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私のために争わないで?

※ゆるふわな気持ちでお読みください。

「今度は何を作っているんだ?」

 開発室でお気に入りの特注あぐら椅子に座って一人作業をしていると、後ろから腕が回ってきて、頭上から声が降ってきた。

 始めの頃は耳元近くでイケボを発される事に慌てたもんだけど、何度も繰り返されるうちにすっかり慣れちまったよ。

「作ってるっていうか、改良だよ。コンロをもっと小さくしたいんだよねー。卓上サイズに出来れば、鍋とかチーズフォンデュが出来るしね!」

 上を見上げて、イケボの持ち主に返事をする。

  見上げた先にはそのイケボに相応しい色黒イケメン!

 切れ長の目はきれいな瑠璃色で、艶やかな黒髪からは螺旋模様の角が一対伸びている。

 ルドルフ・ディ・ガーランゲリー。

 私が住んでいるエルドワース王国より北にある、魔族の国、ガーランゲリー魔国の第四王子サマだ。

 あんまり表情が動かないけど、それがまた美しさを醸し出している。

 男らしさと美しさを同居させるとはなかなかやりおる……!

「鍋……? フォンデュ……?」

「鍋っていうのは、具材を煮込みながら食べる料理の総称で、チーズフォンデュっていうのは、溶かしたチーズに具材をくぐらせて食べる料理だよ。皆でわいわいしながら食べるのが楽しいんだよね」

 私の説明をふむふむしながら聞いてるイケメン、目の保養だわー。

「そうなのか。では、それが出来上がったら共に……」

「こらぁー! またカレンにくっついてぇ! カレンから離れろ!」

 ルディが話してる途中で、違うイケメンが割り込んできた。

 あ、ルディってのはルドルフの愛称ね。

 割り込んできたイケメンはこちらに駆け寄ると、ルディを私から引き剥がした。

 椅子に座ってた私は踏ん張りが効かないので、後ろに転びそうになってちょっとヒヤッとした。

 割り込みイケメンが私の肩を掴んでたから、大丈夫だったんだけど。

 割り込んできたのは、レオンハルト・フォン・エルドワースっていうふんわりほんわか系色白金髪翠眼イケメン。

 名前から分かるように、この国の王子サマである!

 三番目のね。

 子供の頃から王城によく行ってたから、王子たちとももちろん顔馴染みなのである。

「全く、油断も隙もない! 十日前に追い返したばっかりなのに、こんな頻繁に我が国に来なくていいからぁ!」

「公的に訪問しているわけではない。気にするな。俺はカレンに会いに来ているだけだ」

「それが駄目ぇ!」

 レオンが――レオンハルトの愛称ね――私とルディの間に両手を広げて立つ。

 ルディが何かと私にくっつくのが気に入らないらしく、いつも引き剥がして間に立ち塞がってるんだよね。

 ……ていうか、王子が気軽に来すぎじゃね?

 二人とも先触れもなくやって来るし、うちの使用人たちも慣れすぎてここまで素通りじゃん。

 普通は応接室とかに通して、使用人が呼びに来るもんじゃないの?

 って、毎回考えて面倒臭くなって考えるの放棄してるんだけど。

 実は私はルディから婚約を打診されている。

 魔国の北部はかなり寒くて雪深い地域が多いそうで、私が開発した冷蔵庫とホットカーペットが大ヒットしたんだよね。

 ホットカーペットはともかく、冷蔵庫は何でって思うでしょ?

 わざわざ冷やす必要ないじゃんって思うかもだけど、そうじゃないんだよね。

 庫内を一定の温度に保つって仕様だから、外に出しておくと凍ってダメになっちゃう食べ物も、冷蔵庫に入れておけば凍らずに済むってことなんだよ!

 これは日本時代に聞いたことあったから、すごく納得した。

 ホットカーペットも動力は魔石だし、ストーブは一酸化炭素中毒とかあるから、冷蔵庫と合わせて人命救助にかなり貢献したとかなんとかで、魔国から使節団が来てすごい感謝された。

 その時に初めて会って、婚約を打診されたんだよね。

 まあ完全に政略かなって思ってる。

 両親は私の好きにしたらいいよーって言ってくれてるし、私も当時は八歳で、今もまだ結婚とか考えられないしで、お断り寄りで保留にしてもらってるんだよね。

 他に婚約したいとこ出来たら、そっちに行ってもらっていいよーって感じで。

 だけど、それからちょいちょいルディが来るようになった。

 スキンシップは多いけど、いつも飄々としてるから、なんか珍しい動物みたいに思ってるんじゃないかな。

 んで、レオンは昔からよく会ってたし、歳が一番近いってのもあって、王子たちの中では一番仲が良い方だと思ってる。

 だからレオンが我が家に邪魔しに来てるんだと思う。

 まあ、国としたらそりゃあ、金の玉子を産む私は外に逃がしたくないよね。

 うちの国でも冷蔵庫とか大ヒットだしね。

 うちの国は魔国とは逆で、南の方がかなり暖かい。

 というか、夏、暑い。

 だから、夏場に冷たいものが食べられたり、傷めずに輸送出来るっていうのはかなりの経済効果。

 冷風扇で熱中症とかも改善されたし、国民栄誉賞的な感じなんだよね。

 あ、もちろん水分と塩分取れとも言ってるよ。

 もしもの時の経口補水液のレシピも教えてある。

 単位が同じ感じなのすごく助かる。

 もしかしてすごーく昔に同じ地球から来て、単位を伝えてくれた人とかいたのかな?

 ありがとう、日本と同じ単位を作ってくれた人。

 まあそれで二人が頻繁に来るもんだから、使用人たちも完全スルーになってしまったんだよね。

 一度、問題提起した方がいいのかなあ。

 しても無駄な気もするけど。

 あ! ていうか、おやつ時じゃん!

 私のかわいい猫たちとグリフォンにおやつあげに行こ!

「私、猫たちとグリフォンにおやつあげに行ってくるねー」

 ぎゃーぎゃー騒いでる二人に――いや、騒いでるのはレオンだけか?――声だけかけて、私は小走りで部屋を出たのだった。




ルディ「レオンはいつもすぐにやってくるな」

レオン「街とディール家の門に魔道具を設置してあるんだよ。ルディが来ると通知が来る」

カレン「人ん家に魔道具仕掛けんでもろて」

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