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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第六十一話 森の王と黒き霧


──天才錬金術師は常識を知らない


草原を吹き抜ける風は穏やかだった。


だが、その場の空気は静かに張り詰めていた。


「我と共に、“呪いの源”を探してほしい」


グランの低い声が響く。


アルマはぱちぱちと瞬きをした。


「呪いの源?」


「あぁ」


グランは静かに頷く。


周囲には、彼を慕う魔物たちが集まっていた。


狼型の魔獣。


大鹿。


翼蛇。


どれも上位種ばかりだ。


普通の冒険者ならその場に立っているだけで腰を抜かしていただろう。


だがアルマは違った。


「面白そう!」


即答だった。


フィーネが頭を抱える。


「お主はほんとうに危機感というものを持たぬな……」


「えぇ?でも、呪いを止めないとまた誰か苦しむんでしょ?」


アルマは真っ直ぐグランを見る。


「なら、放っておけないよ」


グランはその言葉に目を細めた。


「……変わった錬金術師だ」


「アルマお姉ちゃんは、そういう人だから」


ルナが少し誇らしげに言う。


ミルもぷるぷる震えながら頷いた。


「あるま、すぐひろう」


「それ褒めてる?」


「わからない」


フィーネが深いため息を吐いた。


「はぁ……まぁよい。我も反対はせぬ」


「ほんと!?」


「どうせ止めても行くであろう?」


「うん!」


「即答するな」


フィーネは呆れたように肩を落とす。


すると、グランの背後にいた黒い狼型魔獣が前へ出た。


その瞳には警戒が宿っている。


「主、本当にこの人間たちを信用するのですか」


低い唸り声。


周囲の魔物たちも不安そうにアルマたちを見ていた。


当然だった。


人間は本来、魔物と敵対する存在。


まして神獣級の存在を助けるなど、普通ではあり得ない。


だがグランは静かに答える。


「この者たちがいなければ、我は今も暴走していた」


「しかし……」


「それに」


グランはアルマを見る。


「この錬金術師は、“呪い”を分解した」


その瞬間、魔物たちがざわめいた。


「分解……?」


「呪いを……?」


「そんなことが……」


フィーネが腕を組む。


「普通は不可能だからな」


「え?」


アルマが首を傾げる。


「そうなの?」


「お主は少し自分を疑え」


フィーネは真顔だった。


ルナが苦笑する。


「アルマお姉ちゃん、基準がおかしいから……」


アルマは納得していない顔をした。


「でも、構造を理解して崩しただけだよ?」


グランの配下たちは一斉に固まった。


「構造を……理解?」


「呪いの?」


「そんな簡単に言うことか……?」


フィーネが遠い目をする。


「これが“規格外”というやつだ」


その時だった。


グランが突然、空を見上げた。


「……来る」


空気が変わる。


周囲の魔物たちも一斉に警戒態勢へ入った。


ルナがアルマの服を掴む。


「な、なに……?」


フィーネの瞳が細くなる。


「魔力反応……しかも複数」


その直後。


ズズゥゥン……


遠くの森の奥で、大地が揺れた。


鳥たちが一斉に飛び立つ。


空気に混ざる、不気味な気配。


アルマもそれを感じ取っていた。


「……なんか、嫌な感じ」


グランが低く唸る。


「奴らだ」


「え?」


「黒い霧を纏った者たち……!」


その瞬間だった。


森の奥から、真っ黒な煙のようなものが噴き上がった。


まるで生き物のように蠢く黒霧。


その中から、ゆっくりと人影が現れる。


全身を黒衣で包んだ集団。


顔は仮面で隠されていた。


フィーネの目が険しくなる。


「またお主らか」


仮面の男たちは静かにこちらを見ていた。


その中心にいた長身の男が、ゆっくり口を開く。


「……なるほど」


低い声。


「失敗したか」


その声を聞いた瞬間、グランの全身から殺気が溢れた。


「貴様……!」


地面が震える。


魔物たちも牙を剥いた。


だが仮面の男は動じない。


むしろ、楽しそうですらあった。


「神獣級の呪化が解除されるとはな」


男の仮面の奥から視線が向く。


真っ直ぐ、アルマへ。


「……やはり、原因は貴様か」


アルマはきょとんとする。


「私?」


「異常な錬金術。常識外れの魔力。神獣すら従える存在……」


男は静かに笑った。


「報告通りだ」


フィーネが前へ出る。


炎が揺らめいた。


「お主ら、何者だ」


男は答えない。


代わりに、黒霧が周囲へ広がり始めた。


草が枯れる。


木々が黒ずむ。


ルナが震えた。


「これ……呪い……!」


ミルはアルマの後ろへ隠れる。


グランが牙を剥いた。


「また森を侵す気か!」


だが男は静かに言った。


「違う」


そして。


仮面の奥から、笑うような声が漏れる。


「今日は、“確認”しに来ただけだ」


その瞬間。


黒霧の奥で、巨大な影が動いた。


ズズゥゥゥン……


大地が揺れる。


森の木々より遥かに巨大な何か。


アルマたちは思わず空を見上げた。


そこには。


黒い鎧のような外殻を纏った、“竜”がいた。


「……っ!?」


ルナが息を呑む。


フィーネの顔色が変わる。


「まさか……黒呪竜か!?」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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