第百十二話 地下遺跡と消えた調査隊
──天才錬金術師は常識を知らない
「友達に相談してもよいか?」
皇帝ガイゼルの言葉に、重臣たちはまたしても頭を抱えていた。
レオグラン。
「陛下……」
「友達という言葉を使いすぎでは……」
レイナもため息をつく。
「もう慣れたと思っていたんですが……」
バルト魔導師長。
「百年以上仕えておりますが、未だに慣れませんな」
しかし。
当のガイゼル本人は気にした様子もない。
「何を言う」
「友達とは相談するものじゃろう?」
アルマ。
「うん!」
「困った時は助け合い!」
「おぉ!」
「その通りじゃ!」
二人はすっかり意気投合していた。
◇
そして。
ゼクトから地下遺跡について説明が始まる。
「帝都の地下には古代文明の施設があります」
「第一層から第五層まで確認されています」
「現在、人が安全に入れるのは第二層まで」
「第三層以降は危険地帯です」
ルナ。
「危険?」
ゼクト。
「魔物」
「罠」
「未知の魔導装置」
「そして」
「正体不明の存在」
シエル。
「正体不明?」
エリシア。
「嫌な予感しかしないわね」
フィーネ。
「ふむ」
「古代文明か」
「懐かしいの」
全員。
「え?」
フィーネ。
「妾が若い頃の話じゃ」
ルナ。
「フィーネお姉ちゃんって何歳?」
フィーネ。
「ん?」
「忘れた」
全員。
「忘れた!?」
◇
ゼクトが咳払いする。
「話を戻します」
「昨日、第二調査隊が消息を絶ちました」
「そして今朝」
「第一調査隊も」
レイナ。
「生存反応は?」
「ありません」
沈黙。
ルナ。
「そんな……」
シエル。
「怖い……」
ミル。
「……かわいそう」
きゅる。
「きゅ……」
ガイゼルも表情を曇らせる。
「優秀な兵たちじゃ」
「なんとしても救いたい」
アルマ。
「助けに行こう!」
全員。
「「え?」」
「だって!」
「困ってるんでしょ?」
「なら助ける!」
あまりにも当然のように言うアルマ。
レオグラン。
「いやしかし!」
「危険です!」
レイナ。
「何が待っているか分かりません!」
ゼクト。
「相手は新帝国の可能性もあります」
しかし。
ガイゼル。
「うむ」
「行くか」
全員。
「「陛下ぁ!?」」
「自分で行くんですか!?」
「当然じゃ」
「部下を見捨てる皇帝などいらん」
レイナ。
「危険です!」
「危険だから行くのじゃ」
「……」
誰も反論できなかった。
◇
その頃。
帝都地下。
第三層。
薄暗い遺跡。
壊れた石柱。
古代文字。
その奥。
巨大な黒い結晶。
ドクン。
ドクン。
脈打つ。
黄金の仮面の男。
「導師様」
「皇帝が動きます」
「ふふふ」
「構わん」
「むしろ歓迎しよう」
赤い仮面。
「ですが」
「例の少女も」
「アルマか」
黄金の仮面の男は笑った。
「興味深い」
「実に興味深い」
「数百年」
「いや」
「千年待った」
「ついに現れた」
「理想の器」
周囲の仮面たち。
「……」
「まだ時ではない」
「計画を進めろ」
「はい」
そして。
黒い結晶がさらに脈動する。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
まるで。
何かが眠っているかのように。
◇
翌朝。
皇城。
「準備できた!」
アルマは大きなリュックを背負っていた。
「お弁当!」
「おやつ!」
「水筒!」
ルナ。
「遠足じゃないんだから!」
シエル。
「私も!」
ミル。
「……お菓子」
きゅる。
「きゅ!」
エリシア。
「なんでこんな楽しそうなのよ……」
フィーネ。
「まあ」
「いつものことじゃ」
すると。
ガイゼルが豪快に笑った。
「ほっほっほ!」
「良いではないか!」
「暗い顔で行くより百倍良い!」
その姿を見た近衛兵たちは驚いていた。
「陛下が楽しそうだ……」
「最近若返って見える」
「友達って凄いな」
◇
その時。
慌てて駆け込んでくる兵士。
「報告!」
「第三調査隊も!」
「消息不明!」
全員。
「なに!?」
「さらに」
「地下第三層で巨大な魔力反応!」
バルト。
「馬鹿な!」
ゼクト。
「ついに動き始めたか……!」
ガイゼル。
「急ぐぞ!」
レイナ。
「近衛騎士団出動!」
「魔導師団も!」
皇城全体が慌ただしく動き始める。
そんな中。
アルマ。
「わくわく!」
ルナ。
「わくわくじゃないよ!?」
シエル。
「探検!」
ミル。
「……探検」
きゅる。
「きゅ〜♪」
フィーネ。
「全く緊張感がないの」
エリシア。
「でも」
「なんだか」
「この子たちがいると大丈夫な気がするわ」
そして。
帝都地下へ続く巨大な扉が。
ゆっくりと開かれる。
百年以上閉ざされていた。
第三層への道。
その先で待つもの。
新帝国。
黄金の仮面。
黒い結晶。
そして。
千年の時を超えた秘密。
まだ誰も。
その真実を知らなかったのである。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




