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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第四十八話 静かなる帝国の影



──天才錬金術師は常識を知らない


王都ソリティア。


昼の市場。


「おぉぉ!?また売り切れだ!!」


「自動料理鍋、すげぇな……!」


「うちの店にも欲しいぃぃ!!」


市場は相変わらず騒がしかった。


原因はもちろん。


「えへへ〜」


のんきに果物を頬張っている少女。


アルマである。


フィーネが呆れたように言った。


「お主、自分が何をしたかわかっておるか?」


「お鍋なおした!」


「その結果、王都中の料理人が発狂寸前だ」


ルナはくすっと笑う。


「でも、みんな嬉しそうだったよ?」


「それはそうだろうな……」


フィーネは遠い目をした。


たった一人の少女が。


王都の技術水準を次々と塗り替えている。


しかも本人に自覚がない。


それが一番恐ろしい。


アルマは新しい露店を見つけて目を輝かせた。


「あっ!見てフィーネ!」


「今度はなんだ」


「これ動くぬいぐるみ!」


露店に並んでいたのは、小型の魔導人形だった。


歩いたり、鳴いたりする玩具。


子供向けの商品らしい。


ルナが目を輝かせる。


「かわいい……」


店主が笑う。


「お嬢ちゃんたち、見る目あるねぇ!最近流行りの魔導玩具だ!」


アルマはぬいぐるみを持ち上げる。


「へぇ〜、どうなってるんだろ」


フィーネが嫌な顔をした。


「おい」


アルマの目が完全に研究者のそれになっていた。


「魔力回路は単純だな〜」


「ここをこうしたら……」


「待て」


「もっと滑らかに動きそう!」


「待てと言っておる」


しかし遅かった。


カチッ。


アルマが軽く内部をいじる。


次の瞬間。


ぬいぐるみの目が光った。


「ピギィッ!!」


「わっ!?」


ぬいぐるみが勢いよく跳ねた。


さらに。


タタタタタタッ!!


高速移動。


「え!?」


露店中を走り回る。


商品を整理し。


倒れた箱を直し。


落ちた果物を拾い。


最後には店主の肩に乗った。


「ピギ!」


店主が固まる。


「……な、なんだこれ」


アルマは感動していた。


「すごい!自分で考えて動いてる!」


フィーネは額を押さえる。


「また妙な進化を……」


周囲の人々もざわつく。


「おい見たか!?」


「今の魔導玩具か!?」


「自分で働いてるぞ!?」


店主は震えながらアルマを見る。


「お、お嬢ちゃん……何者だ……?」


アルマは首を傾げた。


「アルマだよ?」


「名前を聞いてるんじゃねぇ!!」


市場が爆笑に包まれる。


だが。


その喧騒を、少し離れた場所から見つめる影があった。


黒い外套。


深く被ったフード。


鋭い視線。


男は静かに呟く。


「……報告以上だな」


隣の女が腕を組む。


「えぇ。“規格外”どころではないわ」


二人は人混みに紛れていた。


だがその目だけは、明確な目的を持っている。


ヴァルゼリオン帝国。


その密偵部隊だった。


男は低い声で言う。


「本当に子供か?」


「見た目はね」


女はアルマを見る。


「でも、あれだけ自然に魔導回路を書き換えるなんて普通じゃない」


「しかも無詠唱」


「無自覚に高位技術を扱ってる」


沈黙。


やがて男が口を開いた。


「……帝王陛下が興味を示すわけだ」


ヴァルゼリオン帝国。


軍事力と魔導技術によって大陸最大規模を誇る超大国。


その帝王が直々に命じた。


“錬金術師の少女を調査せよ”


それほどまでに。


アルマの存在は異常だった。


女密偵が小さく息を吐く。


「でも厄介ね」


「何がだ」


「隣の赤髪」


フィーネを見た瞬間。


女の表情が険しくなる。


「あれ、普通じゃない」


男も頷いた。


「圧力が異常だ。魔力を隠しているのに、近づくだけで本能が警告してくる」


「まるで災害」


二人は本能的に理解していた。


あの赤髪の少女。


あれは人間ではない。


下手をすれば。


帝国最強クラスですら危険。


そんな存在だった。


一方その頃。


アルマは。


「ん〜?」


突然後ろを向いた。


密偵たちが一瞬で視線を逸らす。


フィーネが小さく笑った。


「気づいたか」


「うっすら?」


アルマは首を傾げる。


「なんか視線ある〜」


ルナがきょろきょろする。


「え?どこ?」


「気にするな」


フィーネが静かに言った。


「害意はまだ薄い」


「まだ?」


「少なくとも今は、な」


アルマは少し考えたあと。


「じゃあいっか!」


即終了だった。


フィーネが呆れる。


「お主はもう少し警戒を覚えろ」


「でも悪い人ならフィーネが倒してくれるでしょ?」


「……否定できん」


ルナが小さく笑った。


その様子を遠くから見ていた密偵の女が呟く。


「……変な子たち」


男は静かに言う。


「だが、だからこそ危険だ」


普通ではない。


常識が通じない。


しかも。


本人たちにその自覚がない。


それが最も厄介だった。


その夜。


ヴァルゼリオン帝国へ向けて、一通の魔導通信が飛ばされる。


『対象確認』


『少女アルマ、危険度再評価必要』


『推定、国家戦力級』


『護衛の赤髪は正体不明』


『接触は慎重を要する』


そして最後に。


『対象、現在も無自覚に常識を破壊中』

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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