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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

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第二十六話 草原と初依頼のゆるい緊張


──天才錬金術師は常識を知らない


王都ソリティアから少し離れた草原。


風がゆるやかに流れ、背の低い草が波のように揺れている。


遠くには森の影が見え、空はどこまでも広い。


「わぁ〜!素材に使えそうなのがたくさんある〜!!」


アルマは草原に一歩踏み出した瞬間、目を輝かせた。


しゃがみ込み、地面を覗き込み、あちこちを見回す。


「これも……これも……」


完全に目的が切り替わっている。


「目的を忘れてはおらんよな」


フィーネの声が静かに飛ぶ。


アルマは即答した。


「うん!」


「心配じゃ」


間髪入れずに返される。


ルナはそのやり取りを見ながら、小さく頷いた。


「うん……」


不安なのか同調なのか曖昧な声だった。


今回の依頼は薬草採取。


指定されたのは、森の入口付近に自生する一般的な回復草。


危険度は低い。


そのはずだった。


「これが依頼のやつだよね?」


アルマは掲示板で見た見本を思い出しながら、草を手に取る。


「それは違う」


フィーネが即座に否定する。


「ただの雑草だ」


「えー?」


アルマは残念そうにする。


ルナが横から覗き込む。


「こっちは……?」


「それも違う」


フィーネは即答。


アルマはむくれる。


「えー、全部同じに見えるんだけど」


「だから危ういのだ」


ため息。


それでもアルマは楽しそうに草原を歩き回る。


「でもさ、こういうのって全部意味あるんでしょ?」


「意味はあるが、用途が違う」


フィーネが冷静に返す。


ルナはしゃがみ込み、小さな花を見つけた。


「これ、きれい」


白い小さな花。


アルマも覗き込む。


「ほんとだ、かわいい」


フィーネはそれを一瞥する。


「毒はないが薬にもならん」


「じゃあ飾り?」


アルマの言葉にフィーネは頷く。


「そういうことだ」


ルナはそっと花を摘まずにそのままにした。


「ここに置いとく」


その優しい選択に、アルマはにこっと笑う。


「いいね、それ」


草原の風が少し強くなる。


三人の髪が揺れた。


その時だった。


「アルマ」


フィーネの声がわずかに低くなる。


「なに?」


アルマは顔を上げる。


フィーネは視線を草原の奥に向けていた。


「少し離れた場所に、魔力の揺れがある」


ルナが不安そうに周囲を見る。


「……魔物?」


「可能性はある」


フィーネは静かに答える。


アルマは目を輝かせる。


「見に行ってみる?」


「やめておけ」


即答だった。


しかしアルマはもう半分動いている。


「でも気になる!」


「お主は本当に止まらんのう」


フィーネが肩をすくめる。


ルナは小さく言う。


「怖いかも……」


アルマは振り返って笑う。


「大丈夫だよ、フィーネいるし!」


「私を万能に扱うな」


そう言いながらも、フィーネはため息混じりに歩き出す。


結局、三人は魔力の反応の方向へ向かった。


草原の奥。


少し木が増え、風の音が変わる。


そこに、小さな影があった。


「……?」


アルマが目を細める。


それは魔物ではない。


倒れかけた小さな動物だった。


兎のような耳を持つ生き物。


体は弱っているが、傷はない。


ルナがしゃがみ込む。


「大丈夫……?」


フィーネが目を細める。


「魔力の異常反応はこれか」


アルマはじっと見つめる。


そしてぽつりと言った。


「お腹すいてるだけっぽい」


「は?」


フィーネが即答する。


アルマはすでにポケットから何かを取り出していた。


「えっと、さっきのパンの残りあるし……」


「待て」


止める声は遅い。


アルマはパンをちぎって近づける。


小動物はゆっくりとそれを食べ始めた。


「ほら、食べてる」


アルマは嬉しそうに言う。


ルナも安心したように微笑む。


「よかった……」


フィーネは額に手を当てる。


「依頼を忘れるなと言ったばかりだが?」


「まだ時間あるよね?」


アルマは悪びれない。


そのとき、小動物の体がふわりと光った。


「え?」


ルナが声を上げる。


光は一瞬だけ強くなり、すぐに収まる。


そこには、先ほどより少し元気になった姿があった。


フィーネが静かに呟く。


「……魔力の回復反応か」


アルマは首をかしげる。


「パンってすごいね」


「違う」


即答。


ルナが小さく笑う。


「でも、元気になってよかったね」


小動物はぴょんと跳ね、草原の奥へ消えていった。


アルマは立ち上がる。


「よし、こっちもやろう!」


「やっとか」


フィーネが呆れながらも歩き出す。


草原を再び探索。


今度はしっかり依頼の薬草を探す。


ルナも慎重に草を見つめるようになった。


「これ……かな?」


「正解だ」


フィーネが頷く。


アルマは嬉しそうに次々と採取していく。


「これも!これも使えそう!」


「依頼は指定された分だけでよい」


「えー、でも余ったら実験できるし」


「やめろ」


即答。


ルナはくすくす笑う。


草原には穏やかな時間が流れていた。


危険もなく、ただ静かに進む依頼。


しかしアルマにとっては、それすらも新しい発見の連続だった。


「ねぇフィーネ」


「なんだ」


「この世界、思ったより面白いね」


フィーネは少しだけ空を見上げる。


「……今さらか」


ルナが小さく頷く。


「うん、楽しい」


三人は薬草を袋に詰め終える。


依頼は問題なく達成された。


草原の風がまた優しく吹く。


アルマは満足そうに言う。


「じゃあ帰ろっか!」


フィーネは静かに頷く。


「うむ」


ルナも笑顔で続く。


「うん!」


こうして。


初めての採取依頼は、あまりにも平和に終わった。


だがアルマの“普通では終わらない日常”は、まだ始まったばかりだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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