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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第七十八話 空を覆う呪核


──天才錬金術師は常識を知らない


ゴォォォォォォォォォッ!!


古代竜の咆哮が空を震わせる。


巨大な呪核は脈打ち続けていた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


まるで巨大な心臓。


いや。


生き物そのもののようだった。


雲の上。


塔の頂上付近まで辿り着いたアルマたちは、その異様な光景を目の当たりにしていた。


ルナが震える。


「大きい……」


シエルも言葉を失う。


「これが……呪核……」


今まで見てきたものとは比較にならない。


山のような大きさ。


いや。


下手をすれば王都そのものより大きい。


黒い結晶は空中に浮かび、その周囲を無数の呪いが渦巻いていた。


フィーネの表情も険しい。


「ここまで巨大な呪核は我も見たことがない」


アルマはじっと見つめる。


すると。


呪核の表面に浮かぶ顔が見えた。


苦しむ顔。


泣いている顔。


助けを求める顔。


老人。


子供。


獣人。


魔族。


竜。


様々な者たちの顔だった。


ルナが小さく呟く。


「みんな苦しそう……」


アルマは静かに頷く。


「うん」


その時。


巨大な古代竜が再び暴れた。


グォォォォォォッ!!


巨大な尾が振るわれる。


衝撃波。


空間が歪む。


塔の一部が吹き飛んだ。


ルナが悲鳴を上げる。


「きゃっ!」


シエルが支える。


「大丈夫!?」


「う、うん!」


フィーネは空を睨む。


「完全に理性を失う寸前じゃな」


古代竜の瞳は半分以上黒く染まっている。


あと少し。


あと少しで手遅れになる。


その時だった。


『……たす……け……』


微かな声。


アルマが顔を上げる。


『……ころ……して……くれ……』


今度は違った。


苦しみに満ちた声。


古代竜自身の声。


ルナが青ざめる。


「そんな……」


シエルも唇を噛む。


フィーネは目を閉じた。


「長く苦しみ続けたのだろう」


何年。


何十年。


あるいはもっと長く。


呪いに蝕まれ続けた結果。


生きることすら苦痛になっている。


だが。


アルマは首を横に振った。


「だめ」


古代竜の瞳が僅かに動く。


『……なぜだ……』


「だって」


アルマは真っ直ぐ見上げる。


「本当は死にたくないんでしょう?」


静寂。


その瞬間だった。


古代竜の身体が震える。


黒く染まった瞳の奥。


ほんの少しだけ。


黄金色が戻った。


フィーネが目を見開く。


「なに……!?」


ルナも驚く。


「戻った……?」


シエルが息を呑む。


古代竜が反応したのだ。


アルマの言葉に。


『……』


巨大な瞳から。


一筋の涙が零れ落ちた。


空から落ちる雫。


それだけで湖になりそうな大きさだった。


『……生きたい……』


掠れた声。


『……まだ……』


『友と……話したい……』


裂け目の向こう。


もう一体の古代竜が目を閉じた。


その瞳にも悲しみが宿っている。


アルマは笑った。


「じゃあ大丈夫」


「助けるから」


フィーネが額を押さえる。


「毎回思うのだが」


「うん?」


「お主は何故そんな簡単に言えるのだ」


アルマは不思議そうだった。


「助けたいから?」


「疑問形で返すな」


シエルが苦笑する。


ルナも少し笑った。


こんな状況なのに。


少しだけ緊張が和らいだ。


だが。


その直後だった。


ドクンッ!!


呪核が大きく脈打つ。


今までで最大。


黒い光が広がる。


フィーネの顔色が変わる。


「まずい!」


呪核の表面が割れ始めた。


バキッ。


バキバキバキバキッ!!


巨大な亀裂。


その中から何かが現れる。


腕。


巨大な黒い腕だった。


続いて二本目。


三本目。


四本目。


呪核そのものから無数の腕が生えてくる。


ルナが悲鳴を上げる。


「なにあれ!?」


フィーネが舌打ちした。


「呪いが意思を持ったか!」


黒い腕は古代竜へ伸びる。


さらに深く侵食しようとしていた。


古代竜が苦しむ。


『グァアアアアアアアアッ!!』


アルマの表情が変わった。


怒っていた。


珍しく。


はっきりと。


「だめ」


黒い腕が止まる。


いや。


止められた。


アルマの周囲に無数の錬成陣が浮かぶ。


空一面。


数百。


数千。


数万。


フィーネが思わず引く。


「おい」


ルナも引く。


「アルマお姉ちゃん怒ってる」


シエルも引いていた。


「すごく怒ってる」


アルマは空を見上げる。


「もうやめて」


静かな声。


だが。


世界そのものが震えた。


巨大な呪核。


無数の黒い腕。


そして呪いの嵐。


その全てへ向けて。


天才錬金術師は右手を伸ばした。


「分解するよ」


次の瞬間。


空を埋め尽くすほどの超巨大錬成陣が出現した。


王都からも見えるほど巨大な光の輪。


レオニス王たちも空を見上げる。


市民たちも息を呑む。


そして。


誰もが理解した。


これから始まるのは戦いではない。


常識を遥かに超えた。


天才錬金術師アルマによる。


巨大呪核そのものへの錬金術だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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