02
※本作中の挿絵・画像は自動生成AIによるものです。
イメージや雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
なお、キャラクターの容姿や髪型、衣装などは
作中の描写と多少異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
「……なあ、コア。この世界について教えてくれないか?」
目の前にある水晶へ声をかけた。
「お前が知ってる範囲でいい。そもそも、ここはどんな世界なんだ?」
『はい、マスター。確認します』
青白い水晶から、相変わらず幼さの残る声が響いた。
『この世界には、魔力があります。空気や大地に流れています。魔法も使えます』
どうやら、魔法が存在する世界なのは間違いないらしい。
『魔力を使うと、魔物を生み出せます。迷宮を大きくすることもできます』
そこまでは、頭に流れ込んできた知識と一致していた。
『それから……外にも、生き物がいるはずです』
『でも、どんな生き物がいるのかは、まだ分かりません』
コアの説明によると、迷宮内部と地表の支配領域は監視できるらしい。
ただし、その外側までは見通せない。
『今、見えるのは……洞窟の入口と、周りの岩、それから木です。外に通じる道はあります』
そこで説明が途切れた。
どうやら、現在の監視範囲で得られる情報は、あまり多くないようだ。
『人間の町や国があるのか、どんな種族が暮らしているのか……まだ確認できていません』
なるほど。
つまり、コアにも世界全体の情報が与えられているわけではないらしい。
『勇者や魔王も……いるかもしれません。でも、今の私には分かりません』
コアは正確な情報を伝えようとしているのだろう。
分からないことは分からないと、実に率直だった。
『私が確かに知っているのは、この迷宮のことです』
『ここは生まれたばかりの迷宮です。外から魔力を集めて、少しずつ成長できます。魔物を置いたり、部屋を作ったり、階層を増やしたりできます』
迷宮の管理については、きちんと理解しているらしい。
『でも……』
『世界の名前も、ここがどこなのかも……まだ知りません』
それは、思った以上に心許ない回答だった。
俺を異世界へ呼び出した当の本人が、この世界についてほとんど知らないとは。
しかし、考えてみれば、このコアはまだ生まれたばかりなのだ。
迷宮を管理する機能は備えているものの、外界を探索した経験も、誰かと交流した記録もない。
しかも、知能は赤子に近いという。
そんな存在に、世界の歴史や国家情勢まで説明しろというのも無理な話なのだろう。
『……マスター』
『外のことを知りたいなら、調べることができます』
『誰かが迷宮に来れば、その人を見ることもできます。話を聞くこともできます』
『そうすれば……私も、もっと知ることができます』
それが、今のコアにできる精いっぱいの説明だった。
「なんともまあ……どうしたものか……」
思わず溜息が漏れた。
ダンジョンマスターとして異世界に召喚されたのはいい。
いや、よくはないのだが、今さらどうこう言っても仕方がない。
問題は、これからどうするかだ。
目的らしい目的もなければ、周囲の環境すら分からない。
頼みの綱であるダンジョンコアも、生まれたばかりで外界の情報をほとんど持っていないという。
「……誰かが来たら聞けばいい、か……」
確かに、それが一番手っ取り早いのだろう。
だが、相手が友好的とは限らない。
この世界にも冒険者がいるのなら、ダンジョンは攻略するもの、ダンジョンマスターは討伐するもの、という認識があってもおかしくない。
下手をすれば、話を聞くどころか、問答無用で襲いかかられる可能性だってある。
「……ダンジョンマスターだしなぁ……」
俺は何気なく自分の身体へ視線を落とした。
「……ん?」
そこで、妙な違和感を覚えた。
何かがおかしい。
いや、明らかにおかしい。
「……腹が……出てない?」
思わず腹を触ってみる。
かつて、そこには立派な中年腹が存在していたはずだった。
ところが、どうだ。
見事なまでに引き締まった腹部。手で触れてみても、以前のような贅肉の感触がない。
「……おいおい……」
改めて自分の身体を確認する。
どう見ても、夜勤明けの疲れたオッサンの身体ではなかった。
ならば、顔はどうなっている?
恐る恐る頬に触れてみる。
もちもち。
「…………」
すべすべ。
「……マジか?」
指先に伝わる肌の感触が、記憶にあるものとまるで違う。
頬には弾力があり、肌の張りも明らかに若い。
髪に指を通せば、妙にさらさらとしている。
「……若返ってる?」
そう呟いて、俺は中央に鎮座するダンジョンコアへ目を向けた。
直径四十センチほどの多面体水晶。
青白い光を宿したその表面は、磨き上げられた宝石のように滑らかだった。
鏡の代わりになるかもしれない。
俺は水晶の一面に自分の顔を映してみた。
青白い光と多面体の反射のせいで、少々見づらいが……
しかし、そこに映った人物の顔を見た瞬間、俺は言葉を失った。
「…………は?」
黒髪の青年だった。
整った目鼻立ちに、すっきりとした輪郭。
若々しい肌に、どこか人を寄せつけない鋭さを帯びた美貌。
いわゆるイケメンというやつだ。
それも、ただのイケメンではない。
どこぞの王国の王子と言われても納得できそうな、妙に気品のある顔立ち。
だが、その眼差しには、優しげな王子というよりも、冷酷な悪役を思わせる雰囲気があった。
王子?
いや……悪魔?
なんというか、イケメン悪魔と悪役王子を足して二で割ったような顔だ。
「……誰だよこれ!!!」
思わず大声が出た。
『……マスター、です』
コアから、律儀な返答が返ってきた。
「…………」
いや、そうなんだが。
確かに、俺なのだ。
水晶の前で顔を動かせば、映っている青年も同じように動く。
頬を触れば、青年も頬を触る。
間違いなく、俺自身の姿だった。
しかし――。
「……いやいやいや……」
いくらなんでも、変わりすぎだろう。
若返ったというだけでは説明がつかない。
日本にいた頃の俺の面影が、どこにもないのだ。
年齢だけでなく、顔立ちそのものが完全に別人になっている。
俺はもう一度、水晶に映る自分の顔をまじまじと見つめた。
どう見ても、ファンタジー世界に登場する美形の悪役貴族。
それが、今の俺だった。
青白い水晶の内側から、コアの声が静かに響いた。
『……マスター?』
『何か、おかしいですか?』
どうやら、俺が何に驚いているのか分からないらしい。
その無邪気な問いかけに、水晶に映る見知らぬイケメンと、俺の視線が重なった。
しばらくの間、俺は水晶に映る自分の姿に見惚れていた。
……いや、見惚れていたというより、戸惑っていたのかもしれない。
何しろ、鏡に映るのは日本にいた頃の面影すらない、黒髪の美青年なのだ。
若返るどころか、別人になってしまった。
「はぁ~~……」
自分の知る常識からあまりにもかけ離れた現実に、大きな溜息が漏れた。
もっとも、今さら考え込んだところで答えが出るわけでもないのだが……
俺はなんとなく、目の前に浮かぶダンジョンコアへ手を伸ばした。
青白く輝く多面体の結晶。その周囲を銀色の環が幾重にも囲んでいる。
指先が結晶の表面に触れた瞬間、不意に視界へ半透明の文字列が浮かび上がった。
「……ん?」
何かの情報画面だろうか。
そこには、俺自身の情報らしきものが表示されていた。
『マスターの情報です』
どうやら、俺自身の能力を確認できるらしい。
俺は表示された情報に目を通した。
ステータス
基本情報
名前未設定
性別男
年齢・種族未確定
役職ダンジョンマスター
基本能力
筋力:100
耐久:100
敏捷:100
器用:100
知力:100
精神:100
魔力:無限
幸運:100
固有能力:創造魔法
表示された情報を眺めていると、ひときわ目を引く項目があった。
――創造魔法。
聞き覚えのある名前ではある。
しかし、具体的に何を可能にするのかまでは、表示されていない。
『……マスター』
コアが静かに告げた。
『創造魔法があります。でも、詳しいことは……まだ分かりません』
原初コアは管理機能を通じて数値を表示できても、その意味をすべて理解しているわけではないらしい。
俺の目の前には、先ほど確認した自分の能力情報が浮かんでいた。
筋力、耐久、敏捷、知力……どれも100。
そして、魔力の欄には、とんでもない文字が表示されている。
魔力:無限
どうやら、俺自身の魔力には上限がないらしい。
もっとも、無限の魔力があったところで、何ができるのか分からなければ宝の持ち腐れなのだが…
「……そういえば、コアの情報は?」
俺は、手を触れている水晶に問いかけた。
「お前自身の能力だよ。何ができるんだ?」
『はい、マスター。私の情報を表示します』
目の前の半透明の画面が切り替わった。
どうやら、ダンジョンの管理機能そのものは、コアの幼い知能とは別に動作しているらしい。
幾つもの項目が整然と並び、その下に迷宮の簡易構造図が現れた。
原初コア Lv1:正常稼働
保有DP:1,500
自然DP収入:100 / 日
知能レベル:1
演算指標:100
使用区画:5 / 12
階層:1 / 1
魔力処理機能
項目現在値
自然魔力吸収250 ME/日
DP変換効率40%
魔力処理上限7,200 ME/日
DP費用軽減0%
複雑処理並列枠2
コア状態健全
結界状態安定
使用可能な管理機能
迷宮構築
部屋・通路の新設、空間拡張、階層管理。現在は第1階層内で構築可能。
魔物召喚
スライム、ゴブリン、ゴーレムなどをDPで召喚。
上位種は追加の費用・条件が必要。
防衛・罠
拘束陣、魔力衝撃床、鈍足陣などの設置。魔力弾による防衛も可能。
領域監視
迷宮内部と、実際に支配下に置いた地表領域を監視。
支配領域外は直接監視不可。
資源・生産管理
鉱石・食料・布・薬品等の生産施設、鍛冶・裁縫・錬金などの加工設備を管理。
研究・解析
魔法、設備、魔物、未知の現象を調査。
研究成果の実装には条件・費用が必要。
領域内の対象を解析・鑑定
DP・運営管理
自然魔力吸収、DP収支、建設工程、召喚、施設稼働、所持資材を管理。
成長・進化
コアLv上昇で容量・性能・知性が成長。
進化段階に応じて新機能が開放。
現在の迷宮構造
外界
入口洞窟
1区画分の部屋
通路
2区画分の部屋
コア部屋
2区画分の部屋
魔物・眷属
0体
罠・生産施設
未設置
迷宮の建築だけでなく、魔物の召喚、罠の設置、武器や道具の製作、研究までできるらしい。
しかも、コアには成長や進化という仕組みまで存在する。
「…………」
『マスター。今は、できることが少ないです』
コアが説明を補足する。
『でも、大きくなれば、もっとできます』
なるほど。
現在のコアは、生まれたばかりの原初段階というわけか……
画面の隅には、現在の迷宮の所持DPが表示されていた。
1,500DP。
俺自身の魔力は無限でも、ダンジョンの管理に使用するDPは別物らしい。
『作るものを決めたら、教えてください。必要なDPを確認します』
コアの言葉とともに、管理画面は開かれたままになった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。
物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、
あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。
感想・考察・ツッコミなど、
どんな形でもコメントを貰えると本当に励みになります。
いいね!・コメント・ブックマークの登録も、
やる気の活力になりますので、気軽に押してもらえると嬉しいです。
また、
X(旧Twitter)では
AIイラストの投稿や、SUNOを使った音楽制作も行っています。
世界観が好きな方、音楽が好きな方は、
ぜひ覗いてみてください。
Xを中心に活動していますので、
感想・コメント・ネタバレ考察なども、
Xの方に書き込んでもらえたら嬉しいです。
絡みに来てくれるだけでも大歓迎です。
よろしければフォローや拡散もお願いします。
X(旧Twitter):
https://x.com/Dx8cHRpuIBKk7SW
それでは、次回もお付き合いいただければ幸いです。




