第六十八話 騎士団と錬金術師
──天才錬金術師は常識を知らない
「ギャオオオオオオオッ!!」
暴走魔獣ガルムが大地を砕きながら突進する。
その巨体だけで圧迫感が凄まじい。
石畳が割れ、周囲の建物が震える。
だが。
「総員、構えろ!!」
クラウスの声が響いた。
騎士たちが一斉に前へ出る。
ガキィィィン!!
巨大盾が並べられ、防衛陣形が形成される。
次の瞬間。
ズドォォォォォン!!
ガルムが真正面から激突した。
凄まじい衝撃。
騎士たちが一斉に後ろへ滑る。
「ぐっ……!!」
「なんて力だ……!」
それでも。
誰一人崩れない。
クラウスが剣を振り上げた。
「右脚を狙え!!」
「はっ!!」
騎士たちが動く。
洗練された連携。
数人が囮となり、残りが側面へ回る。
アルマは目を輝かせていた。
「わぁぁ……すごい……!」
フィーネが呆れた顔をする。
「感心しておる場合か」
ルナもぽかんとしている。
「かっこいい……」
シエルは静かにガルムを見つめていた。
「でも……苦しそう」
アルマは真剣な顔になる。
「うん」
すると。
ズガァァァン!!
クラウスの大剣がガルムの脚へ叩き込まれた。
ガルムが咆哮を上げる。
「グルァァァァ!!」
だが。
傷は浅い。
むしろ黒い呪いが傷口から噴き出した。
騎士たちが後退する。
「再生している!?」
「呪いで強化されているのか!」
フィーネが低く呟く。
「普通に倒すのは厳しいな」
アルマはガルムをじっと見る。
半透明のウィンドウが浮かぶ。
「呪核位置:『胸部内部』」
「呪核暴走率:『78%』」
「危険度:『高』」
アルマは目を細めた。
「胸の中……」
フィーネが気づく。
「見えたか?」
「うん!」
アルマは頷いた。
「でも、普通に壊したらだめ」
「じゃろうな」
シエルが前へ出る。
「……わたし、手伝う」
アルマが振り向く。
「シエルちゃん?」
シエルは胸へ手を当てた。
すると。
淡い銀色の光が広がった。
空気が澄んでいく。
周囲の黒い魔力が少し薄まった。
騎士たちが驚く。
「なんだ、この神聖魔力……!?」
フィーネが小さく笑う。
「古代銀竜族の浄化能力だ」
シエルは少し不安そうにアルマを見る。
「うまくできるかわからない……」
アルマはにこっと笑った。
「大丈夫!」
その言葉に、シエルの表情が少し和らぐ。
その時だった。
ガルムが再び暴れた。
「ギャオオオオッ!!」
黒い衝撃波が周囲へ放たれる。
騎士たちが吹き飛ばされそうになる。
「くっ……!」
クラウスが剣を地面へ突き刺し踏ん張った。
だが。
次の瞬間。
「ふんぬーーー!!」
アルマが前へ飛び出した。
フィーネが叫ぶ。
「お主!?」
アルマは両手を前へ突き出す。
「錬金術式──固定!!」
パァァァァァッ!!
巨大な光の鎖が空中へ出現した。
それがガルムの身体へ巻き付く。
ガシィィィン!!
ガルムが強引に止められた。
騎士たちが目を見開く。
「止めた!?」
「素手で……!?」
いや。
正確には錬金術だ。
だが規模がおかしい。
クラウスですら唖然としていた。
「……本当に人間か?」
フィーネが遠い目をする。
「我も時々そう思う」
ガルムは暴れ続ける。
鎖が軋む。
「グルルルルルルッ!!」
アルマが踏ん張る。
「うぅぅぅ……!」
その時。
シエルがアルマの隣へ立った。
「一緒に」
アルマが笑う。
「うん!」
シエルは両手を重ねる。
銀色の光が広がった。
その光が錬金鎖へ流れ込む。
すると。
黒い呪いが少しずつ浄化され始めた。
ガルムの瞳が揺れる。
苦しそうな声。
「グ……ゥ……」
ルナが小さく呟く。
「戻ってる……?」
フィーネが目を細める。
「いや、まだ足りぬ」
アルマは頷いた。
「うん……もっと奥」
すると。
クラウスが前へ出た。
「道を作る」
「え?」
「呪核は胸の中だろう?」
アルマが目を丸くする。
「なんでわかったの?」
「顔に書いてある」
「えっ」
フィーネが吹き出した。
「くくっ」
クラウスは大剣を構える。
「騎士団!!」
「はっ!!」
「全力で押さえ込む!!」
騎士たちが雄叫びを上げた。
魔法陣が展開される。
炎。
風。
雷。
様々な魔法がガルムへ撃ち込まれる。
ドドドドドドドッ!!
ガルムが咆哮する。
その隙に。
クラウスが跳んだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
銀色の斬撃。
ズガァァァァン!!
ガルムの胸部装甲が砕け散った。
その奥。
脈打つ黒い結晶。
呪核。
アルマの瞳が鋭くなる。
「見えた!!」
その瞬間。
呪核が不気味に脈動した。
ドクン。
空気が凍る。
フィーネの表情が変わった。
「まずい!!」
次の瞬間。
呪核から黒い腕が無数に伸びた。
「なっ!?」
騎士たちが驚愕する。
その黒い腕は。
まるで何か意思を持つように。
アルマへ向かって伸びてきた。
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