表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/23

第十五話 名前のはじまり

──天才錬金術師は常識を知らない


──神のいる世界。


「ふぅ~ん、面白いことになってるね〜」


白い空間の中、あの男──神はくつくつと笑っていた。


「やっぱり、彼女を転生させたのは間違いじゃなかったね」


どこか楽しげに、指先で空間をなぞる。


その先には、アルマたちの姿が映っている。


「これからが楽しみだ」


軽い声。


だが、その瞳だけは静かに細められる。


「がんばってくれよ? 君の行動で、この世界の命運が決まるのだから」


──場面は戻る。


ソリティア共和国、城門前。


「……ねぇ……」


アルマが小さく呟く。


「なんだ?」


「大丈夫、だよね?」


背負った少女を気にしながらの言葉。


フィーネは落ち着いて答える。


「あぁ。その辺の者に、この子供のことは分からん」


ちらりと少女を見る。


「他から見ればエルフに見える。それに、この国は魔族との交流もしている」


「うん」


「万が一、魔族だとバレても問題はない。それと──吸血鬼族だとしても、太陽による弱体化の有無など、人間には区別できん」


アルマはほっと息をついた。


「そっか……よかった」


そのとき。


「次!」


門番の声が響く。


「あ、はい!」


アルマが前に出る。


「身分を証明できるものは?」


「あ、あのこれ……冒険者カードです」


差し出す。


門番はそれを確認し、頷いた。


「……通って良し」


そして、フィーネと少女を見る。


「そちらの二人は?」


フィーネは自然に答える。


「私達はアルマの身内だ」


門番は少し迷ったが、やがて肩をすくめた。


「……そうか。まぁいい、通って良し」


門が開く。


アルマは一歩、足を踏み入れた。


──ソリティア共和国 首都「ソリティア」。


石畳の道。

行き交う人々。

立ち並ぶ店。


「ほんとに入れちゃった」


アルマがぽつりと呟く。


「まずは宿を探す」


フィーネが言う。


「そこで、この娘が目を覚ますのを待つとしよう」


「うん!」


二人は街の中を歩き、ほどなくして一軒の宿に入った。


木の香りのする落ち着いた場所。


部屋を取り、少女をベッドへ寝かせる。


静かな時間が流れる。


やがて──


「……っ……ぅ……?」


少女のまぶたが、わずかに震えた。


「あ、目、覚めた?」


アルマが顔を近づける。


少女はゆっくりと目を開いた。


ぼんやりとした視線。


「……お姉さん、誰?」


か細い声。


そして──


「あれ? 私……」


言葉が止まる。


フィーネが一歩近づいた。


「少し失礼」


そっと少女の額に触れる。


淡い炎のような光が、ほんの一瞬だけ揺れた。


「……ふむ」


手を離す。


「記憶がないな」


「え?」


アルマが驚く。


フィーネは静かに言った。


「我の力で記憶を覗いたが……“記憶がない”。完全に、だ」


アルマは言葉を失う。


少女は、不安そうに二人を見ていた。


「……これは、おそらく」


フィーネが続ける。


「長い間、呪に侵されていたせいだろう。記憶まで侵食し、消してしまったのだ」


「そんな……」


アルマの声が小さくなる。


部屋に、重たい沈黙が落ちる。


「どうしたものか……」


フィーネが腕を組む。


そのとき。


「……ねぇ」


アルマがぽつりと呟いた。


「もう、うちの子にする?」


「なに?」


フィーネが目を細める。


アルマは真っ直ぐに言った。


「親が見つかるまで、私達が親ってことで」


フィーネは少し考える。


「……なるほど。しかし、その親がこの子を売った可能性もあるぞ」


アルマは即答した。


「その時は、そいつらをぶっ飛ばして、私達が親になればいいよ」


「はぁ……」


深いため息。


だが、その口元はわずかに緩む。


「お主はぶっ飛んでおるな」


「なにそれ〜……」


アルマが不満そうに頬を膨らませる。


フィーネは肩をすくめた。


「しかし、親代わりというのは悪くない」


少女へと視線を向ける。


「子は親を見て育ち、親もまた子を見て育つと聞く」


そして、アルマを見る。


「常識を知らんお前さんには、いい勉強だろう」


「む〜……」


納得いかない顔。


フィーネは小さく笑った。


「ははっ」


その様子を、少女はぽかんと見ていた。


「???」


フィーネが言う。


「そうと決まれば、名を与えねばな」


「あ、そうか……」


アルマは腕を組み、考え込む。


「う〜ん……」


少女は、不安そうに見上げる。


まだ何も持たない存在。


名前すらない、空白の子。


アルマはその子を見つめて──


ゆっくりと口を開いた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ