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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第六十四話 再構築の錬金術



──天才錬金術師は常識を知らない


白い光が森を包み込んだ。


轟音。


暴風。


呪い。


その全てを飲み込むように、アルマの周囲に巨大な錬金陣が幾重にも展開されていく。


空中。


地面。


木々の上。


まるで世界そのものへ術式を書き込むかのようだった。


フィーネが目を見開く。


「なんだ、この規模は……!」


神獣である彼女ですら理解できない。


いや。


理解を拒むほどの術式。


グランも息を呑んでいた。


「これが……錬金術……?」


アルマは静かに杖を握る。


その瞳には、黒呪竜の内部構造が映っていた。


呪い。


魔力。


命。


繋がり。


壊れた循環。


そして。


苦しみ。


「分解だけじゃダメ……」


アルマは小さく呟く。


「壊したあと、“元に戻さなきゃ”」


その瞬間。


術式が回転した。


ゴォォォォォッ!!


白銀の光が黒呪竜を包み込む。


「グォォォォオオオオオ!!?」


黒呪竜が絶叫した。


黒い呪いが暴れ狂う。


だが。


その呪いが、少しずつほどけ始めていた。


フィーネが驚愕する。


「呪いを……組み替えておるのか!?」


普通なら不可能。


呪いは破壊か浄化しかない。


それをアルマは。


“再構築”していた。


アルマの脳内へ大量の情報が流れ込む。


黒呪竜の記憶。


苦痛。


怒り。


悲しみ。


長い年月、呪いに蝕まれてきた感情。


「……っ」


アルマの頬を汗が流れる。


膨大すぎる情報量。


普通の人間なら精神が耐えられない。


だがアルマは止まらない。


「もう少し……!」


鎖の構造が見えていた。


少女と黒呪竜を繋ぐ黒い呪鎖。


それは呪いでありながら、命そのものを縛る術式でもあった。


無理やり引き剥がせば。


どちらかが死ぬ。


だから。


「なら、作り替える!」


アルマの魔力が爆発した。


ドォォォォォン!!


大地が揺れる。


空が震える。


周囲の魔物たちが一斉に後退した。


グランですら圧に押される。


「なんという魔力だ……!」


ルナは目を輝かせていた。


「アルマお姉ちゃん……すごい……」


ミルはぷるぷる震えている。


「あるま、ぴかぴか……!」


フィーネは空中で呆然としていた。


「エンシェントドラゴン級どころではない……この魔力、底が見えぬ……!」


アルマは両手を前へ突き出す。


「錬金術式──再構築開始!」


術式が黒呪竜へ流れ込む。


黒い鎖が軋んだ。


バキッ。


一本。


バキバキッ!!


二本。


次々に鎖が砕けていく。


だが同時に、少女が苦しげに声を漏らした。


「ぁ……ぁあ……」


アルマが目を見開く。


「だめ!」


鎖を壊すだけでは駄目だ。


少女の命が持っていかれる。


アルマは瞬時に術式を書き換えた。


「命の流れを固定……魔力循環を再接続……!」


フィーネが固まる。


「今、即興で術式を組み替えたのか……!?」


あり得ない。


超高位術式を戦闘中に変更するなど、神話級魔導士でも不可能だ。


だがアルマは当然のように続けていた。


「ここをこうして……!」


パァァァァァッ!!


少女を包む白い光。


黒い呪いが少しずつ浄化されていく。


その時だった。


黒呪竜の赤い瞳が、ゆっくりアルマを見た。


その瞳には。


先ほどまでの狂気がなかった。


「……グ、ル……」


苦しそうな声。


アルマは微笑む。


「もう少しだからね」


その優しい声に。


黒呪竜は、静かに目を閉じた。


まるで全てを委ねるように。


グランが呟く。


「信じた……のか」


フィーネも静かに息を吐いた。


「お主は、本当に変えてしまうな……」


アルマの周囲で光が加速する。


術式はさらに巨大化していた。


森全体を覆うほどの規模。


空中に無数の光の文字が浮かび上がる。


魔法ではない。


神聖術でもない。


純粋な“錬金術”。


世界を書き換える技術。


アルマは少女へ手を伸ばした。


「大丈夫」


少女の赤い瞳が揺れる。


「……たす、け……て」


「うん、助けるよ」


その瞬間。


最後の呪鎖が砕けた。


パキィィィィン!!


黒い呪いが爆発する。


だが。


白い光が、それを包み込んだ。


浄化。


再構築。


分解。


全てが同時に行われていた。


黒い霧が空へ昇る。


そして。


ゆっくりと消えていく。


「グォォォ……」


黒呪竜の身体から、黒い外殻が剥がれ落ち始めた。


ボロボロと崩れる呪い。


その下から現れたのは。


深い蒼色の鱗だった。


フィーネが目を見開く。


「本来の姿……!」


グランも驚いていた。


「呪化を……完全解除したというのか……!?」


やがて。


巨大な竜が静かに地面へ降り立つ。


その姿は先ほどまでとは別物だった。


神々しい蒼竜。


穏やかな瞳。


長い年月苦しみ続けてきた存在。


アルマはその場へぺたんと座り込んだ。


「ふぇぇ……つ、疲れたぁ……」


フィーネが即座に飛んできた。


「馬鹿者!!無茶をしすぎだ!!」


「うぇっ!?ふぃ、フィーネ?」


フィーネは珍しく本気で怒っていた。


「お主、自分がどれほど危険なことをしたかわかっておるのか!?」


「えぇ?でも助かったよ?」


「結果論だ!!」


ルナが慌てて駆け寄る。


「アルマお姉ちゃん、大丈夫!?」


ミオも飛びついた。


「あるまー!」


アルマは苦笑する。


「うん、大丈夫」


その時だった。


背後で、小さな声が響いた。


「……あなた、が」


全員が振り向く。


そこには。


銀髪の少女が立っていた。


赤い瞳を揺らしながら。


まっすぐアルマを見つめていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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