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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
帝国編

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第九十二話 暴走の黒雷



──天才錬金術師は常識を知らない


雷鳴の森。


空を埋め尽くす黒雲。


轟く雷鳴。


そして。


蒼雷獣ギガルドの身体から、異変が起きていた。


ドクン。


ドクン。


黒い結晶が脈打つ。


胸元に埋まっていた小さな呪いは、まるで生きているかのように魔力を放出していた。


ゴキゴキゴキゴキ……


ギガルドの背中から、新たな角が生えていく。


黒い結晶でできた禍々しい角。


一本。


二本。


三本。


そしてさらに増えていく。


「グォォォォォォォォォ!!」


苦痛の咆哮。


森全体が震える。


ルナが顔を青くする。


「苦しそう……」


シエルも唇を噛む。


「こんなの……」


エリシアは思わず後退した。


「何なの……これ」


フィーネの表情も険しかった。


「まずいの」


「普通の呪いではない」


「誰かが意図的に仕込んだものじゃ」


アルマはじっとギガルドを見ていた。


そして。


「怒ってるんじゃない」


「苦しいんだ」


その言葉に。


ミルも頷く。


少女の姿のまま、アルマの隣で小さく拳を握った。


「……うん」


「……泣いてる」


エリシアが驚く。


「泣いてる?」


アルマは頷いた。


「うん」


「助けてって言ってる」


フィーネは苦笑した。


「お主は本当に変わっておる」


普通の者には魔物の咆哮にしか聞こえない。


しかしアルマは違う。


呪われた生き物たちを何度も救ってきた。


だからこそ。


苦しみがわかる。


その時。


「グォォォォォ!!」


ギガルドの全身から黒い雷が噴き出した。


ドバァァァ!!


黒雷が周囲へ広がる。


「危ない!」


エリシアが叫ぶ。


ルナは光の結界を展開。


シエルはアルマたちの前に出る。


フィーネの炎が広がる。


だが。


黒雷は止まらない。


ドドドドド!!


木々が消し飛ぶ。


岩が砕ける。


地面が焼ける。


災害。


まさにその一言だった。


「くっ!」


エリシアが剣で防ぐ。


しかし。


バチィッ!!


「きゃっ!?」


雷が腕を掠めた。


その瞬間。


アルマが慌てて駆け寄る。


「エリシアちゃん!」


「大丈夫!?」


エリシアは驚いた。


自分より先に心配する。


こんな状況なのに。


「私は平気……」


アルマは安心したように笑った。


「よかった!」


フィーネが呆れる。


「敵の前でよそ見するでない!」


すると。


ミルがぷるぷる震え始めた。


「……アルマ」


「……ミル」


「……思い出した」


アルマが首を傾げる。


「ん?」


ミルは黒雷を見つめる。


「……あれ」


「……嫌なやつ」


「……前もいた」


フィーネの目が細くなる。


「何?」


ミルは少し震えていた。


「……森」


「……暗いところ」


「……みんな苦しんでた」


「……黒いの」


「……いっぱい」


アルマは優しく頭を撫でる。


「大丈夫だよ」


「一緒にいるから」


ミルは少し安心した。


「……ん」


その時だった。


ギガルドの身体から、黒い塊が飛び出した。


ドロドロとした影。


まるで泥のような魔力。


それが地面に落ちる。


すると。


グチャグチャと蠢き始めた。


ルナが震える。


「な、何あれ……」


シエルが剣を構える。


「魔物?」


フィーネの炎が揺れる。


「違う」


「呪いそのものじゃ!」


次の瞬間。


影は形を変える。


狼。


蛇。


鳥。


異形の怪物。


黒い魔物が十体以上。


「ギィィィィ!!」


「シャァァァ!!」


「グォォォ!!」


ルナが悲鳴を上げる。


「増えた!?」


フィーネが叫ぶ。


「任せよ!」


ブワァァァ!!


黄金の炎。


数体の呪いを焼き尽くす。


シエルも剣を振るう。


「はぁっ!」


一刀両断。


ルナの光魔法。


「ライトアロー!」


光の矢が怪物を貫く。


エリシアも剣を抜く。


「邪魔!」


一瞬で三体を斬り裂く。


その強さにシエルが驚く。


「すごい……」


フィーネも感心した。


「やはり只者ではないな」


エリシアは少し焦った。


「しまった……」


だが。


アルマは気にしていない。


「エリシアちゃん強い!」


それだけだった。


そして。


ミル。


「……む」


ぷるぷる。


身体が変形する。


ぐにゃり。


そして。


「……わん」


狼になった。


ルナが目を丸くする。


「狼!?」


シエルが笑顔になる。


「かわいい!」


ミル狼は一生懸命走る。


そして。


ぱく。


呪いの塊を食べた。


全員。


「「「え?」」」


もぐもぐ。


「……まずい」


ペッ。


吐き出した。


アルマが慌てる。


「ミルちゃん!?」


ミルは元の姿に戻る。


「……変な味」


フィーネが頭を抱える。


「食うな!」


エリシアは吹き出しそうになる。


戦闘中なのに。


何故か笑ってしまった。


こんな状況なのに。


不思議と恐怖が薄れていく。


すると。


アルマの瞳が真剣になる。


「フィーネ」


「うむ」


「私」


「ギガルドさんのところまで行く」


ルナが驚く。


「え?」


シエルも振り向く。


「一人で?」


アルマは頷く。


「大丈夫」


「みんながいるから」


「だから私は助ける」


その言葉に。


フィーネは笑った。


「まったく」


「最初からそうするつもりじゃったろう」


ルナも笑顔になる。


「私も頑張る!」


シエルが剣を握る。


「任せて!」


ミルも拳を握る。


「……ミルも!」


エリシアも静かに剣を構えた。


「仕方ないな」


「付き合うよ」


その瞬間。


ギガルドの額。


黒い角の中心。


そこが光った。


フィーネの顔色が変わる。


「全員伏せよ!!」


次の瞬間。


ズガァァァァァァァン!!


天を裂くような黒い雷が。


巨大な柱となって。


空へ向かって放たれた。


そして。


黒雲の向こう。


遥か上空。


何かが。


何者かが。


その雷に反応するように。


ゆっくりと。


目を開いた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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