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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第七十二話 賢者の驚愕


──天才錬金術師は常識を知らない


王の間に静寂が流れる。


「不死鳥………だと?」


黒い外套を纏った老人は、信じられないものを見るような目でフィーネを見つめていた。


フィーネは腕を組む。


「ほう。我を知っておるか」


「知っておるとも……!」


老人の声が震える。


「伝承級の神獣フェニックスを知らぬ魔術師などおらん!」


王の間にいた貴族たちがざわつく。


「伝承級だと……?」


「まさか本物なのか?」


「いや、そんな馬鹿な……」


アルマはきょとんとしていた。


「フィーネって有名なの?」


「うむ」


フィーネは平然と答える。


「昔は少しな」


「少しどころではない!」


老人が叫んだ。


「不死鳥フェニックスはアルケイア最古級の神獣の一柱じゃ!」


ルナとシエルが驚いてフィーネを見る。


「すごかったんだ……」


「今もすごいぞ?」


フィーネは当然のように言った。


アルマは納得したように頷く。


「たしかに」


老人は今度はアルマを見る。


その目には興味と驚愕が混じっていた。


「お主がアルマか」


「うん」


「……本当に普通の娘にしか見えぬ」


「よく言われる」


フィーネが即答した。


「普通ではないがな」


「ひどい」


王レオニスが軽く咳払いする。


「話を進めるぞ」


場が静まった。


王は玉座から立ち上がる。


「まず紹介しよう」


老人へ視線を向ける。


「この方は宮廷最高顧問にして王国筆頭賢者」


「エルド・グランセージ殿だ」


アルマは目を輝かせた。


「賢者!」


「うむ」


「すごい人?」


「すごい人だ」


フィーネが答える。


「この国で最も知識を持つ人間の一人じゃ」


エルドは苦笑した。


「不死鳥にそう言われると複雑じゃの」


そして表情を改める。


「さて、本題じゃ」


空気が変わる。


王の間に緊張が戻った。


エルドは杖を軽く突く。


すると空中に光の地図が浮かび上がった。


アルマが目を輝かせる。


「わぁ!」


ルナも驚く。


「地図……」


そこにはアルケイア大陸が映し出されていた。


八つの国。


それぞれの領土。


そして。


いくつもの赤い印。


フィーネの目が細くなる。


「呪災か」


「その通りじゃ」


エルドが頷く。


「ここ数か月で急増しておる」


王が続けた。


「しかも自然発生ではない」


「誰かが意図的に起こしている」


アルマの表情が真面目になる。


「呪核?」


「おそらくな」


フィーネが答えた。


エルドはアルマを見た。


「君は既に何度か呪核を浄化しておるそうじゃな」


「うん」


「どうやっておる?」


「分解して浄化してる」


エルドが固まった。


「……は?」


「だから分解して浄化」


「いや、意味がわからん」


王も苦笑している。


どうやら何度聞いても理解できないらしい。


フィーネが肩を竦めた。


「我も最初はそうだった」


「呪核とは本来、浄化するだけでも困難なものじゃぞ?」


エルドが頭を抱える。


「それを分解とは何事じゃ……」


アルマは不思議そうだった。


「だって壊れてるところを直すなら、一回分解したほうが早いよ?」


王の間が静まり返った。


貴族たちも絶句する。


エルドが遠い目をした。


「なるほど……」


「理解できた?」


「全くできん」


即答だった。


フィーネが吹き出した。


「くくくっ」


王ですら笑いを堪えている。


しかし。


笑いは長く続かなかった。


エルドの顔が険しくなる。


「問題はそこではない」


杖が地図を指す。


大陸中央部。


そこには巨大な赤い印が浮かんでいた。


他とは比べ物にならない大きさ。


アルマが首を傾げる。


「これなに?」


王が静かに答えた。


「最近発見された巨大呪災の反応だ」


「巨大?」


「過去最大規模だ」


フィーネの表情が変わった。


「……どの程度じゃ」


エルドが答える。


「国一つを滅ぼせる規模」


その瞬間。


王の間の空気が凍りついた。


ルナが息を呑む。


シエルも目を見開く。


「そんな……」


王は腕を組む。


「我が国だけの問題ではない」


「他国も動き始めている」


「ヴァルゼリオン帝国もか?」


フィーネが尋ねる。


「そうだ」


レオニスが頷いた。


「むしろ最も活発に動いている」


フィーネは小さく舌打ちした。


「面倒な」


アルマは地図を見ていた。


じっと。


何かを考えるように。


そして。


「あれ?」


エルドが振り向く。


「どうした?」


アルマは赤い印を指差した。


「これ、呪核じゃないよ?」


一同が固まった。


「……なんじゃと?」


エルドが目を細める。


アルマは真剣な顔をしていた。


「うん」


「呪核じゃない」


「もっと大きい」


「生きてる」


その言葉に。


フィーネの背筋を冷たいものが走った。


「アルマ」


「なに?」


「お主……何が見えておる」


アルマは地図を見つめたまま答える。


「よくわかんない」


「でも」


「すごく嫌な感じがする」


その時だった。


突然。


王の間の窓が激しく揺れた。


ゴォォォォォッ!!


突風。


異様な魔力。


全員が反応する。


騎士たちが武器を抜く。


「何事だ!」


外から悲鳴が聞こえた。


兵士が慌てて飛び込んでくる。


「陛下!!」


「どうした!」


「王都上空に……!」


兵士の顔は青ざめていた。


「巨大な黒い裂け目が出現しました!!」


全員が立ち上がる。


フィーネの瞳が鋭くなる。


王の間の窓の向こう。


空が。


ゆっくりと裂け始めていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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