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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第二十七話 小さな依頼の帰り道と、静かな違和感


──天才錬金術師は常識を知らない


王都ソリティアへ戻る帰り道。


草原はすでに夕方の色を帯び始め、風は少しだけ冷たさを含んでいた。


アルマたちは依頼で採取した薬草を袋に入れ、ゆっくりと歩いている。


「これで依頼達成だね!」


アルマは満足そうに袋を揺らす。


「うむ、問題はない」


フィーネは短く答えた。


「……ちゃんとできた」


ルナも少し安心したように言う。


何も起きない。


それは本来、良いことのはずだった。


だがフィーネだけは、わずかに目を細めていた。


「……妙だな」


ぽつりと呟く。


アルマが振り返る。


「なにが?」


「静かすぎる」


その一言に、ルナが少し身を縮める。


「静かだと、だめなの?」


フィーネは首を横に振る。


「そうではない。だが、草原にしては魔力の流れが整いすぎている」


アルマはきょとんとする。


「整ってるとダメなの?」


「普通はもっと乱れる」


フィーネは周囲を見渡す。


風、草の揺れ、遠くの森。


すべてが“整いすぎている”。


まるで何かに調整されているかのように。


だがアルマは特に気にしていない様子だった。


「まぁいっか!」


即答。


ルナが小さく笑う。


「アルマお姉ちゃん、そういうとこだよね」


「なにが?」


「気にしないところ」


アルマは胸を張る。


「気にしてたら楽しくないし!」


フィーネはため息をついた。


「それで済む世界なら良いのだがな」


三人は歩き続ける。


やがて、王都の外壁が見えてきた。


遠くにそびえる石の壁と門。


そこに近づくにつれ、人の気配が増えていく。


「戻ってきたね〜」


アルマが伸びをする。


ルナもほっとしたように息を吐く。


「安心する」


フィーネは静かに言う。


「ここまではな」


その言葉にアルマが首をかしげる。


「まだなんかあるの?」


「お主がそういうことを言うと、大抵ある」


即答だった。


アルマはむっとする。


「ひどくない?」


「事実だ」


軽く言い切られる。


門が近づく。


兵士たちが出入りする人々を確認している。


三人は列に並ぶ。


特に問題なく通れるはずだった。


だが──


列の後方で、わずかなざわめきが起きた。


「おい、あれ……」


「見たことある服だな」


「冒険者か?」


アルマたちは気にせず進む。


しかし、その視線は徐々に鋭さを増していた。


フィーネの目が細くなる。


「……来たか」


アルマが小声で聞く。


「なにが?」


「面倒ごとだ」


その瞬間。


門の横から、別の兵士が現れた。


「そこの三人、少し待て」


空気が一瞬止まる。


ルナがアルマの袖を掴む。


「……なに?」


兵士は三人の前に立つ。


「確認したいことがある」


フィーネは一歩前に出る。


「何の用だ」


兵士は書類を見ながら言う。


「先ほど、草原で高純度の薬草が採取されたという報告がある」


アルマは目を瞬かせる。


「それ、私たちだけど?」


即答。


フィーネが小さくため息をつく。


兵士の目がわずかに細くなる。


「通常、その場所では魔物の影響で採取は困難とされている」


アルマは首をかしげる。


「え、でも普通にあったよ?」


「……普通に?」


兵士の声が少し低くなる。


フィーネが静かに口を開く。


「依頼通りに採取しただけだ」


その言葉は正しい。


だが、逆に不自然だった。


兵士は少し沈黙したあと、続ける。


「一応、確認のために鑑定士を呼ぶ」


ルナが不安そうにする。


「なんかまずいの?」


アルマはあっさり言う。


「たぶん大丈夫でしょ」


フィーネは横目で見る。


「その自信はどこから来るのだ」


「なんとなく?」


即答。


しばらくして、鑑定士らしき人物がやってきた。


袋の中の薬草を確認する。


「……これは」


その顔がわずかに引きつる。


「どうだ?」


兵士が問う。


鑑定士は答える。


「確かに依頼通りの薬草です。しかも純度が高い」


「高い、というと?」


「通常よりも傷みが少なく、魔力の流れも安定しています」


フィーネの目が細くなる。


「やはりな」


兵士は少し困惑した顔をする。


「問題はない、ということか?」


鑑定士は一瞬黙る。


そして言った。


「……普通は、ここまで綺麗には採れません」


その言葉で空気が少し変わる。


アルマは小さく首をかしげる。


「なんかダメなの?」


フィーネが即答する。


「ダメではないが、普通ではない」


兵士は少し頭を下げる。


「失礼した。通って構わない」


列が再び動き出す。


三人は門を抜ける。


王都の中へ。


ルナが小さく息を吐く。


「ちょっと怖かった」


アルマは首をかしげる。


「そう?」


フィーネは静かに言う。


「いずれ慣れる」


「慣れるのそれ?」


アルマが聞く。


フィーネは答えない。


ただ歩く。


その背中を見ながら、ルナは小さく呟く。


「なんか、普通じゃないこと増えてる気がする……」


アルマは笑う。


「でも楽しいよ!」


その一言に、フィーネはほんの少しだけ目を細めた。


だがその視線の先には、まだ言葉にできない違和感が残っていた。


──この世界は、静かに彼女たちを見始めている。


それに気づく者は、まだいない。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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