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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第二十八話 報酬と新たな波紋


──天才錬金術師は常識を知らない


王都ソリティア、冒険者組合。


夕方の時間帯ということもあり、建物の中は依頼帰りの冒険者たちで賑わっていた。


「ただいまー!」


アルマが勢いよく扉を開ける。


周囲の視線が一瞬だけ集まるが、すぐに元の喧騒へと戻る。


「……少しは静かに入れ」


フィーネが呆れたように言う。


「えー?元気なほうがいいでしょ?」


「場をわきまえろ」


ルナはそのやり取りを見ながら小さく笑う。


「なんか、帰ってきたって感じするね」


三人は受付へ向かう。


依頼書と薬草を差し出す。


「依頼の達成報告です!」


受付嬢はにこやかに受け取り、薬草を確認する。


だが次の瞬間、その手がわずかに止まった。


「……これは」


フィーネが横目で見る。


「やはりか」


アルマは不思議そうに首をかしげる。


「またなんか変?」


受付嬢は慎重に薬草を持ち上げる。


「いえ……問題はありません。ただ、その……」


言葉を選ぶように間を置く。


「非常に状態が良いです」


「よかった!」


アルマは素直に喜ぶ。


フィーネは小さくため息をついた。


「その“良さ”が問題なのだがな」


受付嬢は軽く咳払いをして、業務に戻る。


「確認が取れましたので、報酬をお渡しします」


袋に入った硬貨が差し出される。


アルマはそれを受け取り、中を覗く。


「おぉ〜……!」


目を輝かせる。


「これ、お金だよね!」


「それ以外に何がある」


フィーネが即答する。


ルナも興味深そうに覗き込む。


「これでご飯とか買えるの?」


「買えるよ!」


アルマは嬉しそうに言う。


初めての依頼報酬。


それは確かな達成感だった。


「やったね!」


「うむ、初回としては上出来だ」


フィーネも短く評価する。


受付を離れた三人は、少し空いたテーブルに座る。


アルマはお金を机に広げる。


「どう使う?」


ルナが目を輝かせる。


「おいしいもの食べたい」


「いいね!」


アルマもすぐに乗る。


フィーネは腕を組む。


「全て使うな。多少は残しておけ」


「えー」


「当たり前だ」


ルナは少し考えてから言う。


「じゃあ、少しだけ使う?」


「それがいい」


フィーネが頷く。


アルマはしぶしぶ硬貨を分ける。


「じゃあこれは使う分、こっちは残す分!」


その様子を、少し離れた場所から見ている者がいた。


冒険者風の男たち。


「なぁ、見たか?」


「あぁ……あの薬草」


「普通じゃねぇぞ」


小声での会話。


彼らの視線は、明らかにアルマたちへ向けられていた。


フィーネの耳がわずかに動く。


「……まただな」


アルマが顔を上げる。


「なにが?」


「視線だ」


ルナが少し不安そうにする。


「また?」


アルマは軽く振り返る。


そして、あっさりと言う。


「ほんとだ」


フィーネがため息をつく。


「気づくのはいいが、反応が軽すぎる」


「だって見るだけでしょ?」


アルマは気にしていない。


その様子に、逆に周囲の方が戸惑っていた。


「……なんか余計に怪しいな」


冒険者の一人が呟く。


別の男が言う。


「報告するか?」


「まだいいだろ、様子見だ」


そんな会話が交わされていることなど、アルマは気にしない。


「ねぇねぇ!」


アルマが立ち上がる。


「ご飯行こ!」


「話を聞け」


フィーネの突っ込みも軽く流す。


ルナも立ち上がる。


「うん!」


三人はそのまま組合を後にした。


夕方の街。


灯りが少しずつ増え、人の流れも変わっていく。


「どこ行く?」


アルマが楽しそうに聞く。


「さっき見たところにしよう」


ルナが言う。


「パン屋さん!」


「いいな」


フィーネも同意する。


三人は通りを歩く。


だがその背後では、確実に何かが動いていた。


「対象、移動しました」


「引き続き監視を続けます」


低い声。


屋根の上、影の中。


誰かが三人を見ている。


アルマはふと立ち止まる。


「……?」


「どうした」


フィーネが問う。


アルマは少しだけ空を見上げる。


「なんか……」


一瞬の違和感。


だがすぐに首を振る。


「気のせいかも!」


フィーネはじっと見つめる。


「……そうか」


ルナは気づかず、前を指さす。


「あ、あそこ!」


パン屋の明かりが見える。


アルマはすぐに笑顔に戻る。


「行こ!」


三人は再び歩き出す。


その背中を、見えない視線が追い続けていた。


──小さな依頼。


──小さな成功。


だがその裏で、確実に波紋は広がっている。


そしてそれは、やがて大きな流れへと変わる。


アルマたちはまだ知らない。


自分たちの“普通”が、この世界にどれほどの影響を与えているのかを。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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