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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
皇都編

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第百七話 謎のおじいちゃんと夜の車内


──天才錬金術師は常識を知らない


帝都ヴァルゼリアへ向かう特急魔導列車。


窓の外では夕日が流れ、赤く染まった平原や森が次々と後ろへ消えていく。


「すごいねぇ……」


アルマは窓にぺたりと顔をつけて外を眺めていた。


「景色が飛んでいく!」


ルナが苦笑する。


「アルマお姉ちゃん、さっきからずっと見てるね」


「だって面白いんだもん!」


シエルも一緒になって窓に張り付いていた。


「うわぁ!」


「山だ!」


「湖だ!」


「村もある!」


エリシアはそんな二人を見ながら笑った。


「子供みたいね」


フィーネは紅茶を飲みながら小さく息を吐く。


「いや、実際子供じゃろ」


ミルはきゅるの荷台の上でうとうとしていた。


「……すぅ」


きゅる。


「きゅ~♪」


グル。


ギガルドも静かに丸くなっている。


平和だった。


少なくとも。


この時までは。



食堂車。


「ごちそうさまでした」


白髪の老人が静かに頭を下げる。


「本当に美味しかった」


アルマは笑顔になる。


「よかった!」


「おじいちゃん、おかわりいる?」


老人は笑った。


「ふふ」


「いや、十分じゃ」


「しかし」


「お嬢さんは変わっておるな」


「そう?」


「うむ」


「普通の人間なら、見返りを求める」


「じゃが、お主は違う」


アルマは首を傾げた。


「見返り?」


「なんで?」


「お腹空いてたら可哀想だもん」


老人は目を細める。


「なるほど」


「そういう娘か」


フィーネがじっと老人を見ていた。


「……」


エリシアも少し警戒している。


「フィーネ?」


「どうしたの?」


「いや」


「この老人」


「妙じゃ」


「妙?」


「うむ」


「魔力が見えぬ」


ルナが驚く。


「え?」


シエルも首を傾げる。


「見えない?」


フィーネが頷く。


「普通の生き物なら微かにでも感じる」


「じゃが」


「この男は空っぽじゃ」


老人。


「ほっほっほ」


「怖い顔をするでない」


「ただの旅人じゃよ」


エリシア。


「絶対嘘」



その夜。


特別室。


「ふぁ~……」


ルナが欠伸をする。


「眠い」


シエルはベッドに飛び込んだ。


「ふかふか!」


「最高!」


エリシアも伸びをする。


「今日は色々あったわね」


フィーネは本を閉じる。


「帝都まではまだ時間がかかる」


「今日は休むとするかの」


アルマ。


「うん!」


「おやすみ!」


数分後。


「……すぅ」


「……んにゅ」


ミル。


「……すぅ」


シエル。


「……むにゃ」


ルナ。


「……すー」


きゅる。


「きゅ~……」


ギガルド。


グル……


みんな眠っていた。


しかし。


アルマだけが。


「……?」


目を開けた。


コン。


コン。


窓を叩く音。


「?」


窓の外。


そこには。


白い小鳥がいた。


「わぁ」


「こんばんは」


ぴぃ。


不思議な小鳥。


アルマが窓を開けると。


ぴょん。


小鳥が肩に乗った。


「どうしたの?」


ぴぃぴぃ。


すると。


小鳥は廊下の方を見る。


「?」


「ついて来て?」


ぴぃ!


「わかった!」



深夜。


静かな車内。


アルマは一人で歩いていた。


そして。


最後尾車両。


そこに。


「おじいちゃん?」


昼間の老人がいた。


「おお」


「来たか」


「小鳥さんが呼んでくれた!」


老人は笑った。


「そうか」


「優秀な子じゃ」


すると。


小鳥は老人の肩へ移動した。


ぴぃ。


「よしよし」


老人が撫でる。


アルマは首を傾げる。


「どうしたの?」


「うむ」


「少し話をしたくての」


「お話?」


「そうじゃ」


老人は夜空を見上げる。


「お主」


「帝都へ行くのじゃろ?」


「うん!」


「招待されたから!」


「ほっほっほ」


「招待、か」


老人は意味深に笑う。


「面白い」


「実に面白い」


「?」


「お主は怖くないのか?」


「なにが?」


「帝国が」


「皇帝が」


「陰謀が」


アルマは少し考えた。


「うーん」


「分かんない!」


老人。


「ほう?」


「でも」


アルマは笑う。


「悪い人ばっかりじゃないと思う!」


「門番さんもいい子だったし!」


「駅員さんもいたし!」


「車掌さんも優しかった!」


「だから」


「皇帝さんも会ってみないと分からないよ!」


老人。


「……」


沈黙。


そして。


「ふふ」


「はははは!」


老人は声を上げて笑った。


「そうか!」


「会ってみないと分からぬか!」


「うむ!」


「その通りじゃ!」


アルマは嬉しそうだった。


「おじいちゃんも面白いね!」


老人。


「そうか?」


「うん!」


「友達になろ!」


老人。


「……友達」


しばらく呆然としたあと。


「ほっほっほ!」


「それは光栄じゃな!」


そして。


老人はポケットから小さな銀のメダルを取り出した。


「これをやろう」


「?」


「お守りじゃ」


「困った時に見せるとよい」


「ありがとう!」


アルマは嬉しそうに受け取った。


その時。


ガタン。


列車が揺れる。


そして。


老人は立ち上がった。


「さて」


「わしも寝るとするか」


「うん!」


「おやすみ!」


「うむ」


「おやすみ」


老人は静かに去っていった。


そして。


最後尾車両の影。


そこには。


黒い仮面の男。


「……」


男は老人の姿を見る。


そして。


信じられないものを見るように目を見開いた。


「馬鹿な……」


「なぜ」


「なぜあのお方が……!」


仮面の男の額から汗が流れる。


「まさか」


「陛下……?」


その声は震えていた。


そして。


帝都ヴァルゼリア。


巨大な皇城では。


「……?」


側近たちが混乱していた。


「陛下がいない!?」


「どこへ行かれた!?」


「城中を探せ!」


帝国全土を揺るがす大騒ぎが。


静かに始まろうとしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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