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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第七十五話 届かぬ高さ



──天才錬金術師は常識を知らない


「大丈夫」


アルマは空を見上げた。


「今助けるから」


その言葉に王の間は静まり返った。


レオニス王が額を押さえる。


「毎回思うのだが」


「うむ」


フィーネが頷く。


「こやつは何故あれを見て助けようになるのだ」


「分からん」


即答だった。


アルマは不思議そうな顔をする。


「だって苦しんでるよ?」


「苦しんでおるな」


「じゃあ助ける」


「そうなるのか?」


「なるよ?」


レオニスはとうとう考えることをやめた。


エルドも遠い目をしている。


「常識が通じん……」


「今さらじゃ」


フィーネは慣れていた。


その時だった。


ゴォォォォォォォォッ!!


古代竜の巨大な腕が王城へ迫る。


漆黒の呪いを纏った腕。


城を丸ごと消し飛ばせそうな質量。


騎士たちが青ざめた。


「防御!」


「結界展開!」


魔術師たちが魔法陣を展開する。


だが。


誰も防げるとは思っていなかった。


その瞬間。


アルマが前に出る。


「錬成」


光が溢れた。


王城の上空。


巨大な金色の壁が出現する。


直後。


ドゴォォォォォォン!!


古代竜の腕が激突した。


衝撃波。


轟音。


暴風。


王都中の建物が揺れる。


しかし。


金色の壁は壊れない。


一切。


傷一つ付いていなかった。


静寂。


騎士たちが固まる。


魔術師たちも固まる。


レオニスも固まる。


「……」


「……」


「……」


アルマが振り返る。


「大丈夫だった」


エルドが頭を抱えた。


「今のは何じゃ」


「壁」


「見れば分かる!」


フィーネが吹き出した。


「くくくっ」


ルナも笑う。


シエルも苦笑している。


王だけが真顔だった。


「もう聞くまい」


「それが賢明じゃ」


フィーネが頷く。


だが問題は終わっていない。


古代竜はまだ空にいる。


巨大な呪核も健在だ。


アルマは空を見上げた。


「うーん」


「どうした?」


ルナが聞く。


「届かない」


「え?」


「高すぎる」


確かにそうだった。


古代竜は雲の上。


王城から見上げるほど高い場所にいる。


いくらアルマでも空は飛べない。


フィーネが腕を組む。


「我が本来の姿なら乗せていけるが」


「今は無理?」


「無理じゃな」


呪いの影響で力が制限されている。


シエルも考え込む。


「どうするの?」


アルマは少し悩んだ。


そして。


「あ」


嫌な予感がした。


フィーネが目を細める。


「その顔はろくでもないことを考えておるな」


「そんなことないよ!」


「本当か?」


「たぶん!」


「駄目じゃな」


アルマは城の外へ飛び出した。


皆も慌てて追う。


王城前広場。


そこには市民たちも避難していた。


誰もが空を見上げている。


その中心で。


アルマは地面に手を置いた。


「よし」


フィーネが嫌な予感しかしなかった。


「アルマ」


「なに?」


「何をする気じゃ」


アルマは笑った。


「上まで行くだけ!」


「嫌な予感しかしない」


次の瞬間。


地面が光り始めた。


ゴゴゴゴゴゴゴ……


王都が揺れる。


市民たちが悲鳴を上げる。


「じ、地震!?」


「何が起きてる!?」


そして。


広場の中央から。


巨大な柱が生えてきた。


ドドドドドドドドドッ!!


石の柱。


いや。


塔だった。


みるみる成長する。


十メートル。


五十メートル。


百メートル。


二百メートル。


まだ伸びる。


誰もが口を開けたまま見上げる。


エルドが震える声で呟く。


「馬鹿な……」


「錬成したのか……?」


「塔を……?」


アルマは満足そうだった。


「できた!」


できていない。


まだ伸びている。


三百メートル。


五百メートル。


七百メートル。


ついには雲を突き抜けた。


王都中が静まり返る。


誰も理解できない。


レオニスが震える声で言う。


「アルマ」


「なに?」


「なぜ塔なんだ」


「届かなかったから」


「そうか」


王は遠い目をした。


フィーネが呟く。


「やはり常識がない」


ルナが苦笑する。


「アルマお姉ちゃんらしい」


シエルも頷いた。


「うん」


そしてアルマは塔へ向かう。


「じゃあ行ってくる!」


「待て」


フィーネが止めた。


「我らも行く」


「危ないよ?」


「お主一人の方が危ない」


即答だった。


アルマは少し考える。


「たしかに」


全員が頷いた。


たしかにである。


その時だった。


空の古代竜が再び苦しみ始める。


黒い呪いが暴走する。


巨大な呪核が脈打つ。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


そして。


呪核の表面に。


人の顔のようなものが浮かび上がった。


無数に。


何百。


何千。


何万。


苦しむ顔。


泣く顔。


叫ぶ顔。


王都中が戦慄する。


エルドが青ざめた。


「まさか……」


フィーネも目を見開く。


「これは……」


アルマだけが気付く。


その顔たちは。


全て。


呪いに取り込まれた者たちだった。


「……助けなきゃ」


少女の瞳が強く輝く。


その先。


雲を突き抜ける塔の頂上。


そして空には。


世界を覆うほど巨大な呪核。


天才錬金術師の戦いは。


ついに空の上へと舞台を移そうとしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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