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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第三十七話 錬金術師は市場を混乱させる


──天才錬金術師は常識を知らない


王都ソリティア。


朝の大通りは今日も賑やかだった。


露店の呼び込み。


焼き立てのパンの匂い。


行き交う冒険者たち。


その中を、アルマは元気よく歩いていた。


「わぁ〜!見てフィーネ!なんか串に刺さってる!」


「肉だな」


「肉って串に刺すものなの?」


「逆にどう食べる気だったのだ」


「鍋!」


「お主はすぐ煮ようとするな」


ルナがくすりと笑う。


以前より表情が柔らかくなっていた。


アルマは露店をじーっと眺める。


「……おいしそう」


店主が笑った。


「嬢ちゃん一本どうだい?」


アルマは財布を開く。


「えっと、いくら?」


「銅貨三枚だ」


アルマは真顔になった。


「高い」


「いや普通だが!?」


フィーネが呆れた顔をする。


「お主、金銭感覚がおかしいぞ」


「だって石ころ宝石にしたらすぐお金になるし……」


「その発想をやめろと言っておる」


周囲の通行人がぎょっとした顔で振り向いた。


フィーネは慌ててアルマの口を塞ぐ。


「むぐっ!?」


「しーっ!!」


ルナが小声で言う。


「アルマお姉ちゃん、目立ってる……」


アルマはようやく静かになった。


その時だった。


「た、大変だぁぁ!!」


市場の奥から叫び声が響く。


人々がざわつく。


アルマたちもそちらへ向かった。


そこには青ざめた顔の商人がいた。


「薬草が全部ダメになっちまった!」


店先に並ぶ大量の薬草。


だがどれも黒ずみ、萎れている。


別の商人も顔をしかめた。


「昨日まではなんともなかったのに……」


「湿気か?」


「いや、こんな一気に腐るか?」


アルマは興味津々で近づく。


「見てもいい?」


商人は疲れた顔で頷いた。


「好きにしてくれ……もう売り物にならねぇ」


アルマは薬草を持ち上げる。


「……あ」


フィーネが横から覗き込む。


「どうした」


「これ、腐ってない」


「何?」


アルマは薬草をじっと見つめる。


「なんか魔力の流れが変」


フィーネの目が細くなる。


アルマは指先で薬草をつついた。


「うーん……」


そして。


「たぶん、ここ」


杖で軽く触れる。


瞬間。


黒い靄のようなものが抜けた。


薬草が鮮やかな緑色へ戻る。


周囲が静まり返った。


商人が目を見開く。


「……は?」


アルマは別の薬草も触る。


ぽんっ。


ぽんっ。


次々に戻っていく。


「はい、終わり!」


満面の笑み。


市場が沈黙した。


商人は固まっている。


「……な、な、な……」


アルマは首を傾げる。


「?」


「なんで治ったんだぁぁ!?」


市場が一気に騒然となる。


「今何した!?」


「回復魔法か!?」


「いや違うぞ!」


フィーネが頭を抱える。


「始まった……」


ルナが小声で聞く。


「フィーネお姉ちゃん、これまずい?」


「かなりまずい」


アルマは困惑していた。


「えぇ?だって変なの抜いただけだよ?」


「普通はそれができんのだ!!」


フィーネのツッコミが飛ぶ。


商人が勢いよくアルマの手を握った。


「お、お嬢ちゃん!頼む!!こっちも見てくれ!!」


「え?」


「こっちの保存肉も変なんだ!」


「こっちの水も濁ってる!」


「うちの果物も!!」


一瞬で囲まれる。


アルマの目が輝いた。


「いっぱいある!」


「嬉しそうな顔をするな!」


だが時すでに遅し。


アルマは次々と市場の商品を解析し始めた。


「これは水の魔力が偏ってる」


「こっちは菌が繁殖してる」


「この樽、木材の内側腐ってるよ?」


商人たちが青ざめる。


「えぇぇぇ!?」


「今まで気づかなかったぞ!?」


アルマは次々と修復していく。


腐敗除去。


浄化。


構造修復。


もはや職人どころの話ではない。


市場の空気が変わっていった。


「なんだこの子……」


「神官か?」


「いや、もっとヤバいぞ……」


フィーネは遠い目をしていた。


「もう手遅れだな」


ルナが苦笑する。


「アルマお姉ちゃん楽しそう」


実際、アルマはとても楽しそうだった。


「わぁ!この世界の素材面白い!」


市場の隅では、ある老人が震えていた。


王都でも有名な老薬師。


彼はアルマの修復を見ていた。


「……ありえん」


呟く。


「あれは治療ではない」


薬草そのものを“正常な状態へ再定義”しておる……」


額から汗が流れる。


老薬師は長年研究を重ねてきた。


だからこそ分かる。


今目の前で起きていることが、どれだけ異常なのか。


アルマはそんな視線にも気づかず、楽しそうに市場を歩き回っていた。


「ねぇフィーネ!」


「今度はなんだ」


「この世界の料理って全部火を使うの?」


「全部ではないが……急にどうした」


アルマは真顔になった。


「もっと効率いい調理器具作れそう」


フィーネの顔が引きつる。


「やめろ」


「え?」


「市場を壊す気か」


「???」


ルナがくすくす笑った。


アルマは頬を膨らませる。


「フィーネ最近ひどくない?」


「お主が常識を壊しすぎるのだ」


その時だった。


市場の奥から声が響く。


「待ってくれ!!」


振り向くと、料理人風の男が走ってきていた。


「その子か!?薬草を治したのは!」


アルマはきょとんとする。


「うん?」


料理人は目を輝かせた。


「頼む!!うちの店を助けてくれ!!」


「……は?」


フィーネが嫌な予感を覚える。


料理人は必死だった。


「新メニュー用の肉がどうしても硬くてな!!」


アルマは首を傾げた。


「柔らかくしたいの?」


「そうだ!!」


アルマは少し考える。


「できると思う」


フィーネが即座に止めた。


「待て」


「え?」


「嫌な予感しかしない」


だがアルマはもう興味津々だった。


「お肉!」


フィーネは空を仰ぐ。


「……また何か始まるぞ」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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