのが魔石だった。
「……へぇ。魔石って、こういう使い方もできるのか」
魔石を手にすると、これまでとは違う知識が頭に浮かんできた。
魔石と金属を組み合わせれば魔道具が作れる。
武器へ魔石を組み込めば、魔法の性質を持つ魔剣にもできるらしい。
単なる武具とは違い、魔石の性質や魔力を通す構造までイメージする必要があったが、それも創造魔法なら加工できた。
「……やっば!おもろ!!」
さらに驚いたのは、その先だった。
――スキル球。
どうやら、創造魔法ではスキルを封じ込めた魔法の球体まで製作できるらしい。
「……マジかよ!」
ただし、これには高純度の魔石が必要だった。
普通の魔石では、スキルを保持するための器として不十分らしい。
スキルってよりは、能力球に近いのかも知れない。
知識やイメージを具現化したようなもの……
説明が難しいが…
剣術スキルと決まったスキルではなく、俺がイメージした剣術スキルになるみたいだ。
「……なるほどなぁ」
創造魔法。
単純に何でも無条件で生み出せる魔法ではないが……
素材さえあれば、イメージと知識によって実に多彩なものを作り出せる。
俺はすっかり夢中になっていた。
ちなみに、時計も作ってみた。
鉄で内部の部品を作り、骨で外装を整え、魔石を動力として組み込んだものだ。
正確な時刻は分からなかったが、コアが監視する地表の景色を見ながら、日の出や日没に合わせて調整していった。
これで少なくとも、時間の経過くらいは把握できる。
もっとも――。
「……あれ?」
気がつけば、ずいぶん時間が経っていた。
試作品の数々が並ぶコア部屋。
ソファーの周囲には、剣や槍、薬品、骨細工、魔道具などが増えていた。
そして、ふと確認したDPの記録。
「……三日?」
どうやら、あれから三日ほど経っているらしい。
素材を購入しては創造魔法を試し、気になることがあればまた別のものを作る。
そんなことを延々と繰り返していたわけだが……
自分でも、よく飽きなかったものだと思う。
『マスター。たくさん作りました』
確かに……
何もなかったコア部屋は、いつの間にか試作品でいっぱいになっていた。
そして何より、創造魔法について随分と多くのことが分かった。
物作りは好きだったが……
やり過ぎたな。
三日間、創造魔法の実験に夢中になっていたおかげで、DPはとんでもない額になっていた。
目の前の管理画面に並ぶ、八桁の数字。
これだけあれば、さすがに相当な範囲を支配できるはず。
「よし! 三日分のDPを全投入! 地表の支配領域を拡張してくれ!!」
『はい、マスター。広げます』
コアの返答とともに、地表の立体地図が表示された。
すでに支配している半径約386メートルの領域。
その青い境界線が、周囲へ向かって一気に広がり始める。
旧採石場の岩壁を越え、南側の草地を覆い、北東の森のさらに奥へ。
これまで地図の端で途切れていた場所が、次々と新しい支配領域に組み込まれていった。
やがて、境界線の拡張が止まった。
『……できました、マスター』
管理画面に、新しい数値が表示された。
地表支配領域・拡張完了
新しい支配半径
987.56m
総支配面積
3,063,890㎡
項目結果
拡張前の面積468,150㎡
今回の追加面積 +2,595,740㎡
今回投入DP25,957,400DP
拡張後の総面積約3.06km²
自然DP収入(旧)12,467/日
自然DP収入(新)81,590/日
半径、およそ一キロメートル。
ようやく、まとまった広さになってきた。
コアが監視できる地表の範囲も大幅に拡大している。
まだ新しい区域の詳細は調べていないが、少なくとも以前よりずっと広い森と採石場周辺を確認できるようになった。
『マスター。自然魔力も、たくさん集まります』
新たな自然DP収入は、一日81,590DP。
もちろん、俺から供給される毎秒100DPとは別だ。
地表の支配領域を広げるだけでも、これだけ収入が伸びる。
まだコアは原初Lv1のままだが、迷宮を育てるための土台は着実に大きくなっていた。
そして、俺は考えていた。
コアに創造魔法を使えばどうなるのかと。
今までは物質を素材にしていたが、目の前にあるのは魔力で構成されたダンジョンの中枢。
こいつ自体に創造魔法を使ったら、何が起こるのだろうかと。
「……やってみるか」
俺は定位置に浮かぶコアへ手を伸ばし、その表面に触れた。
そして、創造魔法を発動する。
――その瞬間。
「……あ」
頭の中に、とんでもない量の情報が流れ込んできた。
DP管理、魔力変換、魔物召喚、施設建設、素材生産、階層管理……。
普段の管理画面とは明らかに違う。
コアを構成する内部システムそのものが、創造魔法の加工対象として認識されていた。
視界には次々と項目が現れ、それぞれに変更可能な構造や、魔力を注ぎ込むことで拡張できる部分が示されている。
「……これは……」
DPの保有量。
召喚可能な魔物の一覧。
施設やアイテムの開放条件。
コアの各種処理能力。
通常ならDPやコアの成長が必要なものまで、創造魔法による干渉の対象になっていた。
「……ダメなやつだ、これ……」
俺は一旦、コアから手を放した。
内部システムへの干渉が途切れ、膨大な情報が視界から消えた。
しばらく、その場で考え込んだ。
いや、待て。
ちょっと待て……
俺の魔力は無限だ。
そして今、コアの内部システムを創造魔法で直接変更できることが分かった。
ということは……。
「……DP、無限にできるじゃん……」
毎秒100DPなんて、ちまちま変換する必要すらない。
コアの機能制限だって、魔力で解除できるのではないか。
魔物の召喚リストも、建設機能も、素材生産も……。
全部、開放できるじゃないか……
「いや……完全チート以上じゃん!!!」
思わず叫んでしまった。
何だよ、それ!
だったら、今まで俺がやってきたことは何だったんだ!?
何時間も魔力を流し続けて、ようやく百万DPを貯めた。
数百万DPを投入して地表を広げ、思ったほど広がらなくて落ち込んだ。
さらに三日間、創造魔法であれこれ作っていたというのに……。
その創造魔法を、最初からコアに使えばよかったのだ。
「……なんで……」
俺は両手で頭を抱えた。
「なんでもっと早く気づかなかったんだよぉ……!」
無限魔力。
創造魔法。
ダンジョンコア。
最初から全部揃っていた。
それなのに、俺はわざわざ遠回りして、DPを貯めることばかり考えていた。
「……あぁぁ……」
がっくりと肩を落とす。
とんでもない可能性を発見した喜びよりも、今までの苦労が何だったのかという脱力感の方が大きかった。
『……マスター?』
幼い声が響いた。
『何か、失敗しましたか?』
「…………」
失敗。
確かに、ある意味では大失敗だった。
俺は頭を抱えたまま、深々と溜息をついた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。
物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、
あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。
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