表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
共和国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/121

第二十三話 小さな日常と大きな好奇心


──天才錬金術師は常識を知らない


王都ソリティアの一角。


三人は賑やかな通りから少し外れた、落ち着いた商店街を歩いていた。


「ここ、なんかいいね」


アルマが周囲を見回す。


大通りほどの派手さはないが、どの店も丁寧に作られていて、どこか温かみがある。


「人も少なくて、見やすい」


ルナが小さく頷く。


「うむ。こういう場所のほうが、余計な目も少ない」


フィーネの言葉は現実的だった。


三人の目的は明確だった。


生活用品の補充。


そして──ルナの服。


「ねぇルナ、どんなのがいい?」


アルマが楽しそうに聞く。


「えっと……」


ルナは少し困ったように視線を泳がせる。


「わからない……」


素直な答えだった。


それも当然だ。


記憶を失った彼女にとって、“好み”というものはまだ曖昧なものなのだから。


「そっか」


アルマは少し考えてから、にこっと笑った。


「じゃあ、いっぱい見て決めよ!」


「うん……!」


ルナも少しだけ嬉しそうに頷く。


二人はそのまま服屋へと入っていった。


店内には、色とりどりの服が並んでいる。


シンプルなものから装飾の多いものまで、様々だ。


「わぁ……」


ルナが思わず声を漏らす。


「いっぱいあるね!」


アルマも目を輝かせる。


フィーネは入り口近くで腕を組み、静かに周囲を警戒している。


「これとかどう?」


アルマが一着取り出す。


淡い青色のワンピース。


「……きれい」


ルナが小さく呟く。


「着てみる?」


「え、いいの?」


「いいに決まってるでしょ!」


アルマは当然のように言う。


そのまま店主に声をかけ、試着室へと案内される。


しばらくして──


「どう……?」


カーテンが少し開く。


そこには、青いワンピースを着たルナの姿。


まだ少しぎこちないが、よく似合っていた。


「かわいい!」


アルマが即答する。


ルナは少し照れて視線を逸らす。


「……ほんと?」


「うん!」


アルマは大きく頷く。


フィーネも一瞥して言う。


「悪くない」


短いが、肯定の言葉だった。


ルナは少しだけ安心したように微笑む。


「じゃあ、これにする」


「決まり!」


アルマは嬉しそうに笑った。


そのまま何着か選び、会計を済ませる。


「ありがとうございました」


店を出ると、ルナは新しい服を抱えていた。


「なんか……あったかい」


ぽつりと呟く。


「ん?」


アルマが振り返る。


「……わからないけど、なんか……いい感じ」


アルマは少しだけ優しく笑った。


「それ、たぶん“好き”ってやつだよ」


ルナは目をぱちぱちさせる。


「好き……」


その言葉を、ゆっくりと噛みしめる。


フィーネはその様子を見て、何も言わなかった。


ただ静かに、歩き出す。


「次は食料だな」


「はーい」


アルマが元気よく返事をする。


市場へ向かう。


そこはまた違う活気に満ちていた。


野菜、肉、果物。


様々な食材が並び、商人たちの声が飛び交う。


「これ全部食べられるの?」


ルナが興味深そうに見つめる。


「うん、たぶん」


アルマもよくわかっていない様子で答える。


フィーネが補足する。


「調理が必要なものも多いがな」


「調理……」


ルナが呟く。


アルマは胸を張る。


「任せて!」


「お主、できるのか?」


フィーネが即座に突っ込む。


「……できる……はず!」


少しだけ間があった。


フィーネはため息をつく。


「不安しかないな」


それでも、食材をいくつか購入する。


パン、果物、簡単に食べられるもの。


そして少しだけ、調理用の材料も。


「これでしばらくは大丈夫だな」


フィーネが言う。


アルマは袋を持ちながら、ふと立ち止まった。


「ねぇ」


「なんだ」


「この世界ってさ」


アルマは周囲を見回す。


「なんか、思ったより普通だね」


その言葉に、フィーネは少しだけ目を細める。


「普通、とは?」


「もっとこう、すごい魔法とか、変なものとかいっぱいあるのかと思ってた」


ルナがきょとんとする。


「変なもの?」


「うん、見たことないやつ」


アルマは楽しそうに言う。


フィーネは小さく息を吐いた。


「……お主が言うと、別の意味に聞こえるな」


「え?」


アルマは首をかしげる。


フィーネは続ける。


「この世界は十分に“変わっておる”」


「そうかな?」


「お主が基準を壊しておるだけだ」


即答だった。


ルナがくすっと笑う。


「アルマお姉ちゃん基準だと、全部普通になっちゃうね」


「えー?」


アルマは不満そうにする。


「ちゃんとすごいと思ってるよ?」


「その“すごい”の基準が問題なのだ」


フィーネは軽く肩をすくめる。


三人はそのまま歩き続ける。


夕方の光が、街をオレンジ色に染め始めていた。


「ねぇ」


ルナが小さく呟く。


「なに?」


「今日、楽しかった」


その一言。


アルマはぱっと笑顔になる。


「よかった!」


フィーネも静かに目を細める。


何気ない一日。


だがそれは、確かに“日常”だった。


まだ始まったばかりの関係。


まだ知らないことだらけの世界。


それでも──


三人の歩みは、確かに前へと進んでいた。


そしてその裏で。


王都のどこかで、静かに動く影があることを。


今の彼女たちは、まだ知らない

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ