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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
皇都編

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第百十三話 第三層への入口と封じられた空気



──天才錬金術師は常識を知らない


帝都ヴァルゼリア皇城の地下。


巨大な封印扉が軋む音を立てて開かれていく。


ギギギ……と重く、長い年月を拒絶してきたような音。


そこから流れ出るのは、冷たい空気だった。


「うわ……」


ルナが小さく息を呑む。


「寒い……というより、嫌な感じ」


シエルも腕を抱く。


「空気が重い」


エリシアが周囲を見回す。


「魔力濃度が変ね……地上とは別物だわ」


フィーネは目を細めた。


「古代の気配じゃな」


ミルはきゅるの背にしがみつく。


「……こわい」


きゅる。


「きゅ……」


ギガルドは低く唸った。


グルル……


そして。


アルマはというと。


「わぁ……!」


目を輝かせていた。


「洞窟みたい!」


「冒険みたい!」


レイナは即座に叫ぶ。


「全員警戒!」


「ここから先は未知領域です!」


ゼクトも頷く。


「第三層以降は記録がほとんどありません」


「調査隊が消えたのもここからです」


重臣たちが続々と装備を整える。


魔導灯が灯され、光が闇を押し返す。


しかしその光は、すぐに飲み込まれるような闇だった。



階段を下りる。


一段ごとに空気が変わる。


カツ……カツ……


靴音がやけに響く。


ルナ。


「ねえ、どこまで降りるの?」


エリシア。


「分からないわ」


フィーネ。


「底が見えぬのう」


その時だった。


アルマがふと立ち止まる。


「ん?」


「どうした?」


ガイゼルが振り返る。


アルマは壁をじっと見ていた。


そこには古代文字のような模様が刻まれている。


「これ……」


「なんか、悲しい感じがする」


全員が沈黙する。


ゼクトが眉をひそめる。


「悲しい?」


アルマは頷く。


「うん」


「泣いてるみたいな文字」


フィーネの表情が少し変わる。


「……感情を持つ刻印か」


エリシア。


「そんなの聞いたことないわよ」


しかしフィーネは静かに言った。


「古代文明ならあり得る」


「魔力は感情と結びつくことがある」


ミルが震える。


「……いやな魔力」


きゅるも小さく鳴く。


「きゅ……」



さらに下へ。


第三層入口。


そこには巨大な鉄格子があった。


だが。


それは破壊されている。


まるで内側から引き裂かれたように。


レイナ。


「これは……人為的ではない」


バルト魔導師長。


「いや、魔導でもない……もっと原始的な力じゃ」


ゼクトが顔を強ばらせる。


「調査隊の装備にこのレベルを破壊するものはありません」


「つまり」


「外から何かが入った可能性があります」


その瞬間。


全員が沈黙した。


そして。


奥から。


音。


カツ……


カツ……


何かが歩く音。


ルナ。


「ひっ……」


シエル。


「何かいる!」


レイナが剣を抜く。


「全員戦闘準備!」


しかし。


アルマは一歩前に出た。


「だいじょうぶ!」


全員。


「え?」


アルマは笑っていた。


「怖くても、話してみないと分かんないよ!」


ガイゼルが小さく笑う。


「そうじゃな」


「友達候補かもしれん」


レオグラン。


「陛下!?今の状況でその発言は!?」


その時。


闇の奥から。


ゆっくりと。


“それ”は現れた。



人影だった。


だが普通ではない。


体の一部が機械のように金属化している。


片腕は石のように崩れている。


顔には古代の仮面の残骸。


そして。


かすれた声。


「……侵入者」


ルナ。


「しゃべった!」


シエル。


「人?」


エリシア。


「生きてるの?」


ゼクトが目を見開く。


「調査隊員……!?」


「いや」


「違う……これは」


その人物はゆっくりと顔を上げる。


「帰れ」


「ここは……人の領域ではない」


その声は震えていた。


恐怖ではない。


“別の何か”に対する恐れ。


アルマ。


「どうして?」


その問いに。


その人物は沈黙した。


そして。


低く言った。


「目覚める」


「もうすぐ」


「“それ”が」


ガイゼルの表情が変わる。


「……やはりか」


レイナ。


「陛下?」


ガイゼル。


「調査隊が消えた理由はこれじゃ」


「この者は……まだ人として残っておる」


「だが」


「もう時間の問題じゃ」


その言葉に全員が緊張する。


アルマは一歩近づいた。


「ねえ」


「何が起きるの?」


その人物は震えながら答えた。


「黒い結晶……」


「それが……」


「呼んでいる」


その瞬間。


地下全体が揺れた。


ゴゴゴゴゴ……


天井から砂が落ちる。


魔力が逆流する。


レイナ。


「何が起きてる!?」


ゼクト。


「封印が……反応している!」


ガイゼルが剣に手をかける。


「来るぞ」


そして。


地下の奥深くから。


“心臓の鼓動”のような音が響き始めた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


アルマはその音を聞いていた。


そして小さく呟く。


「……泣いてるの?」


誰も答えられなかった。


ただ一つだけ確かなのは。


第三層はもう。


「安全な場所ではない」ということだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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