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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第七十七話 仮面の男の目的



──天才錬金術師は常識を知らない


雲の中。


空へと続く巨大な塔の途中。


アルマたちの前に現れたのは、あの仮面の男だった。


黒いローブ。


白い仮面。


不気味な存在感。


まるで周囲の空気そのものが歪んでいるかのようだった。


「やはり君だったか」


「創世の錬金術師」


その言葉にアルマは首を傾げた。


「そうせい?」


「何それ?」


仮面の男は一瞬だけ黙る。


そして。


「知らないのか?」


「うん」


即答だった。


フィーネが額を押さえる。


「知らんのかい」


「だって初めて聞いたもん」


アルマは本当に知らなかった。


仮面の男も予想外だったらしい。


しばらく沈黙する。


ルナが小さく呟く。


「なんか困ってる」


シエルも頷く。


「困ってるね」


実際困っていた。


伝説の存在本人が自覚していないのである。


仮面の男は咳払いをした。


「まぁいい」


「どのみち今は関係ない」


フィーネが一歩前へ出る。


「では本題を話せ」


「貴様の目的は何だ」


空気が張り詰める。


ルナもシエルも身構えた。


だが。


仮面の男は意外にもあっさり答えた。


「世界を救うためだ」


沈黙。


フィーネの眉がぴくりと動く。


アルマもきょとんとしている。


「え?」


「世界を救う?」


「そうだ」


男は両腕を広げた。


「この世界は終わりへ向かっている」


「人間も」


「魔族も」


「竜も」


「精霊も」


「全てだ」


その声は真剣だった。


少なくとも嘘には聞こえない。


フィーネは目を細める。


「だから呪いをばら撒いたと?」


「必要な犠牲だ」


即答だった。


その瞬間。


フィーネの瞳が冷えた。


「ほう」


周囲の温度が上昇する。


不死鳥の炎。


黄金の炎が身体から溢れ始めた。


「我の最も嫌う言葉を吐いたな」


仮面の男は肩をすくめる。


「理解されるとは思っていない」


「だが事実だ」


「この世界は近いうちに滅ぶ」


アルマが手を挙げた。


「質問!」


「……なんだ」


「なんで滅ぶの?」


仮面の男は少し驚く。


だが答えた。


「世界の外側だ」


「外側?」


「この世界の外には無数の異界が存在する」


フィーネの表情が変わった。


「異界だと」


「知っているのか?」


「少しな」


フィーネは険しい顔をする。


仮面の男は続けた。


「異界は侵食を始めている」


「裂け目は増え続けている」


「やがて世界は飲み込まれる」


「だから私は対抗手段を作る」


「そのために呪いを研究している」


ルナが顔をしかめた。


「でも」


「たくさんの人が苦しんでる」


仮面の男は沈黙する。


そして。


「知っている」


そう答えた。


アルマは男を見つめる。


嘘ではない。


本当に知っている。


知った上でやっている。


だからこそ。


アルマには分からなかった。


「じゃあなんで?」


「助ければいいじゃん」


仮面の男は笑った。


初めて。


どこか寂しそうに。


「それが出来ないからだ」


「私にはな」


その言葉には重みがあった。


まるで昔。


同じことを考え。


そして失敗したかのような。


そんな響き。


フィーネが男を見る。


「お主」


「何者だ」


男は少しだけ考えた。


そして。


「かつて世界を救えなかった者だ」


それだけだった。


正体は明かさない。


だが。


その言葉だけで十分だった。


長い時間を生きている。


フィーネは確信する。


この男は普通ではない。


おそらく。


自分と同じかそれ以上の存在だ。


その時だった。


ゴォォォォォォォォォッ!!


空が震えた。


古代竜の悲鳴。


呪核がさらに暴走を始めている。


巨大な黒い光が空を覆う。


仮面の男が振り返った。


「時間切れだな」


アルマも空を見る。


古代竜は苦しんでいた。


今にも完全に呪いに飲み込まれそうだった。


「助けないと」


アルマが前へ出る。


仮面の男はその姿を見る。


そして。


「本当に救うつもりか」


「うん」


「失敗するかもしれないぞ」


「やってみなきゃ分かんない」


「死ぬかもしれない」


「助けなきゃもっと困る」


即答だった。


迷いはない。


仮面の男はしばらく黙る。


そして。


小さく笑った。


「そうか」


「なるほど」


「だから選ばれたのか」


アルマは首を傾げた。


「?」


「いや」


「独り言だ」


男は一歩下がる。


すると背後に黒い魔法陣が現れた。


転移魔法。


フィーネが警戒する。


「逃げる気か」


「今日はな」


男は頷く。


「だが覚えておけ」


「アルマ」


初めて名前を呼んだ。


「世界はお前が思うほど優しくない」


「それでも救うと言うなら」


「その先で絶望を見ることになる」


アルマは少し考えた。


そして。


笑顔で答える。


「大丈夫!」


仮面の男が固まる。


「何がだ」


「その時はその時だから!」


あまりにもアルマらしい答えだった。


フィーネが吹き出した。


ルナも笑う。


シエルも苦笑する。


仮面の男はしばらく黙っていた。


やがて。


肩を震わせる。


「……はは」


「なるほど」


「面白い」


そして。


魔法陣の中へ消えていく。


消える直前。


最後の言葉だけが残った。


「創世の錬金術師」


「その力が本物か」


「見せてもらうぞ」


光が消える。


男の姿も消えた。


静寂。


しかし。


休む暇はなかった。


ゴォォォォォォォォォッ!!


古代竜の咆哮。


呪核がついに完全な暴走を始める。


空が黒く染まる。


雲が砕ける。


巨大な呪核の表面には無数の顔が浮かび上がり、苦しみの声を上げていた。


フィーネが空を見上げる。


「まずいな」


ルナも震える。


「もう限界だよ」


シエルが剣を握る。


「急がないと」


アルマは頷いた。


そして。


塔のさらに上。


雲の向こう。


古代竜と巨大な呪核が待つ空へ向かって歩き出す。


本当の戦いは。


今から始まろうとしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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