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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
帝国編

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第九十四話 分解錬成と黒雷の核



──天才錬金術師は常識を知らない


雷鳴の森。


黒雲の裂け目から覗く“目”が、こちらを見ていた。


ギギギギギ……


空そのものが軋むような音。


その視線の先には、蒼雷獣ギガルド。


そしてその胸元に手を伸ばすアルマ。


「錬成……開始」


アルマの声は小さい。


だが確かに届いた。


その瞬間。


地面に描かれた魔法陣が強く光る。


通常の錬成とは違う。


素材を“作る”のではない。


“分ける”。


それが今回の錬金術だった。


ルナが息を呑む。


「これ……何してるの……?」


シエルも驚いている。


「分解……?」


エリシアは目を見開いたまま動けない。


「こんな術式……見たことない……」


フィーネは空へ炎を放ちながら叫ぶ。


「アルマ!無茶をするな!」


しかし。


アルマは振り返らない。


「大丈夫」


「やらないと」


その言葉は不思議と迷いがなかった。


ミルが小さな声で呟く。


「……アルマ」


「……怖くない?」


アルマは少し笑う。


「怖いよ」


「でも、助けたいほうが大きい」


その瞬間。


ギガルドが大きく暴れた。


グォォォォォ!!


黒雷が爆発的に噴き出す。


空間が歪む。


木々が一瞬で消し飛ぶ。


ルナが結界を強化する。


「これ以上は持たない!」


シエルが叫ぶ。


「早く!」


エリシアはギガルドの動きを観察していた。


「胸の核が……反応してる」


「アルマが触れた場所だ!」


フィーネが歯を食いしばる。


「呪いが抵抗しておる!」


空の“目”がさらに大きくなる。


ギギギギギ……


黒い視線がギガルドへ集中する。


その瞬間。


アルマの錬成が“核”に触れた。


ズンッ。


空気が変わる。


全員が一瞬息を止めた。


世界から音が消える。


ギガルドの体内にある黒い結晶。


それはただの呪いではない。


“接続器”だった。


空の“目”と繋がるための。


アルマはそれを理解していなかった。


だが。


感じていた。


「これ……痛い」


ポツリと呟く。


そして。


「外してあげる」


魔力が一気に流れ込む。


分解錬成。


素材を分けるのではない。


“状態”を分ける。


呪いと生命。


苦痛と本体。


それを強制的に切り離す。


ルナが驚く。


「そんなこと……できるの……?」


フィーネが低く呟く。


「理論上は不可能じゃ」


「だがアルマはやる」


その時だった。


黒い核が反応する。


ギギギギギ!!


呪いが抵抗するように暴走する。


ギガルドの身体が崩れかける。


エリシアが叫ぶ。


「壊れる!」


シエルも焦る。


「このままだとギガルドが!」


アルマは目を閉じた。


そして。


「分けるんじゃない」


「戻す」


その瞬間。


錬成の構造が変わる。


分解ではなく再構築。


呪いを“外へ出す”のではなく。


本来の形へ戻す。


フィーネが驚愕する。


「何を……!」


「それは制御ではない!書き換えじゃ!」


アルマは静かに答える。


「うん」


「でも、できる気がする」


ミルが小さく呟く。


「……アルマなら」


ルナも頷く。


「うん……信じる」


シエルも剣を握り直す。


「守る!」


エリシアは息を吐いた。


「本当に……無茶だな」


だが。


その無茶が、今は希望だった。


その時。


空の“目”が動いた。


ギギギギギ!!


視線がアルマへ向く。


次の瞬間。


黒雷が落ちる。


ドォォォォォン!!


フィーネが炎で迎撃する。


「させるか!」


炎と黒雷が激突。


大地が割れる。


ルナが結界を張る。


「アルマお姉ちゃん!」


シエルが叫ぶ。


「急いで!」


アルマは胸元の核に触れ続けていた。


黒い結晶が脈動する。


まるで拒絶しているように。


その時。


アルマはふと気付く。


「これ……」


「寂しいんだ」


全員が一瞬止まる。


エリシアが聞き返す。


「寂しい?」


アルマは頷く。


「ずっと一人で繋がってる」


「だから壊れちゃってる」


フィーネが目を細める。


「感情ではない……構造じゃ」


だがアルマは違う視点だった。


「ううん」


「たぶん、どっちも」


その言葉と同時に。


アルマの錬成が変わる。


核の中へ。


直接“接続”する。


ズンッ!!


一瞬、全員が目を見開いた。


ルナが叫ぶ。


「アルマお姉ちゃん!?」


シエルも青ざめる。


「直接入った!?」


ミルが震える。


「……アルマ!」


フィーネが叫ぶ。


「戻れ!」


しかし。


アルマの意識は核の中にあった。


そこには。


黒い空間。


雷の海。


そして。


一つの“存在”。


空の目の正体。


それは魔物でも神でもない。


“観測装置”。


ただ世界を見続けるだけの歪んだ構造体だった。


アルマはそこに立っていた。


そして。


「見てるだけなの?」


そう問いかけた。


反応はない。


だが。


微かに揺れる。


アルマは続ける。


「ギガルドさん、痛いよ」


「やめてあげて」


沈黙。


長い沈黙。


そして。


初めて。


“目”が揺れた。


その瞬間。


外の世界で。


黒雷が止まり始めた。


フィーネが驚く。


「止まっておる……?」


ルナも息を呑む。


「本当に……?」


シエルが叫ぶ。


「アルマお姉ちゃん!」


エリシアも見上げる。


「何が起きてる……?」


ミルは小さく呟いた。


「……アルマ」


その時。


ギガルドの胸元の核が崩れ始める。


黒い結晶が砕けていく。


そして。


中から。


淡い蒼い光がこぼれた。


アルマはその光を見ていた。


「戻ってきて」


優しく言う。


その瞬間。


世界が揺れた。


黒雷が完全に止まる。


空の“目”がゆっくり閉じ始める。


そして。


ギガルドが大きく息を吐いた。


グォォォォ……


それはもう暴走の咆哮ではなかった。


静かな。


疲れ切った呼吸だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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