表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/121

第五十三話 不死鳥の炎と救いの手



──天才錬金術師は常識を知らない


ソリティア共和国、草原。


夕闇が草原を覆い始める中、空気は張り詰めていた。


アルマの腕の中では、メタモルスライムが小さく震えている。


黒いフードの集団はゆっくりと距離を詰めていた。


その動きには迷いがない。


まるで最初から“奪う”ことしか考えていないようだった。


「最後に言う」


先頭の男が低く告げる。


「それを渡せ」


アルマは首を横に振る。


「やだ」


即答だった。


男の眉がわずかに動く。


「子供が首を突っ込む問題じゃない」


「でも、この子嫌がってるよ」


「それは関係ない」


フィーネが前へ出る。


「あるに決まっておろう」


その瞬間。


周囲の空気が熱を帯びた。


ぼぅ……と、フィーネの身体から赤金色の炎が揺らめき始める。


ルナが息を呑む。


「フィーネお姉ちゃん……」


黒フードの一人が警戒するように後退した。


「……炎?」


「ただの炎ではないな」


別の男が低く呟く。


フィーネは静かに笑う。


「今さら気づいたか」


次の瞬間。


ドォッ!!!


爆ぜるように炎が広がった。


草原を焼かぬよう制御された炎。


だが、その圧力だけで風景が歪む。


黒フードたちが一斉に飛び退く。


「っ!?」


「なんだこの魔力は!」


フィーネの瞳が赤く輝く。


「我を誰だと思っておる」


炎が羽の形を描き、その背後に巨大な不死鳥の幻影が現れる。


ルナがぽかんと口を開けた。


「す、すごい……」


アルマは目を輝かせる。


「かっこいい!!」


「見るところが違う!」


フィーネが思わずツッコむ。


しかし黒フードたちは笑っていた。


「なるほど」


「ただの護衛ではないか」


「ならば回収対象を増やすだけだ」


その瞬間。


黒フードの一人が地面へ手を叩きつけた。


黒い魔法陣が展開される。


「出ろ」


ドロリ、と。


地面から黒い泥のような魔物が這い出した。


ルナが怯える。


「ひっ……」


フィーネが目を細める。


「呪術生成か」


泥の魔物は複数。


人型のようで、人型ではない。


不気味に揺れながらアルマたちへ迫る。


アルマはそれをじっと観察していた。


「……変な構造」


フィーネが振り返る。


「アルマ?」


「これ、生き物じゃない」


黒フードの男が鼻で笑う。


「当然だ」


「これは人工呪獣」


ルナの顔が青ざめる。


「人工……?」


「呪いと魔物の核を混ぜて作った兵器だ」


フィーネの目が鋭くなる。


「やはり貴様らか」


男は口元を歪めた。


「帝国は進化している」


「不要な命を使い、より優れた力を作る」


アルマの目から楽しげな色が消える。


「……不要?」


男は当然のように言った。


「価値のない命は使われるべきだ」


静寂。


次の瞬間。


アルマが小さく呟く。


「それ、嫌い」


男が眉をひそめた。


「何?」


アルマはスライムをルナへ預ける。


「ルナちゃん、この子お願い」


「う、うん!」


アルマは前へ出た。


フィーネが少し驚く。


「アルマ?」


「分解、してみる」


黒フードたちが警戒する。


「……錬金術師か?」


アルマは杖を構えた。


その瞳が静かに光る。


「構造解析」


世界が止まったような感覚。


アルマの視界には、呪獣の構造が全て映っていた。


魔力の流れ。


呪核。


無理やり繋ぎ合わされた命の断片。


「ひどい」


ぽつりと呟く。


「こんなの、痛いに決まってる」


次の瞬間。


アルマが杖を振った。


「分解」


パキンッ!!


空間そのものが砕けるような音。


呪獣の身体が一瞬で崩壊した。


黒い泥が霧散していく。


黒フードたちの目が見開かれる。


「なっ!?」


「一撃だと!?」


アルマは首をかしげる。


「簡単だった」


フィーネが頭を抱えた。


「お主はほんとに……」


残った呪獣たちが一斉に襲いかかる。


だが。


アルマは逃げない。


「分解」


「再構築」


「浄化」


次々と呪獣が光へ変わっていく。


まるで最初から存在しなかったかのように。


黒フードたちは完全に動揺していた。


「ありえん……!」


「呪核を素手で崩しているだと!?」


フィーネが笑う。


「だから言ったであろう」


「規格外だと」


男たちは後退りする。


明らかに想定外だった。


アルマは不思議そうに首をかしげる。


「逃げるの?」


「っ……!」


男が歯を食いしばる。


「撤退だ!」


次の瞬間。


黒い煙が広がった。


視界が覆われる。


ルナが目を閉じる。


「きゃっ!」


風が吹き抜け、煙が晴れた時には。


黒フードたちの姿は消えていた。


静寂。


草原には風だけが残る。


ルナが恐る恐る顔を上げる。


「……いなくなった?」


フィーネが鼻を鳴らした。


「逃げたな」


アルマは少し不満そうだった。


「もっと聞きたいことあったのに」


「十分危険だったわ!」


フィーネが即座にツッコむ。


ルナは苦笑しながら、腕の中のスライムを見た。


メタモルスライムはぷるぷると震えていた。


だが。


その色は少しだけ明るくなっていた。


「……たすかった?」


アルマはにっこり笑う。


「うん!」


スライムが小さく揺れる。


「……キラキラ」


フィーネは空を見上げる。


夜が近い。


そして。


帝国の動きも、確実に近づいていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ